【労務Q&A】社員に強制できる教育、研修の範囲とは

労務Q&A

社員に強制できる教育、研修の範囲はどこまでですか?

教育を行う会社の裁量権はあるので、労働契約から生じる業務命令により強制することはできますが、裁量権の逸脱や、人権を制約するなどの理由で違法に繋がる場合もあります。

 

解説

例えば、お寺や神社などでの修行を強制することは、メンタル強化が目的とは言え、思想良心の自由(憲法19条)の制約に繋がり、違法になる可能性があります。

過去には、JR西日本が実施してきた日勤教育は、再教育とは名ばかりで、ペナルティーや懲罰の温床となり、徹底した個人の責任追及のみが目的となって人格権の侵害や安全配慮義務違反として賠償責任を認めた裁判例もあります。(JR西日本事件)

また、新人教育として、5時間以内に24kmを歩くという厳しい訓練によって、従業員が怪我を負ってしまった場合で、会社の安全配慮義務違反による債務不履行により、裁判所が損害賠償の支払いを命じたものもあります。(サニックス事件)

会社は、教育、訓練を命じる際には、内容が合理的なものであるか、人格否定や懲罰的内容になり裁量の域を超えていないか等、一度立ち止まって検討をすることが求められます。