【労務Q&A】退職予定者の年次有給休暇はすべて取得させる必要がある?

労務Q&A

退職予定者の年次有給休暇はすべて取得させなければなりませんか?

請求があればすべて取得させなければなりません。

解説

まずは年次有給休暇の時季変更権と年休の計画的付与について確認していきます。

年休の時季変更権とは

時季変更権とは、従業員が日にちを指定して年休の申請を行ったのに対して、会社側から日にちの変更を求めることができる権利をいいます。

労働基準法でも「労働者が請求した時季に年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者は他の時季に年次有給休暇を与えることができる」と定められています。

年休の計画的付与とは

年休のうち、5日を超える分については労使協定を結ぶことで、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度のことをいいます。年休の取得率を向上させ、労働環境をよくするなどの効果が期待できます。

まとめ

年休取得の権利は、労働関係の存続を前提としています。したがって、いかなる形であれ退職すれば、その時点で取得の権利は消滅します。そこで、労働者の間で一般的に行われているのが、残りの年休を消化し終わった時点をもって退職するという方法です。労働者からこのような年休の申請をされた場合は、変更すべき時季が残されていないことから、使用者が時季変更権を行使することはできないとされています。したがって、労働者が退職届の提出と同時にその後の労働日のすべてについて年休取得を申し出た場合、使用者はそれを受け入れるしかありません。

また、年休の計画的付与制度が導入されている事業所において、その年度の中途で退職する者に対する年休の取り扱いについても注意が必要です。計画的付与は、その付与日が労働日であることを前提にして行われるものであり、その前に退職することが予定されている者については、退職後を付与日とする計画的付与はできません。したがって、計画日に到達する前に退職する場合は、計画日にかかわらず退職前の任意の時期に計画対象日数分の年休を取得することができ、また使用者側に取得拒否権はありません。