ストックオプション制度は、スタートアップやベンチャー企業だけではなく、中小企業や大企業でも導入が進んでいます。
今回は、ストックオプション制度の解説やメリット・デメリット、またストックオプションの種類について解説します。将来的な上場を考え、ストックオプション制度の導入を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
ストックオプション制度とは?
ストックオプション制度とは、行使価格(あらかじめ決められた価格)で株式を購入できる権利を示します。
例えば、権利行使価額が1株1,000円のストックオプションを、1株付与されたとしましょう。株式市場価格が2,000円の時に権利行使すれば、1,000円のキャピタルゲインを得られます。
株式市場価格2,000円 − 権利行使価額1,000円 = キャピタルゲイン1,000円
株式の取得は、本来であれば現状の株価で購入する形ですが、ストックオプションを行使した場合、行使価格で株式の取得ができます。
そのため、株価が上昇した時に行使価格で株式を購入。その後に現状の株価で売却することで、差額分の利益が得られます。
ストックオプション制度を導入する3つのメリット
ストックオプション制度を導入した場合の3つのメリットを解説します。メリットは、
・優秀な人材の確保
・離職の防止
・従業員のモチベーションアップ
があげられます。順番に見ていきましょう。
優秀な人材の確保
ストックオプション制度があることで、将来的な報酬がインセンティブとなり、優秀な人材を集められるでしょう。
優秀な人材の確保は、企業の成長にとって欠かせない要素である一方で、優秀な人材には相応の給与を支払う必要があります。現時点では、財務的に高額な給与を支払う余裕がない。しかし、今後を踏まえた時に優秀な人材を確保したい場合、ストックオプション制度の導入が最適です。
ストックオプション制度を導入することで、現時点でキャッシュアウトは発生せず、将来的な株式売買による報酬を示すことができます。
離職の防止
ストックオプション制度は、離職防止に効果があります。
理由は、離職をするとストックオプションの行使ができないためです。ストックオプションには、行使条件を示すのが一般的であり、行使条件の例として、
1.行使するタイミングにおいて、取締役又は従業員であること
2.取締役や従業員ではなくなった場合、会社はストックオプションの権利を取り消せること
3.権利行使は、上場後2年以上を経過しないと行使できない
1と2は在職中でなければ権利行使ができないことを意味します。3は上場してすぐに権利を行使し、キャピタルゲインを得てすぐに退職することを防止するためです。
従業員のモチベーションアップ
ストックオプション制度の採用は、従業員のモチベーションアップにつながります。
理由は、会社の業績向上が自身の利益に直結するためです。ストックオプション制度では、行使価格と株価にプラスの差額が高いほど、利益が発生する仕組みです。株価を向上させるためには、業績や企業価値の向上が欠かせません。
そのため、従業員は企業価値の向上を目指して行動するようになるでしょう。
ストックオプション制度を導入するデメリット
ここからは、ストックオプション制度を導入した場合のデメリットを解説します。デメリットは、
・株価の低迷によるモチベーション低下
・従業員に不公平感がでる
・人材の流出
があげられます。順番に見ていきましょう。
株価の低迷によるモチベーション低下
ストックオプション制度は、行使価格よりも株価が上昇した場合にメリットが生まれます。
しかし、業績が悪化して株価が下落した場合はインセンティブとして機能しないため、付与対象者のモチベーションが低下してしまうかもしれません。
従業員に不公平感が発生する
ストックオプションを付与された従業員と付与されなかった従業員との間で、不公平感が発生する場合があります。
ストックオプションを付与する基準を明確にし、合理的かつ納得感がある付与ルールを作ると良いでしょう。
人材の流出
ストックオプションを行使後に、離職する従業員が発生する可能性があります。
ストックオプションに魅力を感じて入社した従業員にとっては、会社に在籍する理由が減ってしまうためです。
ストックオプション制度の種類
ストックオプション制度には様々な種類が存在します。
・有償ストックオプション
信託型ストックオプション
・無償ストックオプション
税制適格ストックオプション
税制非適格ストックオプション(1円ストックオプション)
順番に解説していきます。
有償ストックオプション
有償ストックオプションとは、付与される時に購入費用が発生する新株予約権のことです。有償ストックオプションの流れは、下記のようになっています。
1.会社は将来の株価を予想し、公正価値を算定
2.権利行使時の条件(業績や株価など)を付与し、発行価額を確定
3.従業員は発行価額を支払い、有償ストックオプションを購入
4.権利行使時の条件を達成させる
5.従業員が行使価額を支払い、有償ストックオプションを株に転換
課税のタイミングは株式の売却時にのみ、譲渡課税(最大約20%)が発生します。
なお、有償ストックオプションは、購入時にまとまった現金が必要な制度です。従業員にとっては、会社の成長性に確信がなければ、購入に踏み切れないでしょう。
自らの私財を投下するため、購入する従業員は覚悟を持った意欲的な従業員と言えるかもしれません。
信託型ストックオプション
信託型ストックオプションは、有償ストックオプションの一種です。従業員のポイントに応じて信託先からストックオプションを配分する仕組みです。信託型ストックオプションの流れは、
1. ストックオプションを全て信託に割り当てる
2. 従業員へストックオプションに将来交換できるポイントを割り当てる
3. 信託期間が終了後、ポイントに応じてストックオプションを割り振る
このように、最終的なストックオプションの付与は、信託期間中のポイントによって決定されます。
ポイントは会社への貢献に応じて付与できるのが特徴です。新しい人材を採用した際に、会社貢献度が未知数の段階で、ストックオプションを発行せずに済みます。
課税のタイミングは株式の売却時にのみ、譲渡課税(最大約20%)が発生します。
税制適格ストックオプション
税制適格ストックオプションとは、付与される際に購入費用が発生しない、無償のストックオプションです。
しかし、ストックオプションの税制の適格要件を満たすことで、権利行使時の給与課税が免除される優遇制度が受けられます。適格要件は租税特別措置法29条2に定められています。概要は、
・無償発行
・対象者は発行会社の取締役か使用人等の個人(大口株主以外)
・行使価額は年間で1,200万円未満
・行使価額は権利付与時点の時価以上
・権利行使期間は付与決議日から2年〜10年以内
このような要件を満たしたものが、税制適格ストックオプションです。
課税のタイミングは取得時には発生せず、株式の売却時にのみ、譲渡課税(最大約20%)が発生します。
税制非適格ストックオプション
税制非適格ストックオプションとは、ストックオプション税制の適用外であるストックオプションです。そのため課税タイミングが2回、発生します。
・ストックオプションの行使時に発生する給与課税(最大約55%)
・株式の売却時に譲渡課税(最大約20%)
なお、ストックオプション行使時では株式を得た状態であり、現金を得ている状態ではありません。キャピタルゲインを得る前に給与課税が発生するため、付与対象者にとっては負担となる側面があります。
1円ストックオプション
1円ストックオプションとは、権利行使価額を1円に設定した税制非適格ストックオプションのことです。行使価額が1円と低いため、実質的に株式と同等のキャピタルゲインが得られるのが特徴です。
退職金として1円ストックオプションを活用する場合が多く、給与課税(最大約55%)ではなく、退職金課税(最大約25%)と税率が下がります。
まとめ
今回は、ストックオプション制度の仕組みやメリット・デメリット。またストックオプションの種類を解説しました。
ストックオプション制度は、従業員のモチベーション向上や、優秀な人材を確保できる有効な手段ですが、制度の導入には、会計及び税務上の知識と処理が必要です。経営者1人でこれら全てに対応するのは、時間と労力がかかるでしょう。
そのため、バックオフィス業務のアウトソーシングを依頼できる、キャシュモの利用を検討してはいかがでしょうか?税務や経理の専門家が一体となり、ワンストップでサービスを受けられるため、総合的なアドバイスを受けつつ、制度設計や事務処理の外注が可能です。
ストックオプション制度を導入し、効果を発揮させるには上場に向けた動きが必要となります。社長が本業に専念するために、バックオフィスのアウトソーシングを検討するのも一考です。