敵対的買収とは?その概要や防衛策、メリット・デメリットなど

経営お役立ち情報

M&Aを行なう上でその手法のひとつに「敵対的買収」があります。
いったい敵対的買収とはどのような方法なのでしょうか?
また敵対的買収を仕掛けられた被買収側が取れる防衛策にはどのようなものがあるのでしょうか?

今回の記事では敵対的買収について、その概要、買収を仕掛けられたときの防衛策、敵対的買収に係るメリット・デメリットなど、詳しく解説します。

敵対的買収とは

敵対的買収とは、買収対象企業の経営陣や主要株主等の合意を事前に得ることなく一方的に行なう企業買収をいいます。
当事者の合意を得ずに行なうため「敵対的」と呼ばれ、逆に合意を得て買収を行なうときには「友好的」と呼ばれます。

買収者が買収対象企業を実質的に支配するためには、相手の発行済み株式総数の50%超を保有することが必要で、敵対的買収が成功して過半数の株式を持てば実質経営権が掌握でき、その結果、相手経営陣は退陣することが大半です。

敵対的買収の方法と仕組み

敵対的買収の成功には買収側が買収対象企業の株式を50%超保有する必要があります。

ただしその取得方法は、相手株式を株式市場で買付けするのでなく、市場外で株式公開買い付け(略称TOB)を行なうことが金融商品取引法で決められています。
具体的には、買収対象企業株式の「買付け期間・買取り株数・買取り価格」を事前に公告した上で、不特定多数の株主からの株式買取りを行ないます。

またこの場合、買付け時の価格はその株式の市場価格より高めに設定するのが一般的で、通常より30%~50%プレミアム(上乗せ)を付けます。
そのためこの敵対的買収は既存の株主にとっても決してネガティブな話でなく、買取り価格や会社の状況によっては積極的に応じる方も出てくるのです。

ただ日本では敵対的買収に対するイメージがまだ否定的で成功事例が少ないのが実態です。

友好的買収もある

敵対的買収と違い、買収対象企業の経営陣や主要株主との協議を経て、事前の合意を得て行なうのが「友好的買収」といわれる買収方法です。

敵対的買収にもそのメリットはありますが、友好的買収は事前に相手の合意を得ていることからその後の手続きを進めやすく、日本人のメンタリティとも合っていることから、日本で行なわれている企業買収の多くがこの友好的買収です。

近年、中小企業間で頻繁に行なわれているM&Aもこの友好的買収のひとつといえるでしょう。

敵対的買収があると株価はどう動く

敵対的買収があると、買収する会社の株価、および買収対象企業の株価はどのような動きを見せるでしょうか?

まず買収する会社の株価ですが、こちらは上がることが多くなります。
それは買収の成功で今後の事業拡大に廻りからの期待が上がり、それが株価に反映するからです。

一方買収対象企業の株価ですが、こちらも買収企業の株価に連動して上がる傾向が強いです。
これは主としてプレミアム価格で実施された株式公開買い付けの影響と考えられます。
しかしいったん株価が上がっても買収後には他の要因で下がることもあります。

敵対的買収を仕掛けられたときの代表的な防衛策

敵対的買収を仕掛けられた企業の経営陣としてもそのまま防戦一方でもありません。
敵対的買収に対する防衛策には色々な方法・手段があります。

そこでこの章では、買収対象企業側の経営陣が取れる代表的な防衛策について、買収の「事前」「事後」に分けて各々2件、詳しく解説します。

事前の防衛策

事前の防衛策のうち、代表的な対策としてポイズンピル(ライツプラン)とゴールデン・パラシュートがあります。

ポイズンピル(ライツプラン)

ポイズンピル(ライツプラン)とは、敵対的買収が仕掛けられた場合に備えて、事前に買収株主以外の既存株主に「市場価格より安い価格で株式を取得できる権利を与えておく」防衛策をいいます。(新株予約権付与)

こうしておくことで、仮に敵対的買収が仕掛けられても、その時点で既存株主に対してこの権利が発動され株主に新株が付与されるため、買収者の持株比率が下がり買収を防ぐことが可能になります。

ゴールデン・パラシュート

ゴールデン・パラシュートとは、敵対的買収の成功の結果、既存役員が解雇されたり、権限が縮小されたりすることに備えて、割増しした莫大な退職金が支払われるよう、会社が既存経営陣と事前に契約を結んでおく防衛策をいいます。

墜落する飛行機から旧経営陣が黄金のパラシュートで脱出するイメージから防衛策がこのように呼ばれるようになりました。

買収後にこのゴールデン・パラシュートが発動されると、多額の退職金支払負担から会社の資金繰りが一気に悪化、企業価値が大きく損なわれます。
その大きなリスクから買収側の意欲が一気に削がれる可能性があるので、この防衛策は事前の策として一定の効果が期待できるのです。

事後の防衛策

一方敵対的買収の事後の防衛策に、代表的な対策としてホワイトナイトと焦土作戦があります。

ホワイトナイト

ホワイトナイトとは、敵対的買収を仕掛けられた企業が自社と対等または上下流で協力関係にある第三者に依頼して、敵対的買収を実行した企業より有利な条件で株式公開買い付けを実施してもらうか、あるいは合併等の組織編成で敵対的買収を阻止してもらう防衛策をいいます。

新たに登場する友好的な買収者による防衛策を「白馬の騎士」になぞらえてこのように呼んでいます。

ただし友好的なホワイトナイトも買収後に旧経営陣に対して突然非協力関係者に変貌する可能性もあるので、必ずしも安全な防衛策といえない面もあります。

焦土作戦

焦土作戦とは、敵対的買収を仕掛けた企業が買収後に狙っている相手側の財産価値の高い資産や収益性を持つ事業を事前に関連先や協力先に売却したり、あるいは複数の金融機関から多額の借金をしたりすることで、結果として企業価値を引下げ、買収先の買収意欲を削ぐ防衛策をいいます。

敵対的買収が成功して買収者が会社に乗り込んできても、会社内にすでに資産価値のあるものがほとんど残っていないことから、防衛策としてこのような呼ばれ方をしています。

ただしこの方策も、たとえ防衛が成功しても、防衛の結果、企業価値の高い資産・事業等が売られてしまい、後から経営が難しくなる可能性が高いので、対策の導入については十分な検討が必要です。

敵対的買収のメリット・デメリット

最後は敵対的買収に係るメリット・デメリットです。

まず敵対的買収を受ける企業サイドですが、こちらに対してメリットはまずないといえます。
メリットがあるなら、そもそも買収しようとする先と敵対関係になる必要がないからです。

一方デメリットといえば、買収が成功した結果、買収対象企業の既存役員陣が一新されてしまい、一定期間、社内が混乱してしまうことが上げられます。
最悪の場合には企業の将来に不安を抱いた従業員の大量退職を招いてしまうかも知れません。

では敵対的買収を行なう側にとって、そのメリット・デメリットはいかなるものがあるでしょうか?

敵対的買収の買収企業のメリット

敵対的買収の主なメリットは以下の3つです。

相手と合意なく買収が可能

友好的買収を行なったときには、常に相手と妥協点を探りつつ交渉を進める必要があります。
一方敵対的買収なら、相手と合意形成を必要とせず手続きを進められるので、交渉にかかる時間や手間を大幅にカットできます。

大口株主含む一定の株主が売却に合意すれば一挙に敵対的買収が進みます。

企業改革が迅速に進む

敵対的買収のケースだと、一般的に買収側と被買収側の経営陣は激しく対立します。
しかし敵対的買収が成功すれば、買収側はその対立を乗り越えて改革を進められるでしょう。

買収の成功の結果、通常、旧経営陣は一新されてしまうので、その後は買収側の意図に沿って思い切った企業改革ができます。
またスピーディな改革は、被買収側に多少問題点があったとしても、それを乗り越えられるだけのパワーをもたらすのです。

既存株主に現状の会社のあり方を問える

会社経営陣にとって、自ら現状のやり方を見直し抜本的に変えていくことは、社内の混乱も含め相当の痛みを伴います。
そのため経営者が会社の問題点を真摯に見つめ自己改革を行なうのは容易ではありません。

一方敵対的買収を行なおうとする買収先から見れば、被買収側の抱えている経営上の問題点はたくさん見えます。

それらの問題点を株式公開買付けの形で既存株主に問いかけ、問題点を解決するために、買収側と被買収側の経営方針や事業戦略のどちらがいいのか、株主に直接選んでもらうことができます。
これも敵対的買収が持つひとつのメリットといえるでしょう。

敵対的買収の買収企業のデメリット

敵対的買収の主なデメリットは以下の3つです。

成功事例は多くない

日本の場合、敵対的買収の成功事例は、そのネガティブなイメージもあって決して多くありません。
買収案件のうち、M&Aを含み、成功事例の大半が友好的買収によるものです。

また敵対的買収で行なっても複数の防衛策が存在するため、あえて冒険を冒してまで敵対的買収を行なおうとする先も多くないのが実情です。

買収企業のブランドまで低下する

日本の場合、世間の敵対的買収に対するイメージが悪いので、たとえ敵対的買収を合理的と考え買収を進めていても、関係先どころか、買収先自身の顧客からも同意を得ることが難しいこともあります。

その結果、敵対的買収を強引に進めると、買収企業がせっかく時間を掛けて作り上げてきた自社のブランドイメージが毀損されるばかりか、取扱商品に対する信頼性まで大きく崩れてしまうリスクもあるのです。

買収後の統合がうまく進まずシナジーが活かせない

敵対的買収が成功すれば、新たに外部から新経営陣を送り込められるので、旧経営陣の考えなど無視して全く異なったやり方で企業経営が進められます。

しかし一方であまり急に企業改革が進められると、被買収側の社員の中にはその動きに不安を抱いたり混乱したりする者も少なくないでしょう。

それはひいては社員の大量離職につながるため、長期の混乱から買収後の統合がうまくいかず、結果として当初に期待していたようなシナジーも活かせないリスクがあります。
またたとえうまくいったとしても、組織として安定するまでには相当の時間が掛かることを覚悟せねばなりません。

まとめ

敵対的買収について、その概要、取り得る防衛策、メリット・デメリットの面を中心に詳しく説明してきました。

企業経営者が買収側、被買収側、どちらの立場に立つにしても、経営の基本的事項として、敵対的買収について一定の理解をしておくことは重要と考えています。

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