「顧客は自社に対してどれくらい好意的な印象を持っているのだろう…」と考えたことはありませんか?
顧客が抱いている満足度を知るための指標が、NPS(ネットプロモータースコア)です。NPSを活用することで、顧客が自社に対してどれくらい信頼をおいているのかを把握できます。
また、NPSは顧客満足度を把握するだけでなく、今後の利益向上にも関係します。上手く活用することで、収益アップを見込めるかもしれません。
この記事では、NPSの計算方法や活用するメリットについて解説します。効果的な活用のポイントもあわせて紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
NPSとは
NPSとは、顧客の自社およびその商品・サービスに対する満足度や信頼感を表す、顧客ロイヤルティをスコア化する指標のことです。
その確かな有効性から、グーグルやアップルといった米大手企業がこぞって活用し経営に役立てています。欧米では約3分の1の企業が導入しているといわれており、事業成長のため必要な指標であるといえます。
NPSと顧客満足度の違い
NPSは顧客の満足度をスコア化したものと説明しましたが、顧客満足度とはなにが異なるのでしょうか。
その違いは以下の2つです。
収益との関連性
NPSは企業に対する将来性も含めた評価であり、今後の収益に関係する指標です。
一方で顧客満足度は、計測時点での「満足」を指標にしたもので、商品のリピートや購入単価向上に必ずしも関連しません。顧客満足度が上がるにつれ、収益もアップしていくとは言い切れないのです。
判断基準の明確性
後ほど詳しく説明しますが、NPSは「この企業またはその商品・サービスを、知人や同僚にどのくらい勧めたいですか?」という質問を軸に計測されます。この質問は世界共通の標準的な基準として設定されており、企業間の比較が容易に行えます。
一方で顧客満足度は、企業によって質問内容や形式がそれぞれ異なり、判断基準はバラバラです。たとえば類似した商品の満足度を比較したいとき、A社とB社では異なる指標を利用している可能性が高いため、正確に比較することが困難といえます。
NPSの計算方法
前述したように、NPSは「サービスを知人や同僚にどれくらいおすすめしたいか」という質問をもとに計測します。この質問に対して、回答者は0〜10の間で点数を付けます。
0〜6点は「批判者」
7〜8点は「中立者」
9〜10点は「推奨者」
このようにカテゴリー分けし、最後に、「推奨者の割合(%)」―「批判者の割合(%)」を計算することで、NPSが算出されます。
たとえば10人の回答のうち、「9〜10点」の回答が5人、「0〜6点」の回答が2人だった場合、NPSは50―20で「+30」となります。
つまり、NPSは推奨者が多いほど高く、批判者が多いほど低くなるという仕組みです。
NPSを活用するメリット
ここからは、NPSを活用するメリットについて紹介します。
測定が簡単
メリットは、測定が簡単という点です。質問内容が定まっているため、アンケートを行うだけで測定可能です。紙面での記入はもちろん、ネット上にアンケートフォームを設置すれば、より手間を省いてデータを収集できます。
特別な予備知識や設備がなくても測定できるという点は大きな魅力ですね。
ひと目で数値が分かるため、分析しやすい
NPSは顧客からの評価をスコア化します。「半年前より数値が5上がった」というように推移がわかりやすく、ひと目で評価の良し悪しを把握できるため、分析が手軽な点がメリットです。
顧客に合ったアプローチにつながる
NPSは評価点によって顧客をカテゴライズします。その結果をもとにそれぞれのニーズに合った施策を行うことで、より高い評価につながると考えられます。
たとえば批判者が多い場合には、低評価を付けた理由を深掘りし、企業やサービスへの不満を洗い出すことができれば点数が上がる可能性があります。
反対に推奨者が多い場合は、なぜ高評価を付けたのか深掘りすることで、顧客に刺さる商品やサービスの特徴を掴めるのです。
事業を運用していく際の判断材料になる
NPSの数値は、事業の将来性を判断するための貴重な指標になります。どの商品のNPSが高いのか、どのサービスのNPSが低いのか分かることで、今後収益を上げる可能性があるか判断が可能です。
市場における自社の評価が明確になる
NPSは共通の測定基準を設けているため、他社との比較によって業界内での立ち位置を知ることができます。
さらに副次的な効果もあります。たとえばA社とB社のNPSを比較し、A社のほうが高かったケース。その場合、A社のほうがB社より顧客ロイヤルティが高いことになります。
しかし、B社のほうが業績が良いときはどうでしょうか。その場合は、A社が顧客ロイヤルティ以外の部分で問題を抱えていることが想定されます。
このように業界内での立ち位置がわかるというメリットが存在します。
効果的な活用のポイント
次に、NPSを効果的に活用するにはどうすればいいのか。3つのポイントに分けて解説します。
対象者の選定を綿密に行う
NPSの対象者は、分析結果をどのような事に活かしていきたいかによって選定しましょう。たとえば若い男性向けのスポーツクラブに関するNPSを測定したいとき、女性や高齢者を対象者にしては求めているデータを収集できません。
年齢や性別、地域など欲しいデータに当てはまる対象者選びが必須です。
できるだけ多くのデータを集める
収集するデータが多ければ多いほど、NPSの有効性は高まります。もし極端に回答数が少なかった場合、1人あたりの回答が占める割合が大きくなり、正確な測定ができなくなってしまいます。そのため、できるだけ多くの回答を収集しましょう。
測定後の分析を重ねる
NPS測定後は、なにが問題でなにが良かったのか、結果をもとに分析を行いましょう。分析を重ねていくことで、NPSや収益の向上につながっていきます。
運用する際の注意点
NPSを活用する際には、以下のポイントに気を付けて行いましょう。
アンケートの手法によって結果は変化する
NPSの回答を集めるためのアンケートは、その募集方法やタイミングによって結果が変化してしまう可能性があります。
商品を購入した人にその場で直接質問する場合と、インターネット上で質問する場合では、その場で聞いたほうが良い評価が返ってくることが多いと想定されます。購入直後の状態は、商品に対する魅力や期待値が比較的高いからです。
質問のタイミングや手法は、注意して選択する必要があります。
無回答の数も考慮する
NPSのアンケートは、無論強制ではありません。そのため無回答のケースも考慮した上で、分析を行いましょう。無回答の割合が多いと、正確な分析結果が得られません。
極端に無回答数が多い場合は、質問のタイミングなどを見直すことで回答を得られる可能性があります。
NPSを収益増加に結びつける方法
次に、NPSを収益増加に結びつけるにはどうすればいいかを解説します。具体的には、以下の方法が挙げられます。
顧客のニーズに合った商品・サービスを販売する
NPSを活用することで、顧客ニーズの把握が可能です。具体的には、推奨者に対してアンケートを行い高評価の理由を深掘りすることで、顧客の求めているものを割り出せます。
そのデータをもとに顧客に刺さる商品やサービスを販売し、収益増加に結びつけることができます。
NPSが高い商品を優先的に展開することで収益の増加を図る
NPSの高さは、顧客から求められているものという証です。この数値が高い商品に集中してマーケティングを行うことで、さらなる収益増加が期待できます。
批判者へのフォローアップを行う
批判者の割合が多い場合、フォローアップによって収益を改善できます。具体的な方法として、批判者へのアンケート調査やネット上の口コミを分析しましょう。
分析結果から改善点を見つけ出し、商品をブラッシュアップすることで、収益増加につながると考えられます。
NPSの活用事例
NPSの活用事例として、以下の2つを紹介します。
プロ野球球団「埼玉西武ライオンズ」
プロ野球球団の西武ライオンズはNPSを活用し、球場にまた来たいと思われるための改善点を可視化することに成功しました。その結果、ファンの声をフィードバックし、満足度の高い運営を実現しています。
コクヨ株式会社
大手文房具メーカーとして知られるコクヨはNPSを導入したことで、「顧客がどんな商品を求めているのか」「なにを改善するべきなのか」を把握でき、効果的なマーケティングに活用しています。
まとめ
以上、NPSについて解説をしました。
最後に、NPSを導入するべき企業の特徴についてお伝えします。
「商品の改善点を把握して、よりニーズに合ったものへと改良したい」
「業界内において自社がどの立ち位置にいるか知りたい」
「顧客ニーズを分析したいが、難しい測定方法は使いたくない」
このような悩みを抱えている企業は、ぜひ一度NPSを活用することをおすすめします。