中小企業経営者が知っておくべきデザイナーの守備範囲

経営お役立ち情報

「デザイナーさんにお任せします」と伝えたものの、アウトプットがどうもしっくりこなかった…そんな経験はないでしょうか?クライアントの「お任せします」という依頼は、実は発注されたデザイナー側も困っている場合が多いのが実情です。というのも、おおよその枠や方向性が決まっていての「お任せ」であれば大きな問題はないのですが、方向性やコンセプトが定まらないままの依頼は、最終的に納期の遅れや費用がかさむ原因となるからです。
そもそもこのようなデザイナーの役割に対する期待値の相違は、発注者側がデザイナーの守備範囲を十分理解していないことにも起因しています。

一般的には、デザイナーというとビジュアル面についての企画や表現をするイメージが強いのですが、実際は、必ずしもそれだけではありません。
ここでは、今まで曖昧だったデザイナーの守備範囲を理解し、イメージする結果を効果的に得られるよう、ポイントを解説していきます。

そもそもデザイナーとは?

デザイナーとは、ものをデザインし、視覚的な付加価値をつける仕事をする人です。デザインの対象は製品、書籍やプレゼンテーションなどのレイアウト、広告、Webサイトなど、多岐にわたります。それらをデザインする人を総合的にデザイナーと呼んでいるのですが、その活動内容や業界によって、必要とされる知識やセンスも少しずつ異なります。
ただ、どのデザイナーにおいても「クライアントの課題や目的を、デザインを通して解決する仕事」ということは共通しています。デザイナーの仕事は、センスを活かして何かを作ることが多いため、「アート」と混同されがちですが、あくまでもクライアントの課題解決をするための職業です。

例えば、若年層に訴求したい製品のデザインでは、若者が好みそうなパッケージ、ライフスタイルにあった形の設計や、製品化する際のデザインとコストの判断などが必要になります。
また、デザインする対象は必ずしも製品だけでなく、Webサイトやアプリなど電子媒体もあります。その場合は、ユーザーの目を引きつつ、必要な情報が見やすいデザインが求められます。

クリエイティブな側面が注目されがちですが、デザイナーの仕事とは、ターゲットの顧客層や機能、コストなどの様々な条件を汲み取り、最適なデザインを考案することです。デザインという手法を使い、クライアントの目的達成を目指していくのがデザイナーといえます。

デザイナーの種類と仕事内容

さまざまなデザインが存在することがおわかりいただけたと思いますが、具体的にはどのようなデザイン分野と仕事があるのでしょうか?経営者が理解しておくと役立つ、デザイナーの種類とその仕事内容について解説していきます。

ファッションデザイナー

デザイナーと聞いて、まず思い浮かぶのはこのようなタイプではないでしょうか。ファッションデザイナーは、洋服やバッグなどのファッションアイテムのデザインを手がける仕事です。
インスピレーションやセンスだけでデザインしているように思われがちですが、製品化の数年前から決められているトレンドを元にデザインしたり、生産工場などと連携したりと、市場の動向把握や実務能力も必要です。また、より商業的な、大量生産の服のデザインをする企業デザイナーも存在します。

プロダクトデザイナー

生活用品から家電、自動車など、「製品」を設計し、デザインするのがプロダクトデザイナーです。製品をデザインする時には、見た目の美しさだけではなく、使いやすさや機能性も考慮する必要があります。製品化するにあたり、技術者や販売担当者などとの連携も大切な要素のひとつです。
プロダクトデザイナーは、食器や文具、家具など身近な生活用品におけるニーズが高いのですが、機械製品などのデザインをする場合もあります。

DTPデザイナー

印刷物制作の現場で活躍するのが、DTPデザイナーです。DTPとは「Desk Top Publishing」の略で、誌面レイアウトから印刷用の入稿データの制作までをパソコンを使って行う仕事です。
DTPデザイナーは「レイアウト」の要素が強く、写真やイラスト、テキストなど、紙媒体の誌面を構成する「素材」を集め、それらを組み合わせながら余白やフォントなどを整え、印刷できる「データ」に整えていきます。同じようにパソコンを使うグラフィックデザイナーと、仕事内容が重なる場合もあります。

グラフィックデザイナー

グラフィックデザイナーもパソコンを使って印刷用のデータを作成しますが、DTPデザイナーとの大きな違いは「デザイン」の要素が強いことです。雑誌・新聞の広告やポスター・カタログなどのさまざまな媒体で、レイアウトや印刷用の入稿データまでを制作する仕事です。画像や文字などを効果的に使用して、情報やメッセージを伝えるデザインを考えていきます。
また、Webサイトなどのデザインを手がけることもありますが、こうした電子媒体を専門に行う人は「Webデザイナー」や「UIデザイナー」などと呼ばれます。

Webデザイナー

WebサイトをデザインするのがWebデザイナーです。Webサイトの構成やレイアウトを考え、デザインを通して見栄えをよくする仕事です。また、ただ見た目が良いだけではなく、Webサイトの目的やコンセプトを踏まえて設計していく力が求められます。大規模なWebサイト制作の場合は、Webディレクターや制作チームの管理者の指示のもと、デザインを行う分業型のWebデザイナーもいます。

UI・UXデザイナー

UIとは「ユーザー接点」、UXとは「ユーザー体験」をそれぞれ意味します。UIデザイナーは、ユーザーが「使いやすい」という観点から、Webサイトやソフトウェアなどのデザインを考案します。構図や色彩、フォントなどを総合的に工夫しながら、ユーザーにとって使い勝手のいいデザインを作ります。
一方、UXデザイナーは、ユーザーの「体験」に特化したデザインを考案します。ユーザーの行動をうながし、心地よく親しみや楽しさのあるデザインを提案します。市場調査やマーケティング、サイト解析などからニーズをキャッチし、サービス全体の設計をデザインしていきます。UXデザイナーは、UIデザイナーよりも広い範囲をカバーしているといえます。

以上、様々な分野のデザイナーについて解説しました。クリエイティブなイメージのデザイナーですが、どのような種類のデザイナー職であっても、センスや企画力の他に、ターゲットにあったモノを作り出す実務能力も必要だということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

デザイナーに必要な経営目線、経営者に必要なデザイン目線

クライアントの意図やメッセージを、誰にでも伝わるように可視化していくことは、デザイナーにしかできない仕事です。そこでデザイナーは、デザインをするだけではなく、クライアントの意図をしっかりと汲み取って、デザインに落とし込んでいく必要があります。

また同時に、発注者である企業側も、デザイナーにメッセージをしっかりと伝えていく必要があります。発注段階で、はっきりと具現化できていなかったとしても、「なぜそれを作る必要があるのか」「そのモノで解決したい課題」「そのモノで引きつけたいターゲットのイメージ」など、根底には発注に至った思いが何か必ずあるはずです。それを「デザイナーさんにお任せします」の一言で片付けずに、しっかりと伝えていくことで、デザイナー側も効率よく仕事を進めていくことができます。

まとめ

クリエイティブなイメージが先行しがちなデザイナーという仕事ですが、経営者の立場に立って、クライアントの意図を汲み取れるデザイナーこそ、今一番必要とされているといえるでしょう。また、企業側も、デザインを通して解決したい課題や思いをしっかりとデザイナーに伝えていくことが大切です。基本的なデザイナーの守備範囲や思考を理解しておくことで、お互いのコミュニケーションが円滑になり、より価値のあるデザインが生まれていくようになります。今後、ますます経営の差別化が必要になる時代において、このような理解を深めておくことは、中小企業の経営に有利に働くでしょう。

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