中小企業経営者が知っておくべきAIの基礎知識

経営お役立ち情報

情報分野での発展が目まぐるしい中、近年AIという言葉は日常生活でも耳にすることが多くなりました。
AIと言われて、どのような技術を想像されるでしょうか。
一昔前までは未知の技術として扱われ、SFの世界でしか語られてこなかったものでしたが、今では一般的な技術として認知され始めています。
現代のビジネスにおいても同様で、つい数年前までは資金力のある大企業でしか導入できないほどハードルが高かったものが、今では中小企業の導入が国から求められている時代です。
よく耳にするとはいっても、自身のビジネスに生かせるか不安な方もまだまだ多いと思います。
今回はAIの理解を深めることで、AIを身近なものとして捉え、ビジネスで生かす方法をお伝えします。

AIとは何か

定義

AIとはArtificial Intelligenceの略語であり、和訳で人工知能と呼ばれています。AIの定義としては

1.言語理解・推論・問題解決などの知的行動を人間に代わりコンピューターが行う技術
2.コンピューターを使って、知能を研究する計算機科学分野
3.コンピューターによる知的な情報処理システムの設計や実現に関する研究分野

のいずれかまたは複数該当していることを指します。
では具体的に知的行為や知能を研究することによってどのようなことができるのか見ていきましょう。

出来ること

文章理解

書かれた文章を理解して、翻訳、要約などを行うなど、与えられたデータから記事の作成ができます。ここでは、書かれている文章を理解している点がAIとしての強みでしょう。
スポーツの試合速報などがテーマの記事は、すでにメディアでAIが利用されてきています。

音声理解

人の声を認識し、テキスト化が可能になる機能です。
認識できるロジックは音声を一種の波形として認識し、その波形に対して最も近い文字を割り当てることで可能になります。
スマートフォンに備わっているSiriやGoogleアシスタント、アレクサがこれにあたります。

画像認識

AIの中でも画像認識は注目されており、画像内の物体を認識することに留まらず、認識したものがどのような状態かまで把握することができます。
定義によるカテゴライズ、つまり犬を犬と認識すること、人物の顔を認識すること等、スマートフォンの顔認証システム等で汎用化されています。
近年では人の手書き文字をテキスト化するOCR(光学文字認識)の活用も進んでいます。

推論

過去の知識から、投げかけられた問いに対して解答を見つけ出す機能になります。いずれもデータを知識として蓄積しなければなりませんが、近年では人の方が優れているとされていた将棋やチェスなどの分野でAIが逆転してきています。

機械制御

人では不可能な判断のスピードや動作を行い、都度最適だと思われる機械の制御を行なう機能です。
従来の自動化と異なる点は、AI側がデータを収集した上で、理解し知識化しているため単純な判断ではなく、学習した上での判断となる点です。

トレンドとしてのAI

2021年6月にオンラインで開催された人工知能学会全国大会では、AIを「AIマップβ 2.0 に準じて項目を分けた場合以下の内容になります。

認識•推定 152件
予測•制御 142件
生成•対話 110件
設計•デザイン 54件
分析•要約  41件
協働•信頼形成 15件

参照:https://www.idnet.co.jp/column/page_174.html

これにより近年のトレンドでは、「認識・推定」と「予測・制御」の2つが台頭しています。上記の通り、現在ではスマートフォンにも搭載されている機能なだけに身近でありながら、今後もアプリケーション開発などで機能が拡張されていくことが予想されます。
また、新分野の発展として「協働・信頼形成」にも着目していきたいです。設計、対話、デザイン、分析、複数のデータ分野を総合的に判断することで、偏見の排除をした信頼形成が可能になり、精神医学における人間とロボットの関係を良好なものにする試みがされています。

国の取り組み

経済産業省によるガイドラインの策定

2021年3月経済産業省より中小企業に向けたガイドブックと事例集を公表しました。
中小企業がAIを導入する場合を以下の2パターンに分け、それぞれの参考となるような資料を取りまとめ、公開することとしました。

1.中小企業が自らAIを導入する場合
2.中小企業自身だけでは難しく、AI実装の知見を持つ外部人材と協働して導入を進める場合

参照:https://www.meti.go.jp/press/2020/03/20210331010/20210331010.html

補助金

ガイドラインと同様に、国はAI普及のために各種補助金制度も設けているため、3種類程紹介します。
「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」中小企業庁
製造業において、生産性の向上を目指す中小企業を対象として、交付されています。
通称「ものづくり補助金」においてAI導入を目的とするのであれば一般型が適用され、補助上限は1,000万円で、補助率は中小が1/2、小規模 2/3となっています。

「ICTイノベーション創出チャレンジプログラム」総務省

こちらは導入よりもやや開発や協業向けのものになります。AIを含むICT分野全般が補助対象となり、AIを活用した製品やサービスの開発にあたり、事業化で必要となる資金を支援する仕組みになっています。
主に事業化を目指すベンチャー企業などに対しては1億円以内 で、補助率は2/3となっています。

「サービス等生産性向上IT導入支援事業」経済産業省

最後におすすめの補助金がこちらです。
「IT導入補助金」とも呼ばれているので、こちらのほうがポピュラーかもしれません。
本助成金は生産性の向上に貢献するITツールの導入を対象としているため、AIも含まれています。補助額は30万~450万円、補助率は1/2とされています。ものづくり補助金のように分野の制限がされていないため、ラインの効率化やバックオフィスの効率化などにも使用できるため、ぜひチャレンジをして欲しい補助金です。

中小企業にとってのAI

コスト

次に、中小企業がAIを導入するにあたって、最もリスクとして見られているのは導入コストであるというデータがあります。
上記の通り、AIにも数多くの種類があること、AI自体の質などに違いがあるため、一概にいくらというのは断言できませんが、製造業などの機械制御であれば50〜300万、ECサイトのチャットボット等では30〜200万円程度となっており、いずれにせよかなり開きがあります。
一年間運用するとして、会社員一人分の年収と天秤にかけてみるとどう感じるでしょうか。

導入準備

このように、AIの導入コストは決して安価ではありませんので、使わない機能などをつけてしまうとすぐに高価になりがちです。
そのため、まずしなければならないのは会社としてどのような機能が必要か、どの業務を効率化していきたいかを決めておくことです。
加えて、導入前にAIの知識の拡充をしなければならないことから、データの蓄積をしておいて、すぐに学習できるようにしておくといいでしょう。
企業にとってのAIは非常に重要でありながら、コストが見え辛い一面があります。そのため、各々の会社を見てもらうため現在ではAI開発の相見積もりサイトもございますので、そちらで確認してみるのもいいかもしれません。

中小企業はどのように活かしたらいいか

年々AIの重要性は上がっており、以前に比べて導入費用が安価になってきたことからAIは大企業だけのものではなくなってきました。導入ハードルも補助金を考慮すれば決して高くなく、国も推進していることから、益々AIの必要性は高まってくると予想されます。
AIの導入にはコストがかかるといったデメリットもありますが、業務の効率化を目指している方はAIを導入してみるのはいかがでしょうか。