サブスクリプション型ビジネスの急拡大に伴い、昨今よく耳にする『カスタマーサクセス』。その組織は、『顧客を成功へ導くことで、自社の成功を実現させる』という重要な役割があります。この記事では、カスタマーサポートとは異なるカスタマーサクセスの業務について要約し、解説していきます。
カスタマーサクセスとは?
カスタマーサクセスとは、主にサブスクリプション型ビジネスを展開している企業で採用されている組織のことを指します。
顧客を成功へ導くことにより、LTV(Life Time Value:「顧客生涯価値」)を最大化させることを目的としています。
直訳すれば『顧客の成功』となりますが、さらに言うと『顧客を成功へ導くことで、自社の成功を実現する』という解釈にもなります。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
両者の役割を表にまとめると以下のようになります。
カスタマーサポートの役割は『顧客の問題を解決すること』
カスタマーサポートは、顧客に問題が発生した際に連絡をもらい、その問題を解決することが主な役割です。サービスの内容によっては、ヘルプデスクやテクニカルサポートと表記する企業もあります。
カスタマーサポートの業務のトリガーは、トラブルの発生や問合せなどによる顧客からの連絡です。なので、基本的に『受け身』の業務スタイルとなります。
例えば、BtoBのビジネスでサーバなどの保守を請け負っている場合、サーバに故障が発生した際に24時間365日のサポートセンターへ、電話及びアラートが発報され障害を検知します。その後、保守の1次対応~オンサイト保守などを経て障害復旧をします。
このような業務がカスタマーサポートの業務となります。
カスタマーサクセスの役割は『顧客を成功へ導き自社も成功すること』
カスタマーサクセスは、顧客を成功へ導くことが目的であるため、こちらから顧客へアプローチをする『能動的』な業務スタイルとなります。
具体的に顧客の成功とは、自社のサービスやツールを活用してもらうことにより、業務の効率化によって人手不足を解消したり、売上や利益の向上を体験してもらうことを指します。
カスタマーサクセスが注目されている背景
カスタマーサクセスという言葉が浸透してきたのはここ最近ですが、SalesForce社が最初にその概念を唱えだしたのは20年以上前の2000年ごろのことでした。
SalesForce社はサブスクリプション型のビジネスモデルを主力サービスとしていたため、クラウドを通じたSaaS製品を継続的に利用してもらうことで、顧客の業務改善を支援していくというスタイルから、カスタマーサクセスという概念が誕生しました。
ビジネススタイルの変化
2000年当時のITベンダーのビジネスモデルは、『売り切り型』のビジネスが中心でした。パッケージのソフトウェアや、大規模なカスタマイズ製品が主流でした。しかし、システム導入時には大きな売上が立ちますが、日々変化してゆく顧客の業務プロセスに対応ができなくなる製品が多く、その後のシステムリプレース時には他社へ移ってしまう大きなリスクがありました。
しかし、SaaSのようなサブスクリプション型のソフトウェアは、導入時には大きな売上ではないものの、導入後、カスタマーサクセスによって顧客の業務プロセスや戦略の変化に対応しやすく、パッケージ型のソフトウェアに比べて、継続して長く利用してもらいやすい強みがあります。
所有からシェアする時代へ
時代は『所有から利用する時代へ』と、徐々に変化していくと言われています。
戸建てやマンションについても所有から利用(賃貸)へ、車も所有から利用(サブスク)へという流れが大きくなっています。
上述したように、ITの分野でもソフトウェアが所有から共有へという流れが急速に広まってきました。従来型の初期費用が莫大なソフトウェアを購入し、人事制度の改革や、業務プロセスの変更、事業戦略の変化に対応しきれないパッケージのソフトウェア商品は、一度導入してしまっては、別の高額な製品へリプレースすることしか選択肢がなくなってしまいます。
しかしSaaSであれば、途中で他のプランへの変更や解約が可能なため、社内の決済も取得しやすく、導入しやすいという顧客側のメリットもあります。
なぜカスタマーサクセスが重要なのか?
カスタマーサクセスの第一の役割は、『顧客を成功へ導くこと』と前述しました。なぜ顧客を成功に導くことが重要なのかというと、サブスクリプションビジネスである自社サービスを使用してもらい、顧客に成功を体験してもらうことで、継続してサービスを利用してもえるからです。それが、カスタマーサクセスの最も重要な役割なのです。
また、その成功体験の先にある『顧客でも気づいていなかった』ニーズや問題点、課題などを深堀りし、ワンランク上位のサービスの提案(アップセル)や、他の自社サービスの提案(クロスセル)を行い、さらなる自社の売上に貢献するというところまでが、カスタマーサクセスの役割となります。
加えて、自社のサービスラインナップでは解決出来ない顧客の課題については、商品開発部と連携して新商品の開発につなげることも、カスタマーサクセスの重要な役割の一つです。
カスタマーサクセスの指標
カスタマーサクセスがうまく機能しているかを評価する指標(KPI)について、主なもの5つを簡単に解説します。
解約率(チャーンレート)
第一に、サブスクリプションビジネスはこの解約率をいかに下げられるかが、カギとなります。
継続率(リテンションレート)
継続率とは、サービスを継続してくれている顧客の割合になります。解約率は「解約してしまった顧客の割合」に対して、継続率は「使用し続けている顧客の割合」となります。
オンボーディング完了率
顧客がサービスを導入してから運用を開始し、サービスの内容を理解して定着するまでの期間を指します。具体的にどの状態となればオンボーディング完了となるかは、サービスによって異なるため企業によっても様々です。
アップセル率・クロスセル率
上述したアップセル(上位クラスのサービスへの乗り換え)、クロスセル(他の自社サービスの追加・購入)について、どれだけの顧客に対して販売が可能となったかの指標です。
NPS®(ネットプロモータースコア)
NPS®とは、利用している顧客のアンケートをとり、以下の3タイプに分類して顧客と自社サービスの相性を数値で表したものです。
◉推奨者(10~9点)
商品に満足している人。知人や同僚に対して自社について好意的な話しを広げてくれます。
◉中立者(8~7点)
良くも悪くもどちらでもない、受け身な人。魅力的な商品があれば乗り換えてしまいます。
◉批判者(6~0点)
その製品を使用して幸せになれなかった人。自社の否定的な口コミをすることも多いです。
※計算方法は『推奨者』の全体の割合から、『批判者』の全体の割合を引いた結果がNPS®となります。中立者は計算に入れないという特徴があります。
まとめ
急速なビジネスモデルの変化により、営業スタイルもその変化に合わせるようにして行かなくてはなりません。
SaaSのようなサブスクリプション型のサービスを主体とする企業は、従来型の営業スタイルを続けていては、時代の変化に取り残されてしまう可能性があります。
解約率を下げ、LTVを最大化させるため、カスタマーサクセスという組織の導入を検討してみるのも、新しい時代の中で生き残るための最適な手段なのかもしれません。