知的財産権とは?中小企業でも自社の権利を守り、戦略的に活用していきましょう

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「知的財産権」と聞くと、少し難しく、あまり関係がない分野だと感じるかもしれません。
しかし知的財産権は、中小企業を含め、多くの企業にとって、自社の企業価値を高め、有利な企業経営を行うためには欠かすことのできない権利です。
この記事では、知的財産権の概要や企業経営でどのように活用できるのかを解説します。

知的財産権とは

人が考え、創造したものに財産的価値を見いだし、法律上権利として保護されるものが「知的財産権」です。知的財産権にはさまざまな種類がありますが、ここではそれぞれの保護の対象から下記の3つに分類してご説明いたします。

・「技術」を守る権利:特許権・実用新案権・不正競争防止法による営業秘密
・「デザインや創作的な表現物」を守る権利:意匠権・著作権
・「ブランド」を守る権利:商標権・商標等表示

「技術」を守る権利

企業経営の中核ともいえる「技術」を守る権利には、特許権、実用新案権、不正競争防止法による営業秘密があります。
特許権は、技術的アイデアから生まれる「方法」や「物」自体、「物の生産方法」が保護の対象です。
特許権の対象となるほど高度ではないアイデアは、実用新案権で保護されます。
不正競争防止法による営業秘密は、いわゆる技術やノウハウなどのような、生産方法や販売方法、事業上有用な技術や営業情報が保護の対象です。営業秘密として有名なものでは、コカ・コーラの原液成分などがあります。

「デザインや創作的な表現物」を守る権利

オリジナリティのあるデザインや創作物を保護する権利には、意匠権と著作権があります。
製品など物の見た目である「デザイン」のうち、工業上利用できるものを保護する権利が意匠権です。
意匠権は、令和元年の法改正により、保護の対象範囲が拡大し、画像や建築物の外観や内装デザインも保護対象となりました。実際に、建築物の意匠として駅舎や、内装の意匠として回転寿司店の内装などが登録されています。
一方、著作権は、小説や音楽、絵画など、個人が思想や感情を創作的に表現した著作物を保護する権利です。工業上の利用を規定する意匠権とは趣旨が異なり、著作物を創作した著作者の努力に報い、文化が発展することを目的にしています。

「ブランド」を守る権利

自社の商品やサービスを他と区別するための名前やロゴなど、いわゆる「ブランド」を保護する権利には、商標権や不正競争防止法による商品等表示があります。
商標権は、マークやネーミングなどの識別標識を保護する権利です。マークやネーミングは、その歴史が消費者の信用として積み重なり、ブランドイメージを持つため、企業経営上重要なものになります。
不正競争防止法による商品等表示は、既に広く知られている自社の商品やサービスと同一又は類似の表示を他人にされ、商品やサービスの混同が起こることを防ぐための規定です。一定の要件を満たしていれば、商品等表示として自社の商品やサービスを保護することができます。

知的財産権の保護対象

上述した通り、知的財産権は、権利によって保護の対象となるものや権利の効力が異なります。
そのため企業として知的財産権を適切に活用するには、自社が何を守らなければならないかを考えることが大切です。
自社の技術やブランドを保護し、安定した企業経営を行うためには、自社の経営方針とあわせて、効果的な知的財産戦略を考える必要があります。

知的財産権の役割

法目的としての意義

知的財産権は、法律的な側面からみると、アイデアやデザインなどの「情報」を保護するものです。
情報は、知ることさえできれば、簡単に模倣される可能性があります。そのため知的財産権は、その情報を生み出した創作者の権利を保護し、他者が利用することに一定の制限を設けるものといえます。
創作者の権利を適切に保護することで、新たな発明や創作の意欲を高め、経済や産業、文化の発展を意図しているのです。

企業として知的財産権を取得するメリットは何があるのか

企業経営の側面から知的財産権を考えると、知的財産権の取得・活用には多くのメリットがあります。
たとえば、知的財産戦略を検討することは自社の強みを見える形にすることともいえます。その過程で社員の頑張りや工夫が見えるようになり、社内の情報共有が進むことで従業員の知識や意識の向上も可能です。
知的財産権の取得は、対外的なブランド価値の向上にもつながります。特に特許権などは、競合他社に対する優位性を示すものとなり、業務提携など事業経営の幅が広がるでしょう。

活用する方法

企業にとって知的財産権がもたらすメリットを前述しました。
そこで次に、実際にどのように活用できるのか、「攻めの活用」と「守りの活用」の視点からご紹介します。

攻めの活用

取引の獲得・拡大

知的財産権によって、新規取引の獲得や既存の取引の拡大が可能です。
知的財産権は技術力の高さや自社商品・サービスの独自性を示すものであり、自社が権利として保有している限り、競合企業はその技術や独自性を模倣することはできません。そのため競合企業との差別化にもつながります。

提携の獲得、市場規模の拡大

知的財産権をベースにした他社との提携の獲得や、他者へのライセンス付与により市場規模の拡大が可能です。
前述した通り、知的財産権を自社が保有している限り、他社はその技術やアイデアを利用できません。そのためその技術やアイデアを利用することでメリットがある企業との提携や、ライセンス契約の可能性があります。他社が参入することで、自社市場の拡大にもつながります。

ライセンスによる収益

知的財産権は、他社とライセンス契約することや、権利自体を譲渡することが可能です。
継続的にライセンスフィーを受け取ることや、譲渡によって収益をあげることも考えられます。

資金調達

知的財産権は自社の独自性や優位性を示すため、資金調達の際に利用することが可能です。
投資家へのアピール材料にもなりますし、融資を受ける際の担保として利用することもできます。

守りの活用

参入障壁による自社市場の保護

知的財産権の存在は他社に対する参入障壁として機能します。
他社が保有する知的財産権を侵害することは、損害賠償や製造販売の差し止めなど事業リスクにつながるからです。知的財産権により効果的な参入障壁を築くことで、他社の自社市場への参加を遅らせることができます。その結果、他社類似製品による値崩れなどを防ぐことで、自社の利益を高めることが可能です。

紛争の予防

知的財産権の取得は、他社の権利取得を妨げ、将来的な紛争の発生を事前に予防することが可能です。
知的財産権は先に取得されている場合、後から同じ技術やアイデアに基づく権利を取得することが困難だからです。そのため他社に権利取得されることによる、自社の他社権利侵害リスクや権利侵害による紛争を防ぐことができます。

中小企業にとっての必要性

ここまで知的財産権の概要や活用についてみてきましたが、「中小企業でも必要なのだろうか」と考える方もいるかもしれません。

結論からお伝えすると、知的財産権は中小企業にとっても重要なものです。

なぜなら、大企業に比べて、ひとつの技術やアイデア、ブランドの価値が相対的に大きいからです。
たとえば、ひとつのコア技術をもとに事業を行っており、その技術を知的財産として保護していなかった場合、他社企業がその技術を模倣し、製品を販売することを防ぐことはできません。
逆にいえば、ひとつ重要な技術やアイデアを権利として保有していることで、世界と戦える可能性があるともいえます。

中小企業こそ、企業価値や競争力の向上に知的財産権の活用を欠かすことができないのです。

まとめ

今回は知的財産権の活用について、種類や権利の対象、メリット、活用手段などを解説しました。

知的財産権は、自社の独自性やアイデアを守り、企業価値を高めるための権利です。
事業経営上、独自のアイデアや新しい技術を生み出すことは重要ですが、その生み出したものを守り活用していくために知的財産権の活用は欠かせません。

この記事を参考に、自社の知的財産戦略について考えてみてはいかがでしょうか。