新たに会社を設立するには、多くの書類が必要となりますが、どこに何の書類を提出するのか、初めて設立する場合であれば、よくわからないかと思います。
実際の書類作成などは、司法書士や税理士等の専門家に依頼すると考えていたとしても、自分でもある程度、把握しておいたほうがいいでしょう。この記事では会社設立に必要な書類について解説し、提出先と提出方法も併せてご紹介していきます。
これから起業して会社設立をお考えの方には参考になると思いますので、ぜひ最後までお読みください。
会社設立に必要書類の提出先
会社を新たに設立するには、「公証人役場」「法務局」「税務署」の3か所に、それぞれ必要書類を提出することになります。これらの提出先は、それぞれどのようなところで、どういった書類を扱っているのかをご紹介していきます。
公証人役場
公証人役場は、一般の人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、当事者が作成した書類が、法的な要件を満たした正式な書類であることを認証する役所です。ここで認証された書類を公正証書といいます。
会社設立においては、「定款」という会社のルール等を定めた書類を認証してもらいます。設立登記には認証された定款が必要とされています。
公証人役場は、全国に約300ヵ所あり、裁判官や検察官を長年務めた方が公証人として業務にあたっています。
法務局
法務局は法務省の管轄のもと、全国に法務局、地方法務局、支局、出張所あわせて約400カ所が設置されています。扱っている業務は、国籍、戸籍、登記、供託及び公証に関することと、人権に関することがあります。
会社設立においては、設立登記と代表印の登録をしてもらう役所です。設立登記は、会社の本店所在地を管轄する法務局に申請します。
税務署
税務署は、国税庁と国税局の下部組織として、全国に500ヵ所以上設置されています。所得税、法人税、消費税、贈与税など、「国税」といわれる税金を扱っています。
法人の設立登記が完了したら、税務署に開業届などの書類を提出し、事業を始めることを届け出る必要があります。
公証人役場に提出する書類
株式会社の設立登記には、公証人の認証を受けた定款の提出が必要です。そのため設立登記をする前には、定款の認証を受けるために公証人役場に書類を提出します。
合同会社などの持ち分会社では、経営者と出資者が同一であることが殆どであるため、争うことがないと考えられ、定款の認証は不要とされています。
定款
定款とは、会社の在り方や基本ルールを定めた書類のことで「会社の憲法」ともいわれています。会社の商号、本店の住所、事業内容といった基本項目のほか、方針となる規則を定めて掲載しています。これまでは紙で作成していましたが、最近ではPDFデータで提出する電子定款も増えています。
定款認証には、定款を3通用意します。公証人が認証した上、1通は公証人が役場原本として公証役場で保管し、1通は法人保管用原本として、残りの1通は設立登記の申請の際に認証を得た謄本として必要となるからです。
定款に必ず記載しなければならないのは、下記の事項です。
・事業の目的
・商号
・本社所在地
・資本金額(出資財産額)
・発起人の氏名と住所
・株主総会の開催規定
・役員報酬に関する事項
・配当金に関する事項
代理人が定款の認証に行く場合は、「委任状」「代理人の身分証明書または印鑑登録証明書」「代理人自身の実印または認印」が必要になります。
認証の手数料は一件につき5万円、特定文書にかかる印紙税として収入印紙代4万円がかかります。また、設立登記には認証された定款の謄本(写し)を提出しますが、その請求手数料として 2,000円程度(謄本1ページにつき250円)が必要になります。
なお、2022年1月1日から、定款の認証にかかる手数料が以下に変更されます。
・資本金100万円未満:3万円
・資本金100万円以上300万円未満:4万円
・資本金300万円以上:5万円
株主全員の印鑑証明書
定款認証のために公証人役場に行く際には、発起人といわれる設立時の株主全員の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)が1通ずつ必要になります。
公証役場に当日出向くことができない発起人は、委任状を定款の表紙につけて、実印で押印し、印鑑証明書を合わせて提出することになります。
電子定款 提出と受取方法
近年は、紙の定款に代わってPDF化した電子定款を認証してもらうケースが増えています。
電子定款は、株式会社の定款認証にかかる収入印紙代4万円が不要となるということや、インターネットを通じて請求できるというメリットがあります。ただし、電子定款を作成するためには、ICカードリーダライタなどの機材を揃える必要があるため、自分でやるにはそのあたりのことも考えたほうがいいでしょう。
また、認証の請求はインターネットを通じてできますが、受取の際には公証役場に出向く必要があるので、ご注意ください。
法務局に提出する書類
定款の認証が完了したら、会社法人の登記と代表印の登録をしてもらうための書類を法務局に提出します。
登記手続きによって、会社の存在を公に示すことができるようになります。そして、代表印を登録することで登記した法人の印鑑証明書が発行できるようになります。
登記申請書
登記に必要な項目を記した登記申請書を提出します。書式は法務局のHPからダウンロードして使うことができます。
登記申請の際には、収入印紙を購入して登録免許税を納めます。登録免許税の金額は、資本金の額の0.7%と定められていますが、最低額が設定されおり、株式会社は15万円、合同会社は6万円となっています。
認証済みの定款
公証人役場で認証してもらった定款を添付します。電子定款の場合はCD-R等のメディアに入れて提出することになります。
取締役・代表取締役の就任承諾書
設立の際の取締役、代表取締役、監査役の就任を承諾したという書類を提出します。
発起人の決定書
定款では本店所在地を番地まで詳しく載せる必要がありません。その場合には、本店の所在地を発起人の合意で決定したという書類を用意します。
資本金振込を証明する書類
発起人が資本金として出資したお金が集まったことの証明となる書類が必要になります。会社がまだできていないので、発起人のうちの誰かの個人口座に資本金を振込み、払込みがあった証明として、通帳のコピーあるいはネットバンキングの取引履歴を印刷して添付します。
印鑑届出書・印鑑カード交付申請書
代表取締役・取締役個人の印鑑証明書
会社の代表印を登録するために「印鑑届出書」に必要事項を記入して提出します。印鑑届出書には、代表取締役個人の実印の押印と、発行後3ヶ月以内の印鑑証明書を添付します。
また、登録した印鑑で印鑑証明書を発行してもらうための印鑑カードの交付申請書を記入して提出します。書式は法務局の窓口あるいは法務局HPからダウンロードして利用することができます。
登記すべき事項を保存したCD-R等
「登記すべき事項」を入力したファイルをCD-R等のメディアに入れて提出します。A4サイズの紙に印刷して提出することも可能です。
登記書類は郵送提出可能
法務局に提出する書類は、郵送で提出することが可能です。本社所在地を管轄する法務局宛に送付すれば対応してもらえます。普通郵便でも問題ありませんが、大事な書類ですので念のため書留で送付することをおすすめします。
税務署に提出する書類
会社法人の登記が完了したら、会社を新たに設立したことを税務署に届け出しなければなりません。所得税、法人税、消費税などの「国税」を扱うのが税務署です。
法人設立届出書
法人設立から2ヶ月以内に設立の届出書を提出します。書式は窓口か、国税庁のHPからダウンロードして利用することができます。
給与支払事務所等の開設届出書
法人の設立日から1ヶ月以内に提出します。当面は従業員を雇わないとしても、あとから届けるのも手間なので、一緒に提出しておいたほうがいいでしょう。
青色申告の承認申請書
設立から3か月以内に、この会社は青色申告をします、という申請書を提出します。青色申告にはいくつか大きなメリットがあるので、忘れずに申請しておきましょう。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
源泉所得税は給料を支払った月の翌月10日までに毎月納税しなければなりませんが、この書類を提出しておけば、半年に一度まとめて納税すれよいことになります。提出義務はありませんが、提出しておいたほうがいいでしょう。
e-Taxでの提出について
e-Taxソフト(WEB版)の「法人設立及び異動手続きの申請・届出」を利用することで、インターネットを通じて法人設立の届出をすることができます。
税務署以外の税金に関する開業届
税務署が扱う国税の他に、会社法人は「法人住民税」と「法人事業税」を納税することになります。管轄する都税事務所や道府県庁、市町村にも、税務署と同様の開業届の提出が必要ですので、忘れずやっておきましょう。
まとめ
会社設立には、必要な書類が多岐に渡り、提出先もいくつもあります。新たに起業すると、こうした手続き以外にもやることが多く、書類作業は面倒に思うかもしれませんが、抜け漏れがないよう注意しましょう。
なお、令和3年2月からは、法人設立にかかる申請手続きを、インターネットを通じて1回の入力でできるようになります。詳しくは国税庁のHPをご確認ください。
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