THE MODELとは、一人の営業マンが、顧客開拓から受注後のサポートまでを担当する従来型の営業スタイルとは異なり営業業務をプロセスごとに細分化し、部門分けをする営業モデルのことです。
この記事では、THE MODELはなぜ売上が向上するのか、また導入が向いている企業はどのような企業なのかを解説します。
THE MODEL とは?
THE MODELとはセールスフォースドットコムで確立した営業モデルとされ、日本ではセールスフォースドットコム日本法人で活躍した『THE MODEL』の著者『福田康隆氏』が広めました。
新規顧客の開拓から受注後のサポートまでのプロセスを役割ごとに分け、サービス導入後もTHE MODELのサイクルを繰り返すことで、再び新規案件へつなげられるという特徴があります。また、従来型の営業スタイルでは、担当者が病気や怪我で倒れた場合や退職をした際、営業力が低下してしまうリスクがあります。しかし、THE MODELは営業の業務を細分化してチームを編成するので、属人的なリスクを軽減できます。
注目されている理由
書籍『THE MODEL』が2019年に出版されたことで注目を浴び、採用する中小企業が増え、結果を出しています。
例えば、営業・集客・経営課題を、経営者のマッチングによって解決する『チラCEO』を展開しているオンリーストーリー社(社員数100人以下)は、2019年にTHE MODELを取り入れ、アポイントを7倍までに増やすことに成功しました。Web広告から獲得した200件の潜在顧客に対し、それまで10件に満たないアポイント取得数が70件までに跳ね上がりました。
THE MODEL 4つの営業プロセス
THE MODELは、マーケティング、インサイドセールス、営業(フィールドセールス)、カスタマーサクセスの4つの部門に分かれています。
それぞれの部門の目標数値である『KPI』(目標の達成度を図る指数)を『ゴール』として設け、獲得した情報を次の部門へ受け渡すという流れになります。またTHE MODELでは、特にカスタマーサクセスを重要視しています。
マーケティング
マーケティング部門のゴールは『潜在顧客を発掘すること』です。
目標指数であるKPIは潜在顧客数となります。展示会やセミナーの開催、メールマガジンやWebマーケティング(広告配信・SEO対策・SNSなど)によって、自社商品やサービスの知名度を向上させます。そして、発掘した潜在顧客の情報をインサイドセールスへ受け渡します。
インサイドセールス
インサイドセールス部門のゴールは、発掘された潜在顧客を『案件へ成長させること』です。
KPIは案件数となります。潜在顧客は、「契約を検討している」「購入はまだ分からない」「興味がない」など、状況が異なります。そこで、Web会議、電話、メールなど、対面ではない手法を用いてコンタクトをとり、自社商品やサービスをアピールして購買意欲を高めます。その後、購買意欲が十分に高まり、案件化した顧客情報を営業へ受け渡します。この一連の取り組みは『ナーチャリング(育成)』とも呼ばれます。
営業(フィールドセールス)
フィールドセールス、いわゆる外勤営業のゴールは『案件を受注すること』です。
KPIは受注数となります。商品やサービスの具体的な説明や提案を行い、案件成約までを担当します。従来の営業に近いイメージと言えます。インサイドセールスとは違って対面での営業活動となりますが、最近ではコロナの影響でオンライン営業も増えています。
カスタマーサクセス
カスタマーサクセス部門のゴールは、成約した顧客が『サービスを継続利用してもらうこと』です。
KPIは継続契約数となります。また、サービス導入後の能動的なサポートやコミュニケーションによって顧客満足度を向上し、他のサービスの案件発掘のキッカケを作る役割も担います。また、顧客からの悩み相談から得た情報が新しいサービスの開発につながる事も期待できます。
THE MODELがカスタマーサクセスを重要視している理由は、セールスフォースドットコムのようなサブスクリプション型ビジネスにとって、いかに継続してサービスを利用してもらえるかが売上の拡大に最も重要だからです。しかし、顧客の離脱を防ぎ、他の顧客に良い評判を伝えてくれたり、新しい顧客を紹介してくれたりするロイヤルカスタマーに育成するという考え方は、サブスクリプション型ではないビジネスでも重要です。
THE MODEL を導入するとなぜ売れるようになるのか?
THE MODELの導入により、現状の営業プロセスの弱点を洗い出すことができます。また、属人的であったこれまでのリスクを改善し、効率的に新規案件の発掘も可能となる仕組みづくりが可能です。
営業プロセスの弱点が見つかる
部門ごとにKPIを設けることによって、どの部門に問題があるのかを可視化することができます。営業プロセスの問題点にクローズアップすることで、営業力の向上を図ることができます。
各部門の専門性と効率の向上
各分野において集中的に業務を行うことで、部門のスペシャリストが育ちます。同時に、部門全体の効率化が進むので、より多くの顧客獲得や売上増大につながります。
属人性のリスクが軽減される
従来型の営業は、担当者が一人で案件発掘からカスタマーサポートまでを担うケースが多いですが、THE MODEL型の組織化された営業プロセスでは、人材が入れ替わったとしても、営業力が極端に落ちる心配がないというメリットがあります。
再びアプローチすることで新規案件獲得へ
マーケティング部門が発掘した潜在顧客すべてが、自社の商品やサービスの購入に至るわけではありません。契約までに至らなかった顧客に対して、継続したマーケティングやインサイドセールスによる長期的なアプローチによって、新規案件へと成長させることが期待できます。
THE MODEL の採用が向いている企業
THE MODELの採用が向いている企業は、SaaS事業やサブスクリプション型のサービスを取り扱う企業です。なぜなら、こうしたサービスはパッケージ化されている商品であるためインサイドセールスが説明をしやすく、顧客が導入後のイメージをしやすいからです。
また、顧客との継続したコミュニケーションにより、アップセル(現在利用/検討をしているサービスや商品よりも高額な上位モデルを選択してもらうこと)や、クロスセル(現在利用/検討をしているものに追加して別のサービスや商品を購入してもらうこと)を狙い、売上や利益の向上を図ることができます。
逆に、THE MODELの採用が難しい企業は、カスタマイズ型のサービスや商品を取り扱う企業です。例えば、一からカスタマイズが必要で高額なソフトウェア開発などは、インサイドセールスの段階において商品の説明が難しく、顧客が予算の確保や導入後のイメージをしにくいため、THE MODELのサイクルに乗せることが難しいのです。
THE MODELのすべてを採用できなくとも、自社に取り入れが可能な部分をかいつまんで採用するという方法も可能です。THE MODELを参考にして、自社に合った独自のモデルからスモールスタートすることもアイデアの一つです。
THE MODEL 導入における注意点
従来型の営業プロセスを4つに分け、チームも分けることによるリスクとして、チーム同士の対立があげられます。
例えば、マーケティングやインサイドセールスで案件化した顧客と契約が結べなかった場合、営業部門に対しての不満が募るケースがあります。したがって、部門は分かれているものの、組織全体が一つのチームであることを十分に意識させた上で導入する必要があります。また、それを持続させることが最も重要です。
まとめ
THE MODELは従来型の営業モデルと違い、4つのプロセスに分けて営業サイクルを回すことで、効率的に顧客発掘から受注までのプロセスを踏むことができる画期的な営業モデルです。しかし、THE MODELの導入が向いていないサービスや商材もあるため、自社に合ったスタイルであるかを十分に考慮した上で導入する必要があります。この記事がTHE MODEL導入の一助になれば幸いです。
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