資産とは何か?主な区分や財務状況の判断方法や改善方法をわかりやすく解説!

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決算書の貸借対照表を見るとその会社の資産額がわかります。
しかし、一言で資産と言っても「総資産」と「純資産」とがあるため、複雑に感じ頭を悩ませる人もいるでしょう。

本記事では、総資産と純資産との違いについて、そして資産を利用した財務状況判断について解説します。

資産とは

資産とは会社が持つ財産です。
多くの人が財産と聞いた時に最初に思い浮かぶのは「現金」や「預金」ではないでしょうか。

会計上の資産はそれだけにとどまりません。土地や建物はもちろん、機械設備や車両なども含みます。また、形の伴わない特許権や商標権も資産です。さらに、売掛金や未収入金など近い将来会社に利益となる可能性が高いものも資産となります。

総資産について

貸借対照表の左側が資産の欄です。後述する純資産と区別するため、ここでは「総資産」と呼びます。総資産欄では会社の資産の運用状況を知ることが可能です。なお、貸借対照表の右側は負債と純資産となり、それぞれの合計は等しくなり、式で表すと次のとおりです。

総資産=負債+純資産

総資産は大きく分けて次の3つに分類されます。

流動資産

流動資産は通常営業活動により生じる資産、営業活動外で生じたものであれば1年以内に現金化できる資産です。流動資産はより細かく、3つに分類できます。

当座資産:現金・預金、受取手形、売掛金、有価証券といった流動性の高いもの
棚卸資産:製品、原材料、仕掛品、貯蔵品といった今後販売や消費されるもの
その他の流動資産:前払費用、短期貸付金など

固定資産

生産、販売、サービス提供などのために、長期間所有し使用するものが固定資産です。会計上1年以内を短期、1年を超えるものを長期といいます。例えば、先ほど前払費用は流動資産であると紹介しましたが、長期前払費用は固定資産となります。固定資産はより細かく、3つに分類できます。

有形固定資産:建物、構築物、機械、車両、工具、土地など形があるもの
無形固定資産:特許権、借地権、商標権、ソフトウェアなど形がないもの
投資その他の資産:長期前払費用、有価証券など

繰延資産

繰延資産は会計上資産として計上すべきもので、次の3つの要件を満たしたものが該当します。

・対価の支払いが完了している
・既に役務の提供を受けている
・効果が将来にわたり発現すると期待できる

具体的には、開業費や創立費などです。

純資産について

純資産は貸借対照表の右側に表示されます。先述したように、総資産額から負債額を引いたものが純資産です。資本金などが該当し、式で表すと次のとおりです。

総資産−負債=純資産

返済する必要がないため、「自己資本」や「正味財産」ともいいます。純資産が多いと安定した会社だと判断されます。主な内訳は次のとおりです。

株主資本:資本金・資本剰余金・利益剰余金・自己株式など
評価換算差額等:有価証券等評価差額金など
新株予約権:今後発行する株を受ける権利

資産からわかる財務状況判断

総資産をはじめとした貸借対照表、損益計算書の数値を利用して、財務状況の判断が可能です。ここからは、収益性分析としてよく用いられるROAとROEについて解説します。

収益性分析

収益性分析を行うと、「企業の稼ぐ力はどの程度なのか」という収益性の高さを知ることができます。

ROA(総資産利益率または総資本利益率)とは

ROAとは、資産に対しどれだけの利益を生み出したのかという総合的な収益性を示す指標です。ROAは、Return on Assetの頭文字です。投資家だけでなく、銀行や取引先などもこの指標に注目します。計算式は次のとおりです。

ROA=当期純利益÷総資産×100

ROAが高いほど、利益を効率よく出していることを意味します。

ROAの目安とは

一般的には、5%以上の企業が優良である目安とされています。
ただし、工場を始めとした大規模な設備投資が必要な業種は、そうでない業種と比較するとROAは低めになります。そのため、分析を行う場合同業種の数値と比較することが大切です。また、社会情勢によっても左右されることを念頭に置いておくとよいでしょう。

ROAの改善方法について

ROAは当期純利益と総資産額から算出します。
そのため、数値を改善するためには、利益を増やす、あるいは総資産額を減らすといったアプローチが有効です。利益を増やすためには、売上を増やす・仕入原価を下げる・不要な経費を削減する、といった対策があげられます。総資産額を減らすためには、資産を洗い出し不要な資産がないか確認するところからはじめるとよいでしょう。不要在庫、遊休土地、回収困難な売掛金などが該当します。
車両や建物を売却し、レンタルすることで資産を減らすことが可能です。また、借入金の返済をはじめとした負債額を減らすことも有効です。費用処理できる繰延資産がある場合は費用として処理します。

なお、ROAは負債が多いからといって必ずしも低くなるわけではありません。利益を上げれば負債があってもROAは高くなります。負債がゼロであっても利益が低ければROAはあがりません。そのため、単年度で見たROAが低いからと言って必ずしもその企業に問題があるとは言えません。新事業立ち上げのために資金を借り入れた場合や、新開発のために土地建物や設備投資をしたもののまだ利益回収につながっていない場合、ROAは低くなります。資産が増えた理由を詳細に把握し、状況を見極めることが大切です。

また、ROAが高い一方で、借入金などの負債を多く持っている企業も存在することを把握しておきましょう。負債の内容にも目を向けることが重要です。加えて、本業とは関係なく保有株式や外貨資産がある場合、それらの評価額の増減もROAに影響を与えます。

ROAは一つの指標となりますが、より正確に状況を把握したい場合は他の数値も見た上で総合的な判断が必要です。

ROE(自己資本利益率)とは

ROEは、株主資本がどれだけの利益を上げたのかを表す指標です。ROEはReturn on Equityの頭文字です。ROAと異なり、計算式の中に負債額を含まず、計算式はこのようになります。

ROE=当期純利益÷純資産×100

ROEは、株主や投資家が経営の業績を評価する時に用いることの多い指標です。ROEが高い会社の株式は、将来的に配当の増加を期待できるため投資家に買われやすい傾向となります。

ROEの目安とは

ROEの目安は10%以上とされています。
ただし、ROA同様、ROEも経済情勢や業種、業態によって左右されます。ROEを比較する場合は、同業他社と見比べるとよいでしょう。

ROEの改善方法について

ROEは株価に直結するので、改善を考える企業も多いでしょう。
当期純利益を増やす、あるいは自己資本を減らすとROEの値は高くなります。なお、先述したようにROEは負債額を含みません。そのため、借入金を増やし事業を拡大し利益を増やした場合も値が高くなります。そのため、この値だけを見て全てを判断してはいけません。負債額を増やすと、自己資本比率は下がります。ROEを見る場合は自己資本比率の動向にも注意しましょう。

まとめ

本記事では資産について解説しました。
負債を含むのが「総資産」、返済義務のない自己資本が「純資産」です。また、総資産や純資産を用いて収益性分析が行えるので、企業経営の改善にROAやROEを活用しましょう。

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