昨今非常によく聞く言葉になってきた「DX」。その重要性を認識する方も随分増えてきたのではないでしょうか。
一方で日本のDX推進の状況はというと、世界に遅れを取っている状況です。
長期にわたる経済成長の低迷にあえぐ日本は、この分野でこそ頑張らなければならないはずですが、なぜDXにおいても遅れを取ってしまうのでしょうか。
今回は世界のDXの動向や、日本との比較。そして日本の中小企業のDXの課題について考えていきます。
世界におけるDXの動向
IMD(国際経営開発研究所)という機関が「デジタル競争力ランキング」を発表しています。
最新の2021年版では、1位:アメリカ、2位:香港、3位:スウェーデン。シンガポールが5位に入るなど、ITに強いイメージの国が上位に並びます。
実際に世界ではどういった形でDXが進んでいるのか、具体的な事例を見ていきましょう。
Airbnb
今やユニコーンカンパニーとして有名になった同社ですが、たった10年と少し前に、3人の若者によって創業されたベンチャー企業です。
そービスは端的に言えば「宿の予約」ですが、DXの模範例と言えるほど完全にオンラインに最適化されています。
・宿の検索
・決済
・宿との連絡
・鍵の受け渡し、チェックイン/アウト
がオンラインで完結するだけでなく、「宿の提供」もオンラインで行うことが可能です。ホテルや旅館以外に、個人の住宅などに泊まるという新しい体験も創造しました。
その影響力は強大で、日本を含む世界中の国が法改正や新法制定の必要性に迫られたほどでした。
「泊まりたい人」と「泊めたい人」をオンラインでマッチングさせるプラットフォームによって実現したこのビジネスは、DXの恩恵をフルに受けた事例と言えます。
似たような仕組みで「出前」をDXさせたUber Eatsや、Uberの最初のサービスであるライドシェアも世界各国で普及が進んでいます。
また、24 Hour Fitnessというスポーツジムでは、アプリを通じて顧客の興味にあったパーソナルトレーニングを提案したり、自宅での運動の管理などをすることで今までにない価値を提供しています。
これらの事例に共通するのは、「完全にITを前提にデザインされている」という点です。
従来の仕組みや手法にこだわるのではなく、ITがもたらした自由度を最大限活かして全く新しい仕組みを創り出しているのです。
世界と比較した日本のDXの現状
冒頭に申し上げたとおり、日本のDXは世界に大きく遅れを取っています。
先のランキングでの日本の順位は28位。12位の韓国、15位の中国といった隣国にも大きく差をつけられており、非常に厳しい状態であると言わざるを得ません。
なぜ日本のDXは進まないのか
経済産業省もその重要性を認め推進をしているDXが日本で進まないのには、日本企業独特の理由があります。大きなポイントを2つ挙げると、
・年功序列型人事制度
・IT人材の不足
が挙げられます。
年功序列で人事が決まる日本企業においては、経営層も管理職も高齢の場合が多くなります。
一般的に高齢になるほどITリテラシーが低いので、これではDXが進まないのも無理はありません。
結果として古い仕事の仕方が変わらず残っていることも多く、未だにFAXを使っていることで海外から驚かれることもしばしばあります。
最近になってようやく「はんこ廃止」の動きも出てきましたが、まだまだ官民問わず紙の書類も多く、DX以前にデジタル化すら進んでこなかったのが日本の現状です。
また、IT人材自体の不足が叫ばれており、経済産業省の試算によると、2030年には最大79万人も不足すると言われています。
DXを推進する経営者も少なければ、DXを実際に進めていく人材も不足しているのでは世界に遅れを取るのもある意味で当然です。
中小企業におけるDXの課題
残念な日本のDXの現状ですが、少子高齢化による人材不足に悩まされる企業、とりわけ中小企業にとってDXは必須の取り組みと言えます。
実際、特に中小企業がDXを進める際には、まず「デジタル化」が必要です。
DXとは「デジタルをフル活用し、製品やサービスを変革すること」ですが、そういったサービスを生み出す土壌として、「デジタル化された業務フロー」や「デジタルを前提にしたマインド」が必要不可欠です。先述のAirbnbを利用する際には、紙の書類は全く登場しません。
ところが中小に限らず多くの日本の企業は、すでにこの部分で出遅れています。
最終的にDXされた事業のゴールを描くことはもちろん重要ですが、まずは足元の業務フローをデジタル化(デジタイゼーション)していくことが必要になります。
ここでは、DXの前段として必要になるデジタル化を進める際の課題を見ていきましょう。
経営層の意識改革
先述の通り、ITに疎い経営者が多いことが日本企業の課題です。
トップがその必要性を理解していないと、デジタル化もDXも実現は叶わないでしょう。まずは経営層が意識改革し、全社を引っ張っていくことが重要になります。
社内の反発
古い企業であればあるほど、DXやデジタル化といった変化に対して反発が生まれます。
比較的年齢が高い管理職層から反発が生まれる場合も多く、デジタル化を推進する際には配慮が必要になります。
丁寧な説明や、ツールの研修など、特にITリテラシーが低い層へのケアが必要になります。
IT人材の確保
日本全国規模で不足しているIT人材を中小企業が確保するのは簡単ではないでしょう。
特に今までITに関連していなかった業種の企業においては、社内に全くIT人材がいないという可能性も考えられます。
トップがデジタル化推進を決心し、予算を確保しても実際に進めていく人材がいないのでは何も始まりません。
IT人材がいない企業ではIT人材を採用するにも、そのスキルを見極めることも出来ないので、非常に難しい課題となります。
このような状況を打破する手段として、デジタル化のアウトソーシングが解決策となります。
中小企業でデジタル化を進めていくために
多くの課題があるなかデジタル化を進めていくためには、
・トップダウンで推進していく
・アウトソーシングを活用していく
という2点が非常に重要になります。この2点は追ってDXを進めていく際にも非常に重要になりますので、前段のデジタル化の時点で確実に実行しておきたいポイントです。
トップダウンで推進していく
サイズがコンパクトな中小企業の特性を活かし、トップダウンで推進していくのが好ましいでしょう。
担当者を決めて丸投げ、いうのも日本企業でよく見られるデジタル化の失敗事例です。
デジタル化、ひいてはDXの重要性をトップが誰よりも認識し、強力にすすめていくことで社内の反発に対する対応も初めて可能になります。
FAXをEメールに、Eメールをビジネスチャットツールに切り替えるだけでも、思いもよらぬ反発を受けたりするものです。
メンバーのモチベーションや社内全体の士気を高く維持するためにも、トップの明確な意思表示は必須になります。
アウトソーシングを活用していく
人間はそもそも変化を恐れ、拒絶するものです。理想的には社員全員がITリテラシーを高め、業務効率を高めてからDXに向かえれば良いかもしれませんが、現実はなかなかうまくは行きません。
そこで大事になってくるのが「選択と集中」です。自社のリソースはコア業務のデジタル化などに集中させるために、間接業務に関してはアウトソーシングの利用も有効な手段になります。
総務や経理と言った間接部門をアウトソーシングすることで、当該部門のデジタル化も同時に実現することが可能になります。
実際にデジタル化されたフローで仕事をすることで社内にフィードバック出来る相乗効果も期待でき、非常にコストパフォーマンスの高い選択と言えます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は世界のDXの動向、日本の現状、そして中小企業におけるDXの課題についてご紹介してきました。
日本の中小企業にとってはDXに着手する前に、社内業務のデジタル化が必須です。
すべての部門を自社のリソースだけでデジタル化するのは非常に大きなエネルギーが必要で、本来の目的であるDXの実現が遅れてしまいます。
コア業務のデジタル化や、DXをより早期に実現するため、間接業務のアウトソーシングも是非ご検討ください。
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