なぜキャッシュフロー経営が中小企業にとって大事なのか? ー資金繰り表の重要性ー

経理お役立ち情報

キャッシュフロー経営という言葉、聞いたことはありますでしょうか。

「売上をあげることが第一で、収益があがらないと銀行もお金を貸してくれないのでは?」とお考えの経営者の方もおられます。
確かに、売上高の減少は中小企業においては厳しいものがあります。ただ、決算書の売上高や利益に固執すると「黒字倒産」という憂き目にあうことも忘れてはなりません。

この記事では、キャッシュフロー経営の重要性と、そのツールである資金繰り表について解説します。

キャッシュフローの重要性

キャッシュフローよりも以下のような点を重視されている経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか? だとしたら、キャッシュフローを取り入れることで経営の改善につながる可能性があります。

収益第一

収益第一は企業経営の根幹なのだから当然じゃないか、と思われる方がいらっしゃると思います。もちろん、企業の目的は利潤の追求であり、売上なくして利益はあり得ません。
ただ、その「売上」の中身についてどうお考えでしょうか?

特に
・売上イコール現金と考えている
・売上増加を図りたいがために販売先の無理な条件を聞き入れている

という点に思い当たることはないですか。
それぞれの点について解説します。

売上イコール現金

現金商売であれば、この考えは成立します。しかし売掛債権が発生する以上、売上計上から現金回収までにタイムラグが発生します。その間に信用不安等何が起こるかわかりません。

売上増加を図りたいがために販売先の無理な条件を聞き入れている

他の販売先と比べ、売掛債権のサイトが延びているなら注意が必要です。
販売先との力関係により、やむを得ないケースもありますが、そうでないケースは注意が必要です。このような場合、販売先の資金繰りに懸念がある可能性があるので要チェックです。

仕入借入金返済等支出の見直し不足

売上を伸ばすことに注力することは当然重要ですが、支出の見直しも同様に重要なポイントです。

特に、
・買掛債務の見直し
・銀行の借入金返済

は重要な見直し事項です。

買掛債務の見直し

売上が順調に拡大した場合、売掛債権の現金化が買掛債務の支払に追いつかなくなるケースがあります。つまり、売掛債権の回転期間と買掛債務の回転期間との差が広がる場合です。このようなケースでは、売掛金を回収する前に買掛金の支払いが来てしまうので、お金が足りなくなってしまいます。
売上が順調に増えていくゆえに見落としがちなポイントです。

銀行の借入金返済

遅滞なく毎月元本、利息を約定日に返済することが難しくなるケースがあります。赤字で資金繰りが厳しい状態になれば、金融機関にリスケジュールの依頼をするなどの対策を講じることでしょう。
しかし、業況が好調であるにもかかわらずキャッシュフローが悪化している場合、見落とされるケースがあります。

黒字倒産

売上が順調で黒字決算にもかかわらず、倒産してしまうケースがあります。
それが「黒字倒産」です。
原因は上記の解説の通り、手元現金が不足し、支払や返済ができなくなる事態が発生することです。

では、黒字倒産を回避する方法はあるのでしょうか?
それが、「キャッシュフロー経営」です。

キャッシュフロー経営とは?

売上、利益を順調に推移させることを第一にお考えである経営者に方からすると、黒字倒産という言葉を聞かれると少しピンとこないかもしれません。
しかし、企業の倒産の多くのケースは黒字倒産なのです。
ここでは企業の血液ともいえる現金の流れを管理し、黒字倒産を回避する鍵であるキャッシュフローについて解説いたします。

キャッシュフロー経営とは

キャッシュフローとは 「企業の一定期間の活動の結果として出入りするキャッシュ」のことをいい、そのキャッシュを重視していく経営のことをキャッシュフロー経営といいます。

キャッシュフローは主に

・営業キャッシュフロー
・投資キャッシュフロー
・財務キャッシュフロー

の3つに分類されます。

営業キャッシュフロー

実際の営業活動でどれだけキャッシュを生み出しているかを示します。
このキャッシュフローが大きいほど銀行等の評価は高くなります。

投資キャッシュフロー

投資活動において生じるキャッシュの増減を示します。
具体的には、固定資産の購入や売却などによるキャッシュの増減が含まれます。

財務キャッシュフロー

営業活動、投資活動を行う際にどれだけの資金を調達、返済したのかを示します。

これら3つのキャッシュフローを注視して自由に使える資金、つまりフリーキャッシュフローをいかに確保できるかを検討します。
そして、将来のキャッシュフローがどうなるかを常に管理し、将来資金不足になることが予想されれば、このような状況を回避するために事前に対策を講じていくことがキャッシュフロー経営に繋がります。

フリーキャッシュフローとは

一般的に、企業価値として営業活動で生み出したキャッシュから、必要な設備投資を差し引いたキャッシュのことをフリーキャッシュフローといいます。
このフリーキャッシュフローが多い企業ほど経営状況が良好であると判断されます。

財務諸表としてのキャッシュフロー計算書と資金繰り表

キャッシュフローに関しての説明をいたしましたが、「それはキャッシュフロー計算書であって中小企業の我々には作成義務がないので関係ないのでは?」とお考えの経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに、大規模法人でなければ財務諸表としてキャッシュフロー計算を作成する義務はありません。また、キャッシュフロー計算書は確定した決算の結果から作成するものなので、決算が確定しないとキャッシュフローは把握できないのではないかと思われるかもしれません。

しかしキャッシュフロー経営で必要となるのは、キャッシュフロー計算書ではなく「資金繰り表」です。
資金繰り表の作成によって常にキャッシュフローを把握することができます。
次章では、この「資金繰り表」の作成と利用について解説します。

資金繰り表の作成によるキャッシュフローに目を向けた経営

資金繰り表とはどのようなものなのか。
一例として、日本政策金融公庫のHPに「資金繰り表」がございますのでご参考にしてください。
参考:日本政策金融公庫「経営計画策定に役立つ各種資料について
なお、参考資料のような資金繰り表につき、一度先行きの予定を作成すれば良いということではなく、直近の資金収支の実績を把握し、最新の状態にアップデートしていくことで、資金繰り表をキャッシュフロー経営に役立てていくことができます。

資金繰り表の作成

資金繰り表とは、「企業の資金の出と入を記した表」のことをいい、資金の動きをしっかり把握できる表を作成することにより、過去、現在、及び将来におけるキャッシュフローについて俯瞰できます。
また、資金の入りと出を、以下のような区分に分けて収支を計算することで、より資金の流れが把握しやすくなります。
・経常収支
・投資収支
・財務収支

経常収支

商品・サービスの提供等による収入と仕入代金、人件費、諸経費の支払による支出
を示し、
・売上代金等の債権の回収状況・回収予定
・売上代金回収高と売上高のバランスの確認
・買掛金等の債務の支払状況・支払予定
の把握に役立ちます。

投資収支

設備投資や固定資産の取得に費やした支出及び固定資産や有価証券等の売却による収入を示し、
・設備投資等の妥当性
・新規事業投資等の妥当性
の把握に役立ちます。

財務収支

企業がどのように資金調達し、どのように返済したのかを示し、
・金融機関からの資金調達の妥当性
・元本返済の妥当性
の把握に役立ちます。

資金繰り表の作成のメリット

前述したような資金繰り表を作成することで、以下のような項目の見える化が実現できます。
・売掛債権と買掛債務のサイトのズレ
・設備投資の必要性や可能性
・借入金返済予定の見直しの必要性

売掛債権、買掛債務のサイトのずれ

売上代金の回収期間と、仕入代金の支払期間とのタイムラグについて認識することができます。

設備投資の必要性や可能性

設備投資が妥当なのか、無理な設備投資によって資金難に陥らないか、といった判断が可能となります。

借入金返済予定の見直しの必要性

キャッシュフローの把握により、リスケジュールの検討が必要であるかどうかについて再考することができます。

まとめーお金があれば生き残れるー

キャッシュフローの重要性、及び管理方法、資金計画に基づいた営業計画について説明いたしました。
企業が生き残るためには、現金の把握が最も重要であることをご理解いただけたと思います。
資金繰り表を作成することによるキャッシュフロー経営により、「勘定あって銭足らず」といった最悪の状況を避けることができます。
資金繰り表は一度計画を作成すれば終わりというものではなく、常に月次決算の結果をもとに最新のものにアップデートしていくことが重要です。このような作業について自社で進めることが困難であれば、アウトソーシングを活用することも視野にいれてはどうでしょうか?
弊社は資金繰り表の作成までも含めた経理アウトソーシングや財務コンサルティングなどをワンストップで提供いたします。興味がございましたら、是非弊社にお問い合わせ下さい。