「黒字倒産」という矛盾した言葉 聞いたことありませんか?
「黒字」で「倒産」することってあるの?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし実際に黒字計上しているにもかかわらず破綻する企業があります。
では、黒字倒産って何なのか、どうしたら黒字倒産になってしまうのか、またそれを防ぐには何に注意したらいいのか解説して参ります。
黒字倒産とは?
黒字倒産とは、一般に会計上利益を計上しているにもかかわらず、手持ち現金が不足し支払いや返済に充てられず経営が継続できない状態を指します。
売上が増加したらそれでいいのでは?とお考えの経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、売上や利益が前年度比プラスとなれば銀行の評価もあがるかもしれません。
しかし、それも企業が存続してこそ意味があるのです。
手持ち現金が不足すると、仕入れの支払もできませんし、従業員の給料も支払えなくなってしまいます。
それでは、わが国の企業の黒字倒産の状況はどのようになっているのでしょうか? 実際のデータ見てまいりましょう。
黒字倒産の現状
2021年に公表された東京商工リサーチ「2020年「倒産企業の財務データ分析」調査」によリますと、2020年に倒産した企業のうち、46.8%が黒字倒産をしています。
直近3期において黒字倒産の割合は、前々期56.6%→前期47.2%→最新期46.8%と、倒産全体の約半数を占めています。このことからも、企業は利益を計上していれば安泰だというわけではないこが明白です。
逆に、赤字企業であっても、23.3%の赤字企業が倒産せずに存続しているというデータもあります。
こちらも少ないながらも、前々期21.6%→前期21.8%→最新期23.3%と一定数あります。
(出典:東京商工リサーチ)
では、どうして半数近くの企業が黒字倒産に陥ってしまうのでしょうか.
黒字倒産の要因はこの5つ
黒字倒産は手持ち現金の不足に起因することがわかりました。
では、手持ち現金の不足の原因は何でしょうか?
結論は「管理不足」です。
ここでは黒字倒産の要因となる5つの要因を紹介します。
1つでも思い当たることがありましたら、早めに改善されることをおすすめします。
そのことが、黒字倒産から会社を守ることができます。
そもそも 資金繰り管理ができていない
売上、利益至上主義で、キャッシュを重視しない企業が黒字倒産に陥る傾向があります。キャッシュの出入に注目し、資金繰り表を作成して管理することが、黒字倒産を防ぐ第一歩となります。
売上の急増
売上が増えることは大変喜ばしいことです。
売上が100%回収できれば問題ないのですが、回収までに費用の支払期日がやってくると大変です。
特に取引先(顧客)との力関係で手形を受け取る場合、サイトが長ければ、現金化するのにさらに日数を要することとなります。
手持ち現金があれば、支払いを滞りなく行えますが、そうでなければ支払ができず、信用の低下を招く最悪の事態を引き起こしてしまうかもしれません。
売掛債権、買掛債務の管理不足
売上増加に比例して売掛債権、買掛債務が増加します。その際、どれくらいの日数で回収されるかを考えなければなりません。特に、手形を受け取る際には、売掛金との割合、手形サイトにも十分気をつけなければなりません。
それに加えて、さらに、買掛債務の回転期間との兼ね合いを注意しなければなりません。
過剰在庫
長期間在庫を抱えていると、劣化、摩耗、流行遅れ等により商品として販売できない、あるいは想定している価格で販売できないケースが発生します。必要以上に仕入れをしないことは支出を減らすこととなり、キャッシュフロー面においてもプラスに作用します。
したがって、できる限り商品(在庫)を保有しない工夫が必要とされます。
黒字決算であることを過信し、資金調達をおろそかにしている
よく、「銀行は晴れた日に傘を貸し、雨が降ると傘を貸さない」と言われます。
必要になれば銀行に頼めばいい、とお考えではないですか?
銀行は、決算内容が良好な企業との取引を検討し、また、赤字決算や現金不足等が著しく顕在化されている企業については融資審査について厳しくなります。
加えて、銀行は毎年融資先の査定を行い、その結果を監督官庁である金融庁に報告する義務があり、少しでも優良な企業に融資業務を行う必要があります。
そういった観点からも手持ち現金を手厚くするには 業況の良い時期に融資を受けることが必要であります。
黒字倒産を防ぐために実践するのはこの3点!
黒字企業が倒産に陥るケースを説明いたしましたが、ではその事態を回避できる方法はあるのでしょうか?
次の3つのことを実践することで黒字倒産を回避できる確率が格段に上がります。
貸借対照表、損益計算書から現金化のタイムラグを算出、時系列にチェック!
運転資金は、一般的に、
売掛債権+棚卸資産(在庫)−買掛債務
で算出されます。
しかし、これだけでは金額は把握できてももう一つ大事な点が抜け落ちています。
それは「期間(時間)」です。
つまり、決算書からでは見えない「期間」を可視化し認識する必要があります。
そこで、現金化に必要な期間を出します。いわゆる「回転期間」です。
ところが、この「回転期間」の認識が希薄な経営者の方がかなり多く見受けられます。
算出方法は、売掛債権、棚卸資産(在庫)、買掛債務を月当たりの売上高(または仕入高)で割ります。
つまり、
・ 売掛債権回転期間=売掛債権(受取手形+売掛金)÷月商(売上高÷12)
・ 棚卸回転期間=在庫÷(仕入高÷12)
・ 買掛債務回転期間=買掛債務(支払手形+買掛金)÷(仕入高÷12)
です。
次に、運転資金算出式同様に現金化に必要な期間を出します。
売掛債権回転期間+棚卸回転期間-買掛債務回転期間
・売掛債権回転期間+棚卸回転期間は、仕入れた商品が販売されて現金化するまでの期間を意味します。
・買掛債務回転期間は、仕入れてから現金支払いするまでの期間を意味します。
次に、ここで算出された期間(月数)を前期、あるいは前々期と時系列に比較します。この期間が大きくなっていると、現金化するまでに時間がかかることを意味しますので注意が必要です。
改善しないと黒字倒産の可能性があります。
このような状況に陥らないようにするためには
・売掛債権回転期間を短くする
・棚卸回転期間を短くする
・買掛債務回転期間を長くする
ことが考えられます。
資金繰り表の作成
毎月の経常収支、経常外収支、財務収支をチェックし、毎月の現金の過不足を視覚的にとらえることが必要です。
それにより、何を見直すべきかを認識できます。
日本政策金融公庫のHPに「資金繰り表」がございますのでご参考にしてください。
参考:日本政策金融公庫「経営計画策定に役立つ各種資料について」
金融機関からの借入検討、および返済金の見直し
「借入すべきか」「返済金の見直しを銀行に頼もうか」ということが前述の資金繰り表を作成していると見えてくるケースがあります。
今後、資金繰りに不安があれば、借入を見直すことも必要です。
銀行等金融機関についても、金融庁から返済猶予(リスケジュール)について柔軟に対応するように通達されていますので、相談されることをおすすめします。
まとめ
黒字倒産とは何か、黒字倒産の要因はどのようなものなのか、そして防止するためにはどうしたらいいのかについて解説いたしました。
黒字倒産を防ぐためには、日ごろからお金の流れであるキャッシュフローを重視したキャッシュフロー経営を心掛けることが重要です。
弊社では、タイムリーな資金繰り表の作成など、中小企業の皆様のキャッシュフロー経営のお手伝いをさせていただきます。
ぜひ、弊社までお問合せ下さい。