成果を出すための戦略立案<経営講座第3回>

経営お役立ち情報

第3回は「成果を出すための戦略立案」の考え方をお届けします。
前回の記事では、経営の仕事の説明と、その仕事の根底にある「ミッション、ビジョン、理念」の重要性という概念的なお話をしました。今回は、より具体的な、「企業の戦略の立て方」について、お伝えしていきます。

Contents
1.戦略とは
2.外部環境分析とは
Ⅰ.お客様
Ⅱ.ライバル
Ⅲ.代替品
Ⅳ.マクロ経済
3.内部環境分析とは
4.戦略の最重点課題は「他社との違い」
5.具体的な戦略立案の実践

1.戦略とは

経営者にとって最も重要な仕事は、企業の方向づけを行うことです。企業の方向づけとは、「企業が何をやるか、やらないか」を決めることですが、それは、企業の戦略を立てることと言い換えることができます。戦略を立てる際に必要なことは、「ミッション、ビジョン、理念」を基に、企業の「外部環境」と「内部環境」を分析することです。

2.外部環境分析とは

「外部環境」とは、企業自身がコントロールできないこと全てを指します。景気動向をはじめ、人口動態の変化や、環境問題、法律に関する問題も外部環境に当てはまります。また、お客様やライバル企業、仕入先の動向なども外部環境です。そうした動きは、企業自身がコントロールできるものではないからです。
ここからは、具体的に外部環境とは何かを見ていきましょう。

Ⅰ.お客様

自社の強み、さらに弱みを分析していく中で、まずは「お客様の動向」を知る必要があります。具体的には、自社が強みを活かせるターゲット(顧客層)の全体を掴み、その顧客層のニーズがどのように動いているかを知ることです。また、顧客層全体の分析とは別に、ある特定のお客様に大きく依存している会社の場合には、そのお客様の短期的、中長期的な戦略や動向を把握しておく必要があります。そのためには、お客様を訪問し、情報交換など行うなど、お客様と常にコンタクトを取り、お客様の動向をよく知ることが必要です。

Ⅱ.ライバル

次に分析すべきなのは、「ライバル」です。ライバルの状況によってお客様の求めるQPS(Q=クオリティ、P=プライス、S=サービス)の動向も変化するため、自社のライバルに関してもよく分析しておく必要があります。また、ライバルが提供しているQPSの組み合わせだけではなく、ライバル企業の財務状況、人、設備の状況、経営者の動向などに関しても、きちんと把握しておくことが重要です。経営者によっては、自社の経営戦略立案に際し、ライバル企業数社の有価証券報告書や東京商工リサーチのデータなどを緻密に分析している人もいます。

Ⅲ.代替品

分析すべき外部環境の3つ目は「代替品」についてです。例えば、CDの登場によって、レコードがなくなったように、これまでの商品に替わる新しい商品が登場したために、市場がなくなるという可能性もあります。代替品が出現することによって、市場は変わってしまいます。淘汰される業界にとって、「代替品の登場」は、死活問題です。
どんな業界であっても、今まで考えられなかったような代替品が出てくる可能性があります。それまでの当たり前の状況が、急に変わってしまうのです。同業のライバル企業とばかり競っていたら、ある日突然、ライバル企業もろとも業界自体が消滅するなんてことも起こり得ます。

Ⅳ.マクロ経済

アベノミスクで株高となった時には、一時的に高級品が売れたように、マクロ経済の動向にも注意しておくことが、経営者にとって求められます。
バブル時代のようにお金が有り余っている状況では、お客様はより高級なものを求めますが、不況時代では、自社が良い商品を売っているからといって、お客様の手元にお金がなければ購入してもらえません。そのような事態を防ぐためにも、マクロ経済の動向だけでなく、AIやロボットの発達や少子高齢化といった、さらに中長期的な社会の大きな流れについても経営者が読み取っておかなければ、企業は勝ち残れないのです。

3.内部環境分析とは

「内部環境」とは、自社でコントロールできることです。ヒト、モノ、カネ、さらには、経営陣の時間や情報などもこれに当てはまります。ここで重要なポイントは、他社と比べて「具体的に」どこが勝っていて、どこが劣っているかを、正確に分析することです。お客様が購入する商品やサービスが他社と差別化されていることも大変重要ですが、商品やサービスを作り出すには、人材や製造装置、さらには資金などが必要です。それらを分析するのが、内部環境分析です。これは「強み」「弱み」分析とも言えます。

具体的には、「コスト」「人材」「教育制度」「設備」「情報システム」「財務内容」「ノウハウ」「その他」に分けて、それぞれの「強み」と「弱み」を重要度ともに分析を行います。そして、それら内部環境がライバル企業と比べて、どれだけ勝っているか、劣っているかを「具体的」に分析し、強化すべき点を知った上で、その強化を図っていきます。
自社のこととなると、なかなか具体的、客観的に見えないものであり、目標設定においてはメジャラブル(測定可能)ということが大原則です。具体的に現状を知り、具体的な目標を掲げることが重要なのです。

4.戦略の最重点課題は「他社との違い」

今の時代において、戦略立案を行う際に1番大切なことは「他社との違い」を明確にすることです。言い換えると、「差別化」を図るということです。QPS(Q=クオリティ、P=プライス、S=サービス)の組み合わせで、他社との差別化を図らなければいけません。
ポイントとなるのは、「今の時代において」という点です。どんな時代も差別化すればよいというものではありません。1980年代後半の日本におけるバブル時代など、需要が供給を上回っていた時代は、実は他社との違いを明確にしなくても、トップランナーがやっているQPSの組み合わせをそのまま真似ても売れました。しかし、現代は供給過剰の状態です。供給過剰では、QPSの組み合わせで他社との違いを明確にしなければ、競争に勝ち残れません。トップランナーであったとしても、いつまでトップでいられるかわからないのが、供給過剰、物余りの時代の特徴なのです。
差別化と言っても、どこで差別化をするかを間違えると、返って失敗してしまいます。
大切なのは「自社の強みを活かす」ことです。もちろん、お客様のQPSに合致していなければ、いくら差別化しても勝てませんから、それを見極めることが前提です。その上で、自社の強みを生かした差別化を図ることが重要です。
たとえば、大企業と中小企業では、それぞれに別の強みを持っています。

大企業中小企業比較

この他にも、製造能力や接遇、あるいは顧客基盤など、自社が持っている強みを活かして、自社の優位性をQPSのどこで出していくのかを考えることで、差別化を行います。その際強みとは、相対的なものであるという認識が必要です。ライバル会社の動向や提供するQPSを定期的に客観的に分析した上で、「自社の強み=お客様から見た他社との違い」が何なのかを知っておく必要があります。また、差別化には、自社に強みがあることが大前提で、その強みを商品やサービスに落とし込みます。そのためには、内部環境分析をしっかり行い、自社の強みがどこなのか、将来に渡ってその強みを維持できるのか見極めが必要です。加えて、今後世の中がどう変わっていくのか、その中でも自社の強みが維持できるのかも常に検討しておくべきでしょう。
前回の記事でも引用した「ビジョナリー・カンパニー」では、飛躍的に事業を伸ばした企業では、「世界一になれる分野」「働く人がワクワクすること」「経済的原動力」の3つが重なる分野を選んでいるそうです。世界一になれるということは、それだけ強みを活かして、特色ある商品、サービスを提供しているわけです。

5.具体的な戦略立案の実践

多くの会社では、すでに経営計画を立てていることかと思います。計画を精密にたてることは非常に重要ですが、環境が想定以上に変化することもまれではありません。
そこでおすすめするのが、毎年3カ年計画を立て、その1年目を実行するというやり方です。1年計画を毎年たてるのではなく、少し先の状況を想定して、そこから1年計画をたてることが望ましいです。ミッションやビジョンは毎年変わるものではありませんが、外部、内部環境を毎年分析することにより、より精度の高い経営計画をたてることができます。
もう1つ、戦略を立案し、実行する際に重要なことがあります。それは、PDCAサイクル(Plan計画、Do実行、Check評価、Action改善)を早くすることです。経営計画を立て、それを具体的な行動計画に落とし込み(Plan)、実行し(Do)、計画通りに実行し達成できたのか評価し(Check)、課題を分析・検証し、改善していく(Action)ことがとても大切です。1番良くないのは、計画の立てっぱなしです。現状とあるべき姿のギャップを把握し、達成する手段を都度検討することが非常に重要です。
ある会社では、目標達成を確実にするために、経営陣によるチェックを毎週にしたり、全体での目標チェックだけでなく各部署でも短サイクルのチェックを行ったりすることで、目標達成の度合いが格段に上がりました。チェックし、修正する習慣は非常に重要なのです。

いかがだったでしょうか?
戦略立案について少しはご理解いただけたかと思います。
次回の記事では、「マーケティング」について説明していきます。お楽しみに。

経営講座第4回はこちらです。

参考文献:小宮一慶「経営者の教科書」,ダイヤモンド社(2017年)

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