前回は戦略立案の方法を取り上げましたが、その中で、外部分析の必要性についても触れています。今回は、経営に影響を与えそうな世の中の動きをご紹介します。
日本を取り巻く3つの変化
企業を経営していくうえでは、世の中の動きに常に気を配る必要があります。特に日本の企業に影響を与えそうな動きを3つ紹介します。
第四次産業革命
最近はAI(人工知能)という言葉を聞く機会が増えました。AIやコンピュータ、ロボットなどの技術は今後さらに発展していくのは間違いありません。この流れは第四次産業革命と呼んでも良いほど、世の中に大きな影響を与えそうです。
海外の映画でAIを搭載したロボットが人間を滅ぼそうとする作品がありました。そこまで極端なことが起こりうるかはさておき、人間をより幸せに、より豊かにするために使えるかどうかは、人間次第です。
経営者には、後述する少子高齢化社会への対応策のひとつとしても、AIをうまく活用できるかどうかを考えていくことが求められます。
所得の二極化
AIの進化が進めば、人間の仕事を奪う可能性があります。AIに関係する仕事が増えたり、今までになかったような仕事が新たに生まれたりする可能性は高いですが、既存の仕事はかなりの種類が減っていくのではないでしょうか。すでにアメリカでは弁護士や会計士の仕事が減ってきています。AIはとくにデータ解析が得意なので、裁判の証拠を調べたり、監査のための帳簿データを調べたりすることに使われているそうです。
工場の機械オペレーションや、自動車の運転などはすでに実用化されていることを考えると、単純作業などの仕事はAIを組み込んだロボットが行うようになり、多くの雇用が奪われそうです。AIの発達を「第四次産業革命」と表現しましたが、19世紀の産業革命(蒸気機関の発達)が人間社会に与えた影響は「極端な二極化」でした。生産性の向上による恩恵は資本家が搾取してしまい、労働者との差が広がってしまいました。
19世紀に起きた二極化は、労働者階級の地位向上により縮小しています。しかし、AIやロボットはほぼ無制限に供給できるため、今回の産業革命においては二極化が収束するどことか、拡大する一方かもしれません。
少子高齢化社会
日本の企業が外部環境を分析するうえで、避けて通れないのが少子高齢化です。現在、日本人の約4人に1人が高齢者(65歳以上)となっています。年金や医療など、社会保障を成り立たせるために本来の特別会計では支えることはできず、一般会計から毎年補填されています。
2016年には出生数がついに100万人を下回りました。社会が高齢化していき、子供が減っていくという流れは止められないどころか加速していきます。
企業の将来戦略を立てる際には、少子高齢化社会を2つの切り口から考える必要があります。まずはお客様(市場)が高齢化していき、将来的には減少していくということであり、もう一つは従業員が高齢化していき、やがては雇用できなくなってしまうことです。
市場の変化を見据えて、自社の将来的な商品・サービスの内容を考える必要があり、それを生産・提供する従業員が高齢化したり、雇用しづらい社会になったりすることを想定して、人に依存しない業務フローを考える必要があります。
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一見すると自社に影響のない出来事に思えても、日本を取り巻く状況や、世の中の流れなどといったマクロの動きは、長期的な視点で見れば必ず影響してきます。経営者は常にアンテナを高くしてくことが求められます。毎朝の新聞もそのような視点で読んでいただければ、違ったものが見えたり、経営に役立ったりするのではないでしょうか。