先日の日本経済新聞でも人手不足が深刻化していることが報道されていました。会社が社員を選ぶ時代から社員が会社を選ぶ時代になっているという人もいますが、社員を幸せにしない会社には未来はないのは自明なことです。そのためにも、時短は必須です。
前回に引き続き、厚生労働省が出している「時間外労働削減の好事例集」から時短のヒントをお届けします。前回は、時短を実現するためのポイント(考え方)として、以下の三つをあげました。
I. 意識を変える
II. 人(能力)を変える
III. 仕事を変える
今回は、具体的な実施方法についてのヒントをご紹介します。ただ、時短は、これまで行ってきた当たり前を否定するところからスタートする業務改善プロジェクトです。現場任せでは実現は難しいとお考えください。社長がプロジェクトリーダー兼プロジェクトオーナーとして先頭に立って実施していただきたいと思います。
時短も一般の業務改善プロジェクトと同じプロセスで実行可能です。そのプロセスとは…
1.正確に現状を把握
2.問題点の把握(改善すべきポイントの選択)
3.原因の特定
4.改善策の立案・実行
5.効果の測定と修正改善策の立案
【1.正確に現状把握】
各人が担当している仕事を複数の工程に分解して、それぞれの工程にかかっている時間を把握します。工程の分け方は、途中で中断できないひと塊の業務と捉えるといいでしょう。それぞれの業務にかかっている時間を把握してください。社員の皆さんに工程ごとにかかっている時間を報告してもらう必要があります。この報告をどうするかについても工夫が必要です。
【2.問題点の把握(改善すべきポイントの選択)】
現状が正確に把握できると、どこを改善すると時短の効果が期待できるかはっきりします。選定すべきは、効果の規模と改善の困難さから選定することをお勧めします。最小の努力で最大の効果が期待できる所から手をつけましょう。
【3.原因の特定】
どうして、それだけ時間がかかっているかの原因を見つけます。ここで、前号の3つのポイントを思い出してください。意識か、人(能力)か、業務そのものか。ここで、従来の常識を捨てないと抜本的な改善はできません。「できない理由」を知りたいのではなく「何ができたら改善できるか」を見つけて下さい。それが原因です。
【4.改善策の立案・実行】
原因を解決する方法を考えます。意識が原因の場合は、社長が意識を変えるように社員に働きかけます。他の社員よりも早くは帰りにくい雰囲気があることが早い退社を妨げていることもよくあります。そのためにも、ノー残業デーを設けるなど、意識を変える仕掛けも重要です。
特定の人に残業が集中している場合は、分散できるように業務の割り振りを検討します。知識や経験の差によって割り振りができないと上司も部下も思い込んでいるケースが多いようです。(ある人ができることが他の人ができないというのは多くの場合思い込みです。)業務の整理と適切な教育・オリエンテーションがあれば、社員の多能工化が可能です。
業務そのものが煩雑な場合には、簡素化が決め手になります。コンピュータ化・自動化が今後の経営を左右する一つのファクターとなります。まだ、人工知能の業務への導入は中小企業ではこれからですが、他社に先駆けで実施できたら、大きな競争力となります。また、お客様まで含めて簡素化を検討することでより効果が期待できる場合もあります、
【5.効果の測定と修正改善策の立案】
業務改善は、一回実行しただけでは効果は限定的です。繰り返し改善すべきところを見つけて効果が最大になるように継続的にとりかかる必要があります。常に業務の効率化を考えて、社長が先頭に立ち、社員一人一人も常にそれを意識しながら業務にあたることができたら大きな競争力の獲得が可能となるでしょう。
*************************************************
「人手不足」が言われる今日です。この状況を逆手にとって競争力を高めることを狙っていただきたいと思います。会社にも社員にも優しい効率的で働きやすい会社を作り出す手段として「時短」を捉えて経営課題の一つとして取り組んでいただきたいと思います。