中小企業は大企業に比べて、人員数や資金などの経営資源に限りがあります。では、中小企業は大企業に勝つことはできないのでしょうか?答えは「No」です。「強い弱者になる戦略」であるランチェスター戦略の概要をご説明します。
第一次世界大戦で生まれた戦略
ランチェスター戦略は、イギリス人のフレデリック・ランチェスターが、第一次世界大戦中に空中戦の観察から導き出した法則を基にした戦略です。基本的な考え方として「武器の性能が同じならば、兵力数の多い方が必ず勝つ」という前提があるので、弱者は強者との真っ向勝負を避けて、工夫をする必要があります。
弱者の戦略:資源を集中投資!
経営資源に劣る中小企業が、経営資源が豊富な大企業に挑むうえでの基本戦略を5つご紹介します。
局地戦 | 特定のエリア内で戦います。手広く展開している強者は、特定のエリアでは手薄になるからです。 |
一騎打ち | 競合他社と1対1状態の市場、商品、エリアなどに特化します。特化することで、ノウハウも蓄積されます。 |
接近戦 | 末端顧客と密接な関係を築きます。顧客を囲い込む戦略と言えます。 |
一点集中 | 競争の激しくない市場で、圧倒的なシェアを獲得します。成功すれば大きな利益を生むことが可能です。 |
陽動作戦 | いわゆる「かくらん戦法」です。相手の注意をそらすためにわざと本らの目的とは別の行動に出ます。非常に高度な戦略です。 |
弱者の戦略は、限られた資源をいかに有効に活用できるかにかかっています。つまり、競争の少ないニッチなスキマ市場や地区、顧客セグメントを絞り込んで、集中的に攻めることが戦略の基本です。
どんなに小さい市場でも構わないので、“No.1”になることが重要です。首位を独走することで、安定した利益を生み出すことができます。一般的に首位を独走するためには、40%以上のシェアが必要であるといわれていますので、その数字を目指して、経営資源を集中投資するのが『弱者の戦略』です。
徹底した差別化による「圧倒的に強い弱者」
「圧倒的に強い弱者」となった中小企業の例をご紹介します。
コンビニや書店などの店舗で、天井にかかっている鏡があると思います。この業務用ミラーの国内市場は数億円程度と、決して大きなものではありません。しかし、その市場は埼玉県にあるコミー株式会社が80%ほどのシェアを獲得しています。
コミーはこの分野において、独自の技術を持っており、さらに全社員が手分けをしてユーザーのところを回り、使用状況を徹底して調査することで、商品改良や新商品開発に活かします。他の分野にむやみに進出しようとせずに、「業務用ミラー」に特化して人員や開発費などを投入することで、圧倒的な勝者であり続けています。圧倒的な勝者がいて、市場全体の規模が小さいことから、他社はあえてこの市場に参入しようとはしません。今後もこの状況が続く可能性は非常に高いと言えます。
************************************************
冒頭でも述べたように、中小企業の経営資源には限りがあります。それにもかかわらず、「あれも、これも」と様々な市場や分野に進出していては、かえって強みを活かす機会に恵まれないことになりかねません。自社が最も輝ける分野で“No.1”を目指してみてはいかがでしょうか。