法人の契約書で必要な種類は?作成方法やポイントについても解説

経営お役立ち情報

「契約書を作成しなければいけないが、我流で大丈夫だろうか?」
「作成のコツが知りたい」
このように思う経営者の方も、多いのではないでしょうか?

顧客との売買契約や新規顧客との取引などで契約書を作成しなければいけない時に、契約書についての基礎知識があればスムーズに作成できます。もしご自分で作成しないにしても、契約書についての理解が有れば、確認や修正の指示が的確に出せます。

今回は契約書について不安のある方へ向け、法人で必要な契約書の種類や作成方法、作成時のポイントについて解説します。是非、最後までご覧ください。

契約書とは

「契約書」とは、仕事上で取引条件などお互いの合意内容を書面に記載したものです。以下の項目などを具体的に記載します。

・商品名
・商品仕様
・納品方法
・価格
・支払い方法

相手と交わすもので「覚書」、「念書」がありますが、契約書との違いは何でしょうか?覚書は、契約書を作成する前に双方の合意事項を書面にしたり、契約締結後に追加で合意した事項や契約書の修正事項について記載したもので、契約書同様に双方の署名を行います。念書は、どちらか一方から出されるものです。念書自体に法的拘束力はありませんが、裁判などでは証拠となり得ます。

契約書を交わす理由

ビジネスでは、双方が合意した内容を書面に残しておかないと、後程「言った、言わない」の水掛け論になりかねません。トラブルから裁判になった時には、契約書が重要な証拠となります。契約書を交わすメリットは、以下の通りです。

・契約内容を明確にできる
・トラブルの際の証拠になる
・契約履行の手引きとなる

反対に、契約書を交わしていなければ、相手と紛争のリスクが高まり、企業にとってはデメリットでしかありません。このことからも、ビジネスでは契約書の作成は必須なのです。

法人で必要な契約書の種類

法人で必要な契約書には、どのような種類があるのでしょうか?ここでは、主な以下6つの契約書について見ていきます。

・売買契約書
・賃貸契約書
・業務委託契約書
・取引基本契約書
・リース契約書
・秘密保持契約書

売買契約書

売買契約書とは、売主と買主が契約する際に、双方で合意した内容を書面にまとめたものです。売買契約書を作成することで、トラブルを未然に防ぐ、またトラブル発生時のリスクを最小限に留められます。

例えば、納品した後に代金が支払われない、また代金を前払いしたが、商品の引き渡しが行われない可能性もあります。このようなトラブル発生時に、事前に売買契約書を締結しておけば、契約内容を証拠として提示できます。

賃貸契約書

会社名義で、賃貸契約を結ぶ際の契約書です。主なケースは以下になります。

・会社が事務所や事業所を賃貸する場合
・会社が福利厚生として家賃補助を出している場合
・事業オーナーが、自宅兼事務所として借りる場合

法人契約の場合、連帯保証人や保証会社への加入の必要は、物件により異なます。借主となる会社の設立年数や、企業規模などで貸主側が判断しますが、個人契約に比べると、審査は通りやすい傾向です。

業務委託契約書

業務委託契約書は、受注者に対して発注者が業務を委託し、受注者は委託された業務を遂行して対価を得る際に締結する契約書です。業務委託契約は、主に以下の契約があります。

・請負契約・・・発注者が、受注者の仕事の結果(成果)に対して報酬を支払うことを約束する契約
・委任契約/準委任契約・・・発注者が受注者に対して、「業務を請け負うこと」に対して報酬を支払うことを約束する契約

契約後に「言った、言わない」によるトラブルを防ぐためにも、企業は業務委託契約書を作成し、契約内容を明確にする必要があります。

取引基本契約書

取引基本契約書は、同じ取引相手から継続して商品を購入したり、業務を依頼したりといった「継続的取引」をする場合、取引に関する基本的な条件をまとめたものです。あらかじめ共通する内容を「取引基本契約書」として締結することで、実際に売買する場面での契約が簡素化されます。取引基本契約書の締結は、以下のメリットがあります。

・繰り返し発生する契約作業を簡素化させ、取引コストを削減させる
・「支払い条件」、「支払い期限」、「秘密保持」などを含められるので、広く複合的に契約できる

リース契約書

リース契約とは、直接購入するのではなく、代わりに購入したリース会社に毎月一定額を支払うことで、必要なものを借りる仕組みです。法人がリース契約するのは、主に以下のようなものになります。

・コピー機や複合機
・パソコンやサーバー
・自動車
・工場で使用する大型機器

レンタルと違いリースは、借主が長期間にわたっての使用を前提としており、中途解約の場合は残リース料相当の違約金が発生するケースが一般的です。リースの場合は売手ではなく信販会社などへ支払うケースが一般的なので、三社間契約となる場合が多いです。このため、三社間でのトラブルを防止するためにもリース契約書が必要となります。

秘密保持契約書

秘密保持契約書とは、秘密の取り扱いについて定めた契約を書面にしたものです。相手が開示して知り得た秘密情報を、目的外使用や、第三者への開示を禁止するためのもので、NDA(Non-disclosure agreement)やCA(Confidentiality Agreement)とも呼ばれます。秘密保持契約を締結する目的は、相手に守秘義務(秘密保持義務)を発生させ、秘密情報の漏洩リスクを軽減するためです。秘密保持契約書は、以下のポイントを踏まえて作成されます。

・秘密情報の範囲を決める
・目的外利用を禁止する
・複製の取り扱いを定める
・契約の有効期間を決める
・漏洩時の対処方法や補償を決める

このように、秘密保持契約書は企業が開示する情報を守るため、重要になるのです。

契約書の作り方7つのステップ

契約書作成は、以下7つのステップでスムーズに作成できます。

・契約内容の確認
・契約書のドラフト作成
・契約書の確認及び修正
・契約書の製本
・契約書の署名及び押印
・収入印紙の貼付
・契約書の郵送及び保管

それぞれ掘り下げて、見ていきましょう。

契約内容の確認

契約する双方の合意点を確認します。「期間」、「金額」、「お互いの義務」などの具体的項目を明確にします。

契約書のドラフト作成

双方の合意確認事項を元に、契約書を作成します。法令で義務付けられている場合を除き、双方のどちらが作成しても構いません。契約を自社にとって有利にしたい場合は、自社での作成をおすすめします。なぜなら、作成する側が、その後の交渉で主導権を握れるケースが多いからです。このタイミングでは、署名や押印はまだしないように注意してください。

契約書の確認及び修正

ドラフトを社内で確認、承認を得たのちに、相手にも確認してもらいます。相手が作成した場合は、こちらで問題がないか確認しますが、この時に妥協できない点があれば、合意できるまで粘り強く交渉します。やり取りは、議事録として残すことをおすすめします。双方が資料を保管し証拠を残すことで、後のトラブルに備えるのです。

契約書の製本

交渉が成立し契約となれば、当事者の数だけ契約書を製本します。契約書が複数枚にわたるの場合は全ページをまとめ、左側2か所をホチキスでとめ、芯を隠すように左端を製本テープで綴じます。そして、製本が複数枚に渡る場合は、表紙と製本テープにまたがった場所に当事者全員が契印をします。「契印」とは、複数枚の書類のページが別の紙に移る際、連続した書類であることを証明するために押す印のことです。

契約書の署名及び押印

次に署名と押印です。署名とは直筆による自署のことで、本人が契約した証拠能力が極めて高いものとなります。契約書の押印は、一般的には実印を使用します。代表者印と呼ばれる実印は、法人設立登記の際に使用した印鑑で、複製や不正使用されにくいためです。

収入印紙の貼付

契約書の中には、印紙の貼付が必要な場合があります。印紙税対象の契約書があるためで、印紙税額や対象となる契約書については、国税庁のホームページから確認できます。印紙を貼付する場所は、一般的には最初のページの右上空白部になります。

契約書の郵送及び保管

当事者間での押印が済んだ契約書を、各自が一通ずつ保管します。契約書を郵送する場合は、万が一の紛失に備えて、追跡できる機能を備えた郵送方法が望ましいでしょう。

契約書は必要年数の保管が会社法で義務付けられているので、契約中はもちろん、契約後も安易に廃棄しないように注意してください。

最近では、4-4から4-7で記載した複雑な管理を簡素化するため、政府も「脱ハンコ」を政策に掲げており、電子契約が一般的になってきています。電子契約を行えば、印刷・製本・署名・押印・収入印紙貼付・郵送・保管といった作業は、ほぼ全て削減できます。

契約書作成でおさえる5つのポイント

契約書作成についてはテンプレートなどが存在しますが、企業によってリスクの事象はさまざまです。テンプレートに沿いながらも、自社の特性に合ったオリジナルの契約書作成が求められます。最後に、契約書作成においておさえるべき以下5つのポイントをお伝えします。

・必要事項が漏れていないか確認する
・権利と義務を明確にする
・第三者が見てもわかる内容にする
・記載事項が法律で決まっていないかチェックする
・取引上のリスクと対策を確認しておく

それぞれについて、見ていきます。

必要事項が漏れていないか確認する

1つめのポイントは、必要事項が漏れていないかを確認することです。契約書には、記載が必要な項目があるので、漏れが無いか確認しなければいけません。冒頭のタイトルから最後の項目まで確認しましょう。

・契約書のタイトル
・全文
・契約条項
・損害賠償
・契約期間
・合意管轄
・協議事項

権利と義務を明確にする

2つめのポイントは、権利と義務を明確にすることです。契約書の内容に、「誰の権利」、「誰の義務」なのかを明確に記載しましょう。その時のポイントは、主語を明確に記載することです。「誰が」が明確でなければ、双方の考えにズレが生じてトラブルになる可能性が出てくるからです。

第三者が見てもわかる内容にする

3つ目のポイントは、第三者が見てもわかる内容にすることです。トラブルを避けるために契約書を作成するのですが、最悪のケースも想定しておかなければいけません。相手とトラブルになり、裁判になった場合を想定して、裁判官でもわかる言葉で契約書を作成することを心がけてください。例えば、相手と自社しかわからない業界用語は避けるべきです。契約書作成では、一般的な言葉を用いて、第三者が見ても伝わる内容にする必要があります。

記載事項が法律で決まっていないかチェックする

4つ目のポイントは、記載事項が法律で定められていないかを確認することです。例えば「労働派遣契約書」のケースでは、事業所の組織単位や、派遣労働者の種類などが必要になります。「雇用契約書」の場合は、労働契約期間や業務内容、昇給に関する記載が必要です。このように、契約書の種類によって、法律で定められている事項が適切に契約書に反映されているかの確認が必要になるのです。

取引上のリスクと対策を確認しておく

5つ目のポイントは、取引上のリスクと対策を確認しておくことです。契約書作成では、その取引にはどのようなリスクが想定され、どうカバーしていくかの仮説だてが必要となります。

・代金の回収ができなくなる
・輸送中に商品が壊れる
・納期が遅れる
・知的財産を侵害して、損害賠償を請求される

契約書は、取引上で想定されるリスクを洗い出し、それをカバーする目的意識を持ち作成することが大切になります。

まとめ

契約書の種類や作成の手順、作成する際のポイントについて見てきました。契約書に関する基本を理解しておくと、作成が必要な時あわてずに済みます。契約書のテンプレートに沿えば効率的に作成できますが、相手との契約内容に照らし合わせて、都度カスタマイズしなければいけません。その時に、この記事でお伝えしたポイントを意識すると、リスク回避の目的に適した契約書が作成できるでしょう。

キャシュモでは、財務コンサルタントや、労務・税務・経理の専門家がワンストップで様々な経営課題へのアドバイスを提供します。契約書作成について、またその他の経営に関するお悩みは、是非キャシュモにご相談下さい。

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