技術発展が著しい現代において、ロボットは1950年代頃から注目されてきた分野です。今日では、IoT・AI・5Gといった環境も相まってよりその技術発展の速度は上がり続けています。
ロボットという言葉を聞くとHondaのアシモや、ソフトバンクのペッパーくんをイメージする方が多いのではないでしょうか。その中で、年々拡大していくロボット産業では配膳ロボットなどで飲食店にも着々と導入されてきています。2030年には50%の仕事がAIやロボットに置き換わるといわれていますが、どのようなロボットによって置き換わるのでしょうか。
今回はそのようなロボットを開発する分野であるロボティクスを紹介していきます。
ロボティクスとは
そもそもロボティクスとはどのような意味なのでしょうか。
ロボティクスはつづりにするとRoboticsであり、学問としてのロボット工学のことを指します。今ではロボット工学という言葉は一般的になりましたが、元々は、作家兼生化学者のアイザック・アシモフが1950年に著作でロボットと、物理学に用いられるティクス(tics)を組み合わせた造語だと言われています。改めて、ロボティクスを大別すると以下の6つになります。
・ロボット幾何学・動力学
・ロボット素材
・ロボット制御工学
・感覚情報処理・人工知能
・ロボットシステム応用技術
・ロボット社会学
今回はこの中でも中小企業向けに【ロボットシステム応用技術】を中心に解説していきます。ロボットとロボティクスをうまく活用することで、事業を効率的に展開していきましょう。
ロボティクスの基本的な考え方
上述した人型ロボットをイメージする方が多い一方で、機能に特化したラジコンのような形の救助用ロボットや、家庭用掃除ロボットも普及してきました。このように<ロボット>という言葉には明確な定義はありませんが、今回は人の代わりに作業をし、予め決められた動きをするものとして見ていきます。
家庭用掃除ロボットを例に挙げてみます。動きの面で言えば、掃除ロボットは[箒部分を稼働させ、吸引口からごみを吸い取り、センサーで物体を認識して、車輪を動かして移動する。最後に、通信で充電ポートに移動する]など可動部を見るといくつか動作がありますが、機能としては部屋を掃除するという単純なものです。
加えて、予めインプットされている動きは[床の種類によって出力を変える、物体を認知したら避ける、掃除が完了したら充電ポートに戻る]と同様に簡単なものですが、プログラム上はかなり複雑なものが必要になります。
このようにロボティクスの観点からすると、ロボットは実際に動きをする器のハードウェアと、動きの指令をインプットするソフトウェアに分けて考えることが出来ます。ロボティクスにおいて研究が難しいとされているのは、この両方の知識が必要になるためです。パソコンで考えるとパソコンメーカー(富士通)とソフトウェアメーカー(Microsoft)が同じ会社で開発をしていることになります。
更に、人型ロボットで考えた場合、最も難しいとされているのは感情理解、言語理解、それに対応する言動です。通常のソフトでは言語理解などは非常に困難なため、ロボティクスにおいてはロボットという単語単体ではなく、ソフトウェアとしてAI技術と同時に考察されるのが、現在の考え方の主流になっています。
ロボティクスのトレンド
ロボティクスにおいて、大きな影響を与えたのは2年以上も継続しているコロナ禍です。
従来ロボットの研究自体はされていても、初期コストの大きさから導入にはかなりのハードルがありました。しかし、コロナ禍になったことで、経営の見直しや、感染対策、巣ごもり需要の拡大からロボットを導入する企業が増えていきました。そのため、2021年はロボティクスの活用という意味では大きく進歩した年でもありました。具体例は以下の通りです。
スマートファクトリー
2021年では<スマートファクトリー>というワードが使われるようになりました。
スマートファクトリーとは、工場においてロボットの導入を行い、デジタルデータを用いて、工場内の工程を管理、最適化し、故障率などの改善を行うものです。従来のデータを用いない工程管理の場合には、熟練作業者が勘を頼りにミスの修正をしていましたが、定量的な修正を行うために製品を数値化し、それをもとに合理的かつ再現可能な形で、科学的な経営を行っていく手法です。
元々は1950年代に唱えられていた考えではありますが、コロナ禍による経営の見直しや、巣ごもり需要の拡大から工場のあり方が変化したことがスマートファクトリーにつながっているとされています。
協働ロボット
協働ロボットとは、人とロボットが物理的に近くで作業を行い、人の作業をサポートする立ち位置で設置されるロボットを指します。従来の産業用ロボットは、工場内で立ち入り禁止の柵の中で使用しなければなりませんでした。基本的にロボットは大きい動きをすることが多く、もし近くに人がいるとライン内のロボットの動きに巻き込まれて事故につながる可能性があるからです。これは「80W(ワット)規制」と呼ばれ、80W以上の産業用ロボットを利用する場合、労働安全衛生規則で明確に規制されていました。
しかし、2013年に規制緩和が行われ、「ロボットメーカーやユーザーが国際標準化機構の定める産業用ロボットの規格に準じた措置を講じる」等の条件を満たせば、80W以上の産業用ロボットと人が同じ空間で働くことが可能になりました。これにより協働ロボットの開発が行われ、柵を作らないことで移動可能になったことや、人が行わなければいけない作業のサポートに入れるようになったことで、業務効率化に繋げられるようになりました。加えて、協働ロボットはプログラムの書き換えが容易になっており、製造ラインで活躍する協働ロボットと同じ型のロボットがスーパーの品出しをすることが可能になります。
一般家庭では機能を絞った特化型のロボットが普及している中で、使用用途を多様に出来る汎用性を持たせることも現在のロボティクスのトレンドになっています。
まとめ
現在の大企業は商品を大量生産するために賃金の安価な中国などを生産拠点にしていることがほとんどです。しかし将来、スマートファクトリーが主流となった際には、ロボットを導入することで国内でも海外の人件費と同程度で商品の製造が可能になります。これにより製造拠点の見直しがされる可能性もあります。
しばしば語られる〈ロボット・AIに代替される仕事〉が実際目の前まで迫っていることも認識しなければいけませんが、それにより世の中や大企業がどのような動きをするかセットに考えるとビジネスチャンスはあるかもしれません。
また、協働ロボットの導入コストを一例で挙げておきます。ロボット本体に掛かる費用はおおよそ100~400万円程度となっていますが、ロボット関連装置、ロボット周辺機器、SIerと呼ばれるサポート費用などをまとめると導入コストで2000万円~4000万円が相場とみていいでしょう。
もし、これだけの資金力があった場合、人を雇用するよりもメリットがある可能性が出てきます。これを機にロボティクスへの理解を深めた上で、ロボットの導入を考えてみるのもいいかもしれません。