給与計算とは?業務内容や基礎知識について解説
会社の目的は利益を追求しながら、社会に対して何らかの還元をしていくことと考えます。
この目的を達成するためには、従業員を雇用し、会社に対して生産性の高い労務の提供を受けることが重要です。さらに、従業員に対して適正な対価を支払う必要があります。
対価を支払う際に給与計算を切り離して考えることはできません。今回は、給与計算についての基礎知識などにフォーカスをあて解説していきます。
なぜ給与計算は必要なのか?
会社として一定規模以上の事業運営を継続していくには労働者から労働力の提供を受けることが必要です。
会社は労働力の提供を受ける代わりに対価として働いた時間に換算して一定額以上の報酬を支払うことが法律上も定められています。ですので、適正な給与計算は労使間の信頼関係を構築する意味でも重要な意味を持ちます。
具体例として週5日勤務する労働者が月に1回の給与支給日において実際に受け取るべき額よりも少ない給与額しか振り込まれていない場合、その月の生活に影響を及ぼす可能性もあり、職場においても就労意欲が減退するなどマイナスの影響が出ててきます。給与計算は社会通念上、私生活に与える影響が大きく100%正解であることが共通認識として形成されています。
一般的にはどの部署が給与計算を担うのか?
100%正解が前提とされる給与計算は一朝一夕に仕上げられるものではなく、日々の適正な労務管理があってこそ100%の正解にたどり着きます。労務管理は、一般的には労務担当が担当することとなります。日々の出退勤を確認し、その際に打刻漏れや時間外労働がないか等を精査し、必要に応じて本人や所属長に確認をすることが必要です。
どの月であっても同じことが言えますが、必ず給与計算には締め日があり、適正にスケジュール管理をしなければ給与支給の遅延が起こりかねません。給与支給の遅延が発生してしまうと労働者によっては銀行口座から公共料金等の引き落としができず、その履歴が残ってしまうことも想定されます。このような場合には、例えば住宅ローンの審査時にマイナス要因となる可能性もあります。
また、労務担当だけでは把握できない人事上の情報(例えば採用や異動)も加味して給与計算をしなければなりません。よって、人事担当との連携は適正な給与計算においては必須となります。
給与計算の全体像と流れとは?
一般的には給与計算は年間のスケジュールの中で繁忙期と閑散期が明確です。
新卒一括採用を行う会社であれば4月に新入社員が入社することとなり、基本給の設定業務や人事上の人数と実際に支給する人数が合致しているのか等、複数名で確認することが重要です。
次に10月(または9月)の給与では年に一度の「算定基礎届」の反映があり、社会保険において新たに決定した標準報酬月額を反映させ、決定後の社会保険料の計算をしなければなりません。
そして、12月の給与では「年末調整」があり、毎月控除した所得税をその年に控除すべき額であるか否かを精査し、還付・徴収等を行う業務があります。
これらの業務は必ず発生するものなので、事前にきちんとしたスケジュールを作成し管理をすることで、慌てることなく作業を行い、ミスを回避することができます。
その他、一般的な月々の給与計算の全体像は次のとおりです。
一般的に人事は求人者として入社前の手続きや人事上の措置(例えば配属や昇進)を担当することが主たる業務です。また、労務は入社後の管理(例えば勤怠管理)を主たる業務です。
この前提条件で流れを説明すると、新規採用や人事異動等の(前月からの)人事上の変更点の確認が必要です。企業規模によっては労務担当と人事担当は別担当となっているため、早い段階でお互い協力して、このような確認をしておくことが肝要になります。
次に労務担当分野の前月からの変更点(例えば労働者の転居や扶養親族の増減)の確認が必要です。
その後、勤怠状況の確認を行い、給与計算を進めていきます。尚、前提条件の確認は早い段階で済ませておかなければ後になって変更をかけると付随的に他の部分にまで影響を及ぼし、ミスに繋がることがあるため注意が必要です。
給与計算は一度仕上げて即完成ではなく、むしろ計算自体よりも確認作業に比重を置いて慎重に行うべきです。また、確認は可能であれば計算をした本人とは別の担当者を割り当てる等の工夫を入れるべきです。多くの場合、自分で計算したものを自分でチェックするとなると、合っている前提でのチェックとなり、ミスを発見できない可能性が高くなります。従って、予め誰が仕上げたデータなのかを明確化しておき、計算をした担当者とは別の担当者を確認担当とすべきです。
確認が終了した際には再度、前月からの変更点が加味されているかの再確認と緊急的な案件(例えば突発的な退職)がないかの確認をし、振り込み作業に入るというフローとなります。
給与計算で陥りがちなミスとは?
法律改正が加味されていない
給与計算は社内の規定や人事異動情報の考慮だけでは充分ではなく、給与に関連する法律の改正も常に視野に入れなければなりません。
例えば近年は据え置きとなっていますが、雇用保険料率の改正、ほぼ毎年行われる健康保険料率の改正などは社内の就業規則を熟知するだけでは把握することは不可能です。
前月からの申し送り事項が共有されていない
給与計算を担う担当者が複数名配置されている場合など、翌月に対応しなければならない申し送り事項が担当者どうしで共有されていなかった場合には給与計算のミスにつながります。たとえ労働者の過失でその月に対応できず、翌月に回すこととなった場合でも、翌月に対応すると決まったことが対応できていなかったとしたら給与計算担当者の責任となります。
担当者が忘れる可能性や病気などにより一時的に勤務できなくなった場合も想定すると、複数名で申し送り事項を共有できる体制の構築が望ましいと言えます。
承認漏れにより残業代未払い
ある労働者が残業の申請をしたとしても、所属部門の管理者が承認を忘れたために正しい給与計算ができないといった事態も想定されます。労働者にとっては適正な給与が支払われるか否かが問題であり、誰がミスをしたかは(組織としては重要な問題ですが)関係ありません。労働者の心証としても、このような問題は給与計算を行う労務担当が発見すべきであると考え、労務担当への不信感につながる可能性もあります。
このような事態を回避する対策としては、未承認案件が残っている場合は給与計算の作業時にエラーとなるように給与計算システムを設定する等の工夫が考えられます。また、このようなミスが発生した場合には、そのミスを契機として、他に同じミスがないかを検証する作業も重要です。残業代の未払いは法律上も問題であり、労働基準監督署の立ち入り調査があった際にも是正勧告以上の指導を受ける可能性があります。
まとめ
給与計算は会社の中心的な業務とも言われます。ミスが重なることや、対応が滞ってしまうことで労使間での信頼関係がなくなり、生産性の低い職場環境となってしまうケースもあります。給与は労働者の生活に密接に関わるものなので、ミスが起こった場合の影響は甚大です。また、1度ミスが起こってしまうとその後の給与計算も何らかのミスが起こっているのではないか疑心暗鬼になり、労使間の信頼関係が損なわれかねません。ですので、定期的に給与計算のプロセスを点検し、ミスのない万全な状態を維持することが必要です。
これまで、複数名の体制構築など、社内で給与計算をミスなく実行するための施策を提示してきました。
しかし、リソースの制約から、そのような対応が難しい企業も数多くあるのが実態です。
その場合、給与計算を専門家に任せるアウトソーシングも有力な選択肢となります。
キャシュモグループでは、最先端のクラウド型システムを駆使し、給与計算を始め、経理業務などのアウトソーシングや労務顧問・税務顧問などのサービスを提供しています。
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