早いものでもう年末です。皆様にとって今年はどのような年であったでしょうか。
景気全般ですと、いまひとつパッとしない一年だったと感じています。日経平均は、現在は若干回復傾向にあるものの、年初の18,000円から2月にかけて下げ、その後17,000円前後で上下しながら横ばいが続いております。物価については、日銀黒田バズーカと呼ばれた金融緩和策で、「デフレではない(政府認識)」状況までにはなりましたが、目標とするインフレ率2%程度となる気配は今のところ感じられません。
為替相場も年初の1ドル120円程度から夏にかけて100円程度にまで円高になり、現在では104~105円程度で推移しております。輸出企業が昨年享受した円安による増収効果は薄れています。
金融緩和で円安に誘導し、景気回復・賃金上昇を通じて物価上昇を実現し、継続的な経済拡大を目指したアベノミクスですが、効果が実感できるまでには時間がかかりそうです。
また、経済以外では、九州での地震や東北・北海道での台風による大きな災害もありましたし、海外では大規模なテロが何度も報道されておりました。
全体的には、先が見通せない、にわか雨が時々降るうす曇りのような一年だったように思います。
このような状況で日本人のマインドを振り返る意味でどのようなビジネス書が売れているかを見てみました。トーハンの調査ですが2016年の上半期で売れているビジネス書は以下のようになっています。
ここ数年アドラー心理学はブームになっていますが、その入門書、「嫌われる勇気 自己啓発の源流『アドラー』の教え」とその続編である「幸せになる勇気」がトップとなっています。
この本では、自分の存在価値に悩む青年が、哲人のもとに訪れ、アドラー心理学を対話形式で学んでいく過程が描かれています。生い立ちや家族、現在の仕事や職場に対する不満や不安は、自分で作り出しているとの哲人の挑発的な言葉とそれに対する青年の反発から物語はスタートし、次第に青年は、自分が変わる勇気さえ持てば、世界がかわると説くアドラー心理学に共感し、変わる決心をして物語は終わります。
本としては、読む価値のある素晴らしい本と思います。ただ、こういった自己内省の本がビジネス書としてベストセラーになった理由が気になります。
トップ10の他の書籍の多くもビジネス書というよりも自己啓発に近い内容です。日本のビジネスパーソンのマインドも決して明るくはなく、少子化等による日本の将来に対する自信も揺らいでいるなかで、内向き志向になっているような気がします。同じ調査ですが、バブル期末期の1990年のトップテンは次のようになっています。
当時のベストセラーの多くが経済に焦点を当てた書籍となっています。このリストを見ていますと、当時は、拡張や挑戦といった志向が今よりも強かったと感じられます。
経済状況が大きく好転すると感じている人は少数派と思いますので、現在の内向き志向は、しばらくは続くのではないでしょうか。ミニマリストと呼ばれる人たちの登場ややシェアリングエコノミーの広がりなどからも「物」に執着せず、自分に見合った「価値」を模索する傾向は強まっていくように感じます。新年の商品やサービス戦略立案の参考にしていただければと思います。