新入社員の年次有給休暇を入社時3日、半年後7日のように分割して付与することは可能でしょうか?
一定の付与要件を満たすことで、分割して付与することができます。
解説
有給休暇の分割付与は、法律によって定められている制度ではなく、行政通達を根拠として運用されている制度です。
法定の付与日よりも前倒しで有給休暇を取得することができるので、労働者にとってはメリットのある一方で、会社にとっては労務管理が複雑になる懸念があります。
有給休暇を分割して付与するためにはいくつかの要件を満たす必要がありますので、解説していきます。
有給休暇の発生要件
まずは有給休暇の基本的なルールを確認していきます。
労働基準法において、労働者は以下の2点を満たしていれば、有給休暇を取得することができます。
1.雇い入れの日から6カ月継続して雇われている
2.全労働日の8割以上出勤している
原則となる付与日数
使用者は、労働者が雇い入れの日から6か月間継続勤務し、その6カ月間の全労働日の8割以上を出勤した場合には、原則として10日の有給休暇を与えなければなりません。
パートタイム労働者など、所定労働日数が少ない労働者については、有給休暇の日数は所定労働日数に応じて比例付与されます。比例付与の対象となるのは、所定労働時間が週30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下または年間の所定労働日数が216日以下の労働者です。
参考:厚生労働省「有給休暇取得推進特設サイト」
行政通達
行政通達では、以下のように示されています。
年次有給休暇の斉一的取扱い
年次有給休暇について法律どおり付与すると年次有給休暇の基準日が複数となる等から、その斉一的取扱い(原則として全労働者につき一律の基準日を定めて年次有給休暇を与える取扱いをいう。)や分割付与(初年度において法定の年次有給休暇の付与日数を一括して与えるのではなく、その日数の一部を法定の基準日以前に付与することをいう。)が問題となるが、以下の要件に該当する場合には、そのような取扱いをすることも差し支えないものであること。
イ 斉一的取扱いや分割付与により法定の基準日以前に付与する場合の年次有給休暇の付与要件である八割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤したものとみなすものであること。
ロ 次年度以降の年次有給休暇の付与日についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じ又はそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げること。(例えば、斉一的取扱いとして、4月1日入社した者に入社時に10日、一年後である翌年の4月1日に11日付与とする場合、また、分割付与として、4月1日入社した者に入社時に5日、法定の基準日である六箇月後の10月1日に5日付与し、次年度の基準日は本来翌年10月1日であるが、初年度に10日のうち5日分について6箇月繰り上げたことから同様に6箇月繰り上げ、4月1日に11日付与する場合などが考えられること。)
(平成六年一月四日 基発第一号)
分割付与の要件
行政通達の内容をまとめると、有給休暇を分割して付与するための要件は、
1. 入社初年度の有給休暇であること
2. 分割付与した残りの日数は、入社後6カ月を経過するまでに全て付与すること
3. 2回目の有給休暇は、分割付与した初回の付与日から1年以内に付与すること
4. 出勤率の算定をする際には、短縮された期間は全て出勤したものと取り扱うこと
上記の要件を満たすことで、有給休暇を分割して付与することが認められます。分割付与を導入する際には、法定の基準を下回ることのないように注意が必要です。