新型コロナウイルスの感染拡大により、これまでの働き方を見直す企業が増えてきています。
経済状況がめまぐるしく変化するようになり、労働者自身の生活も以前とは大きく変わり、労働者の個々の事情に対応するためにテレワークや週休3日制など柔軟な働き方を導入する企業が急速に拡大しています。
今回は近年、働き方改革の中で自由な働き方として注目されているフレックスタイム制について解説をします。
フレックスタイム制は、労働者が労働時間の調整を行うことが出来る制度で柔軟な働き方の選択が可能となります。導入にあたっては就業規則等への規定と労使協定の締結が必要で、運用上守らなければいけないルールがあります。今回はフレックスタイム制の基本的なルールを確認します。
フレックスタイム制について
フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻を自ら決めることのできる制度です。
労働者にとって、日々の都合に合わせて、プライベートと仕事に自由に配分することができるため、プライベートと仕事とのバランスがとりやすくなります。
参照:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」
導入要件
① 終業規則等への規定
就業規則等に、始業・終業時刻を労働者の決定に委ねることを定める。
② 労使協定で所定の事項を定める
次の事項を、労使協定において定める必要があります。
1. 対象となる労働者の範囲
部署や個人など、対象となる労働者を明確にします。労使で十分に話し合い決定します。
2. 清算期間
1カ月から3カ月の範囲で決めることができます。また、清算期間の起算日を定めてください。
3.清算期間における総労働時間
下記の式を参考に、法定労働時間の総枠を超えないことを条件に清算期間における総労働時間を決めます。
法定労働時間の総枠=40時間(1週間の法定労働時間)÷7×歴日数
4. 標準となる1日の労働時間
年次有給休暇を取得した際に支払われる賃金の算定基礎となります。清算期間における総労働時間を、期間中の所定労働日数で割った時間を基準として定めます。
5.コアタイム(任意)
労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯です。設ける場合には、その時間帯の開始・終了の時刻を協定で定める必要があります。
6.フレキシブルタイム(任意)
労働者が自らの選択によって労働時間を決定することができる時間帯です。設ける場合には、その時間帯の開始・終了の時刻を協定で定める必要があります。
① 、②を満たしていればフレックスタイム制を導入することができます。
ただし、清算期間が1カ月を超える場合には、労使協定を所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
フレックスタイム制における時間外労働
フレックスタイム制のもとでは、清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間が時間外労働としてカウントされます。
清算期間を単位として時間外労働を判断することになるので、36協定において1日の延長時間について協定する必要はなく、1ヶ月、1年の延長時間を協定します。
参照:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」
清算期間が1カ月を超える場合には、
① 1カ月ごとに、週平均50時間を超えた労働時間
② 清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間(①でカウントした労働時間を除く)が時間外労働としてカウントされます。
参照:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」
まとめ
フレックスタイム制の導入によって、労働時間を効率的に配分することが可能となり、労働生産性の向上が期待できます。
また、仕事と生活の調和を図りやすい職場となることによって、労働者に長く職場に定着してもらえるようになるなど、使用者にとってもメリットがあります。
細かくルールが定められていて複雑な制度ではありますが、ルールを守り適切に運用すれば、年間労働時間の削減、残業代の抑制が期待できます。働き方改革の流れもあり導入する企業が今後増えていくことでしょう。多様な働き方を選べる取り組みとしてフレックスタイム制の導入を検討してみてはいかがでしょうか。