「働き方改革」御社は大丈夫?取り残されたらヤバい本当の理由

労務お役立ち情報

いつの間にか経営者や人事担当者の中では当たり前になった「働き方改革」という言葉。とはいえ、実はこの改革が「いつから」「何のために」「どのような目的で」産まれたのか、真の目的とその影響を理解している人は、思ったほど多くない実感があります。

「働き方改革関連法案」が施行されたのは2019年4月ですが、実はその2年前の2017年には既に流行語大賞にノミネートされており、思った以上に前から存在している概念なのです。

「別に何も対策しなくても、罰則はないんだよね?」といった声も聞かれますが、国の一過性の施策であるという捉え方をしていると、採用の競合に先を越されてしまうことに留まらず、企業ブランディングに於いても後手に回る可能性すら高いのがこの法案です。トレンドに敏感な企業様に至っては、「早期に改革に対応すべく、法案施行前から社内整備を行っていた」という話も耳にしますので、遅れをとると後から痛い目に遭う可能性もあります。
働き方改革への「WHY?」を解消し、時代の波を味方につける強い企業づくりのため、今何をするべきか、順番に確認してみましょう。

「働き方改革」への対応が、企業にとって死活問題なワケ

ここで、働き方改革の目的をおさらいしてみましょう。厚生労働省のサイトには、「働き方改革」の目指すもの として、下記が記されています。

“我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。
こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。”

これを簡単にかみ砕くと、「働き方改革」とは、
・日本はこれから働き手が減少する(原因:労働力の減少)
・労働力が減る分、生産性を向上する必要がある(目的1:生産性の向上)
・今まで仕事をしていなかった層にも働いてもらう必要がある(目的2:就業機会の拡大)
・労働者には長期的に高いパフォーマンスを出せる環境を用意する必要がある(目的3:労働環境の見直し)
ということになります。
「働き方改革」をなんとなく理解されている方の中には、長時間労働等が問題だっため、労働者にやさしい環境づくりを目的としているのでは?と考えている方も少なくないようですが、実は、すべての施策は「労働力の確保」が目的とされています。
国を挙げて労働力の確保に乗り出している、ということは、事態は相当に深刻です。グラフを見てみましょう。

総務省 「人口減少社会の到来」図表1-1-1-1 我が国の人口の推移 引用

総人口が2000年頃に頭打ちになっていることも明白ですが、実は若い年齢(14歳以下)の人口は今から50年以上前の1960年頃に頭打ちとなり、そこから徐々に減少。直近での減り幅を見てもわかる通り、回復の見込みは一切ありません。
このようなデータでは、生産人口と呼ばれる15歳から64歳(グラフ緑部分)を「労働力」として取り扱いますが、実際に新規人材を採用するとなると、22歳から55歳くらいまでをターゲットにしている企業様が多いのではないでしょうか。過去数十年間、若年層の人口が減少の一途である以上、採用ターゲットとなりうる人材の絶対数は確実に減少していくわけです。

「働き方改革」を何故無視できないのか、ここで答え合わせです。今後の日本は、慢性的な売り手市場となります。その中で、各社魅力的な条件で求職者にPRし、働きやすい環境を整備することで、労働力を確保していこうというのが今のフェーズ。ただでさえ人材が減少していく中何の施策も取らなければ、優秀な人材の確保は絶望的になります。人材の確保は企業の死活問題、乗り遅れないように対策を取ることが必須になるのです。

では、「働き方改革」に対して、実際に「何を」「どのように」推進していく必要があるのでしょうか?この記事では、①できる限り効果が早く表出するもので、②導入のコストがあまりかからないもの、③身近な企業様で成功事例の多いものを挙げていきます。

「働き方改革」に対応するために – 生産性の向上

まずは、生産性の向上について確認していきましょう。従業員のひとりあたり生産性が目に見えて向上すれば、必要以上に人材の確保に動く必要もない、すなわち採用にかかる工数も減らせますし、直接的な人件費の削減・利益の増大にも寄与するはずです。当然、生産性の向上を願わない企業様はないのではないでしょうか?

しかし、従業員を鼓舞したところで、一人の人間が出せるパフォーマンスは限られています。手っ取り早く、効果がわかりやすい形で生産性を上げるためにお勧めなのが、下記の2点となります。

1.ITツールの導入
2.専門分野のアウトソーシング

1.「ITツールの導入」
必要なものはある程度導入が済んでいるはず、と思われる企業様も多く見受けられます。しかし、会計分野や原価計算から、雇用契約書の締結、人事考課まで、実はまだまだ無駄が多い企業様が多いのも事実。IT導入助成金が支給されているうちに、徹底した合理化を図ることをお勧めします。
手順としてはまず、①紙を使用しているもの ②エクセルを複数人で更新しているもの ③複数人を巻き込む業務で進捗が不透明になりやすいもの を洗い出します。次に、そのうち、一番大きな人数を巻き込むものから導入を検討し、該当するサービスの見積もりを取っていきます。
例えば勤怠管理など、ほとんどの従業員が対象になるものについては、IT化によって生産性の向上が目に見えてわかりやすいため、非常にお勧めです。

2.「専門分野のアウトソーシング」
「調べたら自社でなんとかなる」という気持ちでアウトソースを敬遠している企業様も見受けられますが、実は、特定の分野についてはアウトソーシングした方が結果的に安くつく、ということがあります。特に中小企業においては、経費精算・給与計算や労務管理など、「誰がやっても結果が一緒になるべきもの」に社内のリソースを使うのは勿体ないと言えるでしょう。ポイントとして、アウトソーシングを依頼する場合は、クラウドソーシングを利用するのはあまりお勧めできません。理由としては、依頼者に途中で業務を断られることも多く、フリーランサーを探す工数がかかること、また、どうしても腰掛になってしまいがちなため、業務クオリティが下がることです。
各種法整備への対応や、これから述べる新しい就業形態に対応する際も、専門家にアウトソースしたほうが柔軟に対応でき、結果的に業務が効率化・コスト削減に寄与することが多々あります。まずは「社内でしても、社外の人がしても、結果が一緒になるべきもの」の業務を洗い出し、アウトソースの検討を視野に入れましょう。

「働き方改革」に対応するために – 就業機会の拡大

つぎに、就業規則の拡大について対策を取っていきます。これまで雇用できなかった層に、積極的に就労の意欲を出してもらうためには、下記の4点の問題があります。

1.就業場所の問題
2.就業時間の問題
3.求職者の本人の年齢の問題
4.賃金等その他の雇用条件の問題

※このうち、3.「求職者の本人の年齢の問題」については、単純に定年の引き上げ等を実施すれば問題ありませんので、ここでは触れません。また、4.の「賃金等その他の雇用条件の問題」については、当然、給与が高ければ高いほど採用市場に於いて有利であることは明白ですが、とはいえ、給与を上げて雇用の機会を増大するのは得策といえません。これは最終手段として取っておくとして、優先順位としては1.「就業場所の問題」および2.「就業時間の問題」を中心にまずは対策を取っていくことが急務となります。

1.就業場所の問題
こちらは、コロナ禍において急激に浸透した在宅勤務への対応がメインとなります。従業員同士のコミュニケーションを重視する企業様においては、在宅勤務に対する苦手意識があるようにも思えますが、就労場所の選択肢を増やしていくことについては、一部、必須で対応しなければならない領域があります。
それは、WEBエンジニアやWEBデザイナー、WEBマーケター等、転職市場に人材が少なく、以前から売り手市場であった職種、かつ、コロナ禍の前から在宅勤務が比較的多かった職種です。これらの職種は、10年ほど前から人材不足が加熱しており、完全な売り手市場、求職者も仕事を選び放題です。大手企業では人材の囲い込みのため、比較的若年層に対しても年収1,000万円以上を提示していることも多くあるため、これらの職種を継続して雇用し続けたいのであれば、就業場所の条件ではじかれるというのは大きな機会損失となります。
そのため、これらの職種に対しては、社内において若干の特別扱いをしてでも、在宅勤務、リモートワークの導入準備を始める必要があります。
なお、週に1度、月に1度の出社を義務付ける形でも、求人を行う際は「在宅勤務」と表現できますので、フルリモートに未だ抵抗のある企業様については、一部リモートからでも是非導入を推進していきましょう。

2.就業時間の問題
次に、就業時間の問題が挙げられます。塩野義製薬が週休3日を導入したことが話題になりました。ただし、中小企業に於いては、敢えてフルタイムの従業員の勤務日数を減らして副業を推進するよりは、優秀な子育て層に対応する就業時間を積極的に提示していき、時短前提での採用をする、という方がコストパフォーマンスが高くなる傾向にあります。
子育て層は、①時短前提の求人は現在もあまり多くないため、高学歴、ハイキャリアな人材を採用できる ②家庭の用事があり残業が難しいため、引継ぎ等をしっかりする ③業務中の生産性が高くなる傾向にある ④キャリアに対して採用コストがそこまで高くない
といったメリットがあり、中小企業にとっては非常に有難い存在。是非、これまでの固定概念を一度取り払って、採用の対象にしていきたいものです。

「働き方改革」に対応するために – 労働環境の見直し

上記でも述べた通り、「働き方改革」を、「従業員にやさしい会社作り」が目的だと想像されている方は多いのですが、労働環境の見直しについても、労働力の減少・ひいては人件費の高騰に対抗すべく出された施策の一環です。
具体的には、時間外労働の上限規制の導入、「勤務間インターバル」制度の導入促進、年5日の年次有給休暇の取得の義務化など、「働かせすぎ」に対応したものが中心となっています。
乱暴な言い方をすると、一人に長時間働いて貰ったほうが、労働力を確保できるのでは?という考えの方も多いかもしれません。しかし、長時間労働により鬱病等精神疾患に罹患してしまい、就労からリタイヤしてしまう人材が非常に増加していること、長時間労働への懸念が原因となり、労働参加率も結果的に低下していること等が問題になっています。したがって、これらの方針に従ったほうが、長い目で見て多くの人を、長期間労働市場に確保しておけると考えるのが正しい、ということになります。
最近の求職者は「ホワイト企業」「ブラック企業」というワードに非常に敏感です。一度でも「ブラック企業」として認知されてしまうと、そのイメージを払拭するには膨大な時間と労力、ひいてはコストがかかります。ネットの海に御社の悪い評判が流出する前に、最低限の法令順守だけではなく、今回定められた方針への対応も進めるべきでしょう。

意外とやるべきことが多くてうんざり・・・という方もいらっしゃるかもしれません。直近でも人事領域では、65歳以上への雇用保険の適用や子の看護・介護休暇の時間単位取得など、新たに法令が変わったばかり。「働き方改革」以外にも対応すべきことはたくさんあります。
他の業務に逼迫されて、結局何の対策もできずに数年経過してしまった・・・ということもあるかもしれません。その場合は、今回解説したような施策の実行を支援してもらえるアウトソース会社の活用を検討してみてはいかがでしょうか。うまくアウトソースしながら、御社の求職者へのイメージアップを成功させ、人材に困らない強い会社を作っていきましょう。

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