【労務Q&A】年休の買い上げは認められる?

労務Q&A

年休の買い上げが認められるのはどのようなケースでしょうか?

①退職により未消化のまま残った年休
②2年の消滅時効により、取得の権利が消滅した年休
に対してのみ、金銭の給付が認められます。

解説

まずは年次有給休暇の定義について確認していきます。

年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことで、「有給」で休むことができる、すなわち取得しても賃金が減額されない休暇のことです。

年次有給休暇が付与される要件は2つあります。

(1)雇い入れの日から6か月経過していること、
(2)その期間の全労働日の8割以上出勤したこと

以上の2つです。この要件を満たした労働者は、10労働日の年次有給休暇が付与されます。

また、最初に年次有給休暇が付与された日から1年を経過した日に、(2)と同様の要件(最初の年次有給休暇が付与されてから1年間の全労働日の8割以上出勤したこと)を満たせば、11労働日の年次有給休暇が付与されます。その後、要件を満たすことにより、勤続年数に合わせて以下の日数が付与される仕組みとなっています。

使用者は勤続年数に応じて、労働者に対して年休を付与する義務があります。年休を取らない労働者に対して相応の金銭を与えたとしても、年休を与えたことにはなりません。また、それは労基法の趣旨にも反することであり、年休の事前買い上げは違法として禁止されています。

しかし、次のような場合、その残日数に対して金銭の給付を行うことは、前述の「年休の事前買い上げ」とは異なるとして、そのことが年休取得の抑制効果を持つものでない限り違法ではないとされています。

① 退職により権利が消滅する年休の残日数
② 労働者が権利を行使しなかったことによって、2年の消滅時効にかかる年休の残日数

上記①、②ともに権利消滅の原因が、本人が年休取得の権利を行使しなかったことにある以上、使用者にはこのことに対する配慮義務もありません。したがって、このような消滅する権利に対して、使用者が金銭の給付を行うことは違法ではないとされています。また、その給付額についても任意となります。