中小企業は資源に限りがあるからこそ、必要以上の資産を持たない効率的な経営が欠かせません。
中小企業の在庫管理の実態を調べると、担当者の勘や感覚で行われており、実際の在庫状況を正確に把握できていないことがあります。このような場合、過剰な在庫を抱えてキャッシュフローを圧迫する一方で、売れ筋商品が欠品しているなど、売上の機会損失をしている場面が多く見られます。
在庫管理は、業務を効率化させるだけでなく、過剰な資金流出や機会損失を防ぐためにも有効です。ここでは、中小企業を経営する上で知っておきたい在庫管理のポイントを解説していきます。
なぜ中小企業こそ、在庫管理が必要なのか?
在庫管理と聞くと、「在庫数の把握」だけがフォーカスされがちですが、企業経営においては「必要なモノを、適切なタイミングと場所で管理し、適正な水準を維持すること」が求められます。
過剰な在庫は、それを保管するだけでも倉庫費や人件費など、さまざまな運転資金を必要とします。また売れる見込みのない「滞留在庫」が多すぎると、倉庫スペースを圧迫します。その結果、売れ筋商品の保管場所がなくなり仕入れが制限されるなど、肝心の売上をあげるための活動が停滞してしまいます。
適切な在庫水準を維持できないと、販売の機会損失だけでなく、不必要な出費やキャッシュフローの停滞を招き、最悪の場合は企業が倒産してしまいます。このような事態を招かないためにも、日々適切な在庫水準を保つことはとても大切です。
在庫管理を行うには、それなりの手間や時間がかかるので、特に中小企業では後回しにされがちです。また、日々の業務で手一杯となり、なかなか現場スタッフの理解を得られずに苦労している企業もあるでしょう。
在庫管理は、在庫数の管理だけでなく、売上や利益の最大化や、事業全体のキャッシュフローの改善にも効果のある大切な活動です。とくに資源の限りのある中小企業では、積極的に取り組んでいくことで大きなメリットが期待できるのです。
在庫管理の流れとおさえておきたい3つのポイント
在庫管理とは、つまり、「在庫を無駄なく管理する」ということです。
在庫管理の流れは、「入庫」「保管」「出庫」の3ステップに集約されます。より効果的に活用するためには、入庫と出庫の前後に何が起きているのかもしっかりと把握しておく必要があります。入庫の前には「仕入れ」があり、出庫の後には「出荷」「納品」があります。
在庫管理を効率的に運用するには、適切な数の仕入れ、スムーズな出荷、納品後にクレーム返品とならないような在庫の品質管理などがあげられるでしょう。
下記は、在庫管理の際におさえておきたい3つのポイントになります。
入庫をコントロールする
過剰発注や欠品を防ぐことが目的です。最新の在庫状況を把握して、入庫をコントロールします。また、これまでの入庫・出庫の傾向を分析して、適切な発注量を予測します。その際、発注してから納品されるまでのリードタイムを把握し、必要な数量やタイミングの管理をすることも大切なポイントとなります。
品質を保ちながら、効率的に保管する
保管の際、まずは商品の品質を最適に保つことが大切です。高温多湿な場所で保管したために商品にカビが生えるなど、商品の劣化が起きてしまったら、せっかく仕入れた商品が販売できなくなってしまいます。
在庫する商品に合わせ、保管場所の条件や保管量や保管状態についてルール化することが大切です。
そのうえで、在庫数をできるだけ短時間でカウントしやすいようにする工夫も必要です。例えば、商品を色・サイズ別に保管する、売れ筋商品はアクセスしやすい場所に保管するなど、自社にあった方法を検討しましょう。
効率的に数量を把握できることで、入庫や出庫、ひいては仕入れや出荷と連携が取りやすくなります。
すみやかに出庫する
受注したら、すみやかに出庫を行いましょう。出庫が決まった商品をスピーディーに搬出することで、保管スペースが空き、新たな商品を補完することができます。資源に限りのある中小企業では、出庫から再入庫までをどれだけスムーズに行うかが、事業全体の収益にも大きく関わってきます。作業や時間の無駄をできるだけ省いて、効率的な出庫方法を考えましょう。また、出庫後は迅速に在庫数をアップデートし、次の入庫に備えることも大切です。
在庫管理の導入はどうする?効率化と仕組み化に向けて
在庫管理のメリットについては理解できても、実際は「専任の在庫担当をつける余裕がない」という企業も多いのではないでしょうか。人員や予算に限りのある中小企業が、効果的な在庫管理を行うにはどうしたら良いのでしょうか?
中小企業が在庫管理を導入する際に、下記の手順で体制をつくっていくことがおすすめです。
現状理解のステップ
現状把握
現在の在庫を把握し、データ化します。
管理基準を設ける
在庫数の上限・下限や在庫期間などの基準を設けます。自社のビジネス規模や、発注から入庫までのリードタイムや、受注量/納期などを理解し最適な基準を設けることが大切です。
プロセスを明確化する
入庫・保管・出庫で、それぞれどんな作業が必要なのか再定義します。プロセスを明確化しておくことで、業務が属人化せず、誰でも在庫管理ができるようにすることが目的です。
在庫管理体制の構築ステップ
在庫管理システムを導入
「現状理解のステップ」で把握した自社の状況に合わせて、在庫管理システムを導入します。いきなりシステムを導入するのではなく、まずは現状を理解したうえで、最適なシステムを採用することが大切です。
特に中小企業では、何もかも手作業に頼っていると、すぐに人的リソースが不足してしまいます。まずは一部でも「自動化する」ことを念頭に、簡易的なシステム導入をしてもよいでしょう。
実際の在庫状況とシステムを同期させる
システム導入の初期段階では、追加の作業が発生するため、モチベーションが上がらない人も出てくることもあるでしょう。まずは、そのような現場の負担を理解したうえで、在庫管理で得られるメリットを説明し理解を得ることが大切です。システム導入時期はどうしても作業負荷が高くなりますので、現場への配慮も欠かせません。
システムを導入したら、すみやかに実際の在庫状況と同期させ、効率的な在庫管理をスタートさせましょう。中小企業では人的リソースに限りがありますので、業務を属人化させず、誰でも行えるような仕組みづくりをしていくことも長続きするポイントになります。
まとめ
以上、中小企業だからこそ活用したい在庫管理と、そのメリットをお伝えしました。どんなビジネスでも効率化を図っていくことが、事業全体の収益アップにつながります。特に中小企業の場合は、運営を効率化しているかどうかが如実に経営状態に反映されます。在庫はただのモノではなく、企業の大切な資産です。無駄なく最大限に活用できるような管理を行っていきたいものです。
また実際に運用する際にも、誰でも在庫管理を行えるようなわかりやすい仕組みづくりをしておくことがポイントです。人的リソースに限りがある中小企業では、ひとりの人に作業負荷が偏りすぎることなく、チーム全体に分散させることで、多忙な時期も乗り切っていけるでしょう。
キャシュモでは、中小企業の経営者が直面するさまざまな経営課題へのアドバイスを提供しています。在庫管理に限らず、経営に関するお悩みはぜひキャシュモまでご相談ください。