クラウドソーシングとは、インターネット上のプラットフォームを利用して、仕事を依頼したい企業や個人(以下、発注者)が仕事を受けたい企業や個人(以下、受注者)に業務を委託するビジネス形態のことです。
クラウドソーシングという言葉自体は、群衆や大勢の人を意味するCrowdと外部からの調達を意味するSourcingを合わせた造語であり、2000年代のアメリカで生まれました。
業務の一部を外部に委託するアウトソーシングは古くから存在するビジネス形態です。クラウドソーシングもそのうちの一種ということができ、インターネットを利用しているという点に特徴があります。誰でも利用でき、一般的な外注ほどコストがかからずスピード感のある対応も可能なため、急速に利用されるようになっています。
クラウドソーシングの仕組み
クラウドソーシングは、インターネット上のプラットフォームであるクラウドソーシングサイトを利用して、発注者が依頼したい業務を提示し、応募者を集め、応募者の中から受注者を選定するという流れが一般的です。
クラウドソーシングの依頼形式
クラウドソーシングサイトで発注者が提示できる依頼には、主に以下の3つの形式があります。
コンペ(コンテスト)
ロゴやウェブサイトのデザイン、ネーミングなど、アイデア重視の依頼で利用されることが多い形式です。
発注者が依頼を提示すると、応募者はその依頼内容にあった成果物を作成し、発注者に対して提案します。発注者は提案された成果物の中から自身が気に入ったものを選ぶことになります。選ばれた提案をした応募者がその依頼の受注者となり、報酬を受け取ることができます。
タスク
簡単なデータ入力やアンケート、クチコミの収集など、比較的難易度の低い作業的な依頼で利用されることが多い形式です。発注者の提示したタスク依頼を確認し、条件に合う受注者はすぐに作業を開始し、納品、発注者が納品内容を確認し、納品を承認すると受注者に報酬が支払われます。1つの依頼に対して複数の受注者が同時に取り組むことができるため、数を集める必要がある依頼などで活用されています。
プロジェクト
ウェブサイトやアプリケーションの構築、資料や動画の作成など、依頼内容に応じた具体的な成果物やバックオフィス業務など時給制の業務依頼で利用されることが多い形式です。発注者の提示した依頼内容に、応募者が納期や見積もり、これまでの実績などを提示し、自身が受注者として選ばれるよう提案をします。発注者は提案の中から、見積もりの内容や実績、過去の評価などを勘案して受注者を選定します。受注者が選ばれると、プロジェクトが開始となり、取り決めた納期までに受注者は成果物を納品もしくは一定期間業務に従事することになります。発注者が納品物や業務実績を確認し、承認すると受注者に報酬が支払われる流れです。
クラウドソーシングの受注者
クラウドソーシングサイトで仕事を受ける側として活動している人の多くは個人です。大手クラウドソーシングサイトであるCrowdWorks(クラウドワークス)を運営する株式会社クラウドワークスが2016年に公表した資料によると、クラウドワークスを利用している人のうち97%が個人・フリーランスとなっています。
受注者は、フリーランスとして活動している人や、本業の傍で依頼を受ける副業の人が主流ですが、中には高度な技術を持ったプログラマーやデザイナー、声優、士業など、特定の分野の専門家も登録しています。そのためクラウドソーシングを利用することでさまざまなスキルや経歴、資格をもった人材を状況に応じて探すことが可能です。
クラウドソーシング利用が活発な業務ジャンル
クラウドソーシングの利用が活発な業務ジャンルは、インターネット上でやりとりが完結するものといえます。
例えば、システム開発やウェブ制作、デザイン制作、ライティング業務などです。
クラウドソーシングサイト上にはさまざまな業務ジャンルが用意されているので、自社が委託したいものがあるか確認してみると良いでしょう。
中小企業がクラウドソーシングを利用するメリット
それでは中小企業がクラウドソーシングを利用するメリットを考えてみましょう。
採用・育成にかかる手間やコストが軽減できる
まずあげられるのは、採用・育成にかかる手間やコストの削減です。
業務状況に応じて人を新たに採用することは、正規雇用でも非正規雇用でも、時間的・金銭的なコストが発生します。加えて採用活動自体や採用後に発生する教育期間にも、大なり小なり負担が発生するものです。クラウドソーシングであれば、採用活動ほどの負担もなく、既に依頼したい業務ができる人を選ぶことが可能です。育成にかかるコストも発生しないため、資金や社内の人員を本業に集中させることができます。
自社にはないスキル・経験を活用できる
次に、自社内にはないスキルや経験を活用できることです。
中小企業にとって単発的な業務のプロを継続的に雇用する余裕がある状況は少ないでしょう。それよりは自社のコア業務にかかる人員の雇用の方が経営的に重要だからです。そういった状況において、一時的に発生した、自社内の人員で対応できない専門的な業務に対しても、クラウドソーシングを利用することでスピーディに対応することができます。
必要な時に安価かつ迅速に手配できる
最後に、必要な時に業務単位で安価に発注ができるということです。
クラウドソーシングであれば、業務が発生したタイミングで、必要な人員をすぐに募集することができます。その業務が終了すれば契約も完了するため、継続的なコストが発生することがありません。かかる費用も、専門の業者に委託したり、一時的に人を採用したりするよりも安価に収まる場合が多いです。
中小企業がクラウドソーシングを利用するデメリット
一方、クラウドソーシングを利用するデメリットはなんでしょうか。
社内のノウハウ・スキルが育たない
まず、クラウドソーシングを利用すると、自社外への外注となるため、業務を通して蓄積されるノウハウやスキルが何も残らないことがあげられます。継続的に発生する業務などでは、社内のノウハウやスキルが低いままではずっと外注に頼らざるを得なくなる懸念があるでしょう。
自社のノウハウや情報流出の危険性がある
次に、クラウドソーシングを利用することで、依頼する内容によっては、自社が望むレベルの成果物にするために、自社内のノウハウや情報をある程度受注者に伝える必要性が生じます。内容によっては、自社が蓄積してきたオリジナルのノウハウや情報が流出してしまう可能性があります。
受注者の選定が困難、場合によっては負担増の可能性もある
最後に、受注者の選定が難しく、依頼する内容と受注者によっては逆に自社の手間が増える可能性があることです。クラウドソーシングで受注者として活動している人材のスキルレベルは差が大きく、期待以上の成果をあげる人もいれば、発注者側で成果物に大幅な修正をしなければならないレベルの人や依頼の途中で連絡が取れなくなる人も存在します。実績などからある程度判断できることもありますが、依頼内容によっては成果物をみるまで、十分な業務を行える受注者なのか判断できない場合もあるでしょう。
クラウドソーシング利用の流れ
クラウドソーシングは次の手順で利用することができます。
- クラウドソーシングサイトへの登録
- 発注者として業務依頼を登録
- 応募者(提案者)の中から業務を依頼する人(受注者)を選定
- 見積額分の費用を仮払い(クラウドソーシングサイトへの預託)
- 受注者から納期までに成果物の納品を受ける
- 成果物の検収
- 検収完了後、クラウドソーシングサイトから受注者へ報酬の支払い
- 発注者・受注者同士でお互いを評価
クラウドソーシングサイトは、サイトごとに特徴があり、サイトの利用しやすさや登録している受注者層も異なるため、自社の依頼に適したサイトかどうか、複数のサイトを比較してみる方が良いでしょう。
たとえば、クラウドソーシングサイトの大手であるCrowdWorks(クラウドワークス)やLancers(ランサーズ)は対象としている業務の幅も広く、発注者・受注者ともに登録者数が多いため、人気があります。また、スキルマーケットを標榜するココナラは、他のクラウドソーシングサイトと同様に依頼を出して受注者を募集することもできますが、受注者側が自身のスキルを商品として売り出す場も提供しており、その中から気に入るものを探すことも可能です。
クラウドソーシングを企業が利用するときの注意点
クラウドソーシングを効果的に活用するためには、依頼を行う前にその依頼内容や業務範囲を明確にしておくことが大切です。業務が曖昧では、受注者側の作業に支障が生じるため、認識のすり合わせや確認で余計な手間が発生することになります。曖昧な認識で作業した成果物では、期待通りのものとならない可能性も高いでしょう。
また、自社の目的通りの成果物を得るために、守るべきルールや規定などをまとめたマニュアルを作成することも有効です。特に自社独自のルールや手順がある場合などに、作業完了後の修正や確認の手間を減らすために役立ちます。
最後に、受注者とこまめにコミュニケーションを取ることも重要です。
納期通りの完成や、自社の期待するレベルの成果物を得るために、受注者とのコミュニケーションは不可欠です。こまめなやりとりを意識しておくことで、突然連絡がつかなくなったりしてもスムーズに対応することができます。円滑なコミュニケーションは、実社会での取引と同様、クラウドソーシングにおいても期待した成果をあげるために必要なことなのです。
まとめ
今回はクラウドソーシングの活用について紹介しました。
クラウドソーシングは、自社の状況に応じて、臨機応変かつ安価に人材を確保できるメリットの多い手段です。しかし、インターネットを介した取引という点で通常の外注にはないデメリットも存在します。
上手に利用するには、依頼したい内容を明確にし、その依頼に適した受注者を見極めることが大切です。
特定の業務ジャンルに特化したクラウドソーシングサイトが登場するなど、クラウドソーシングはますます活発になっていますので、一度利用を検討してみはいかがでしょうか。
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