法人を設立するにあたり、必ず必要になるもののひとつに定款(ていかん)があります。
定款とは
定款は、法人を組織として運営していく上での大切な決まりごとをまとめたもので、1法人に1つを定める必要があります。
その会社がどんな事業を行うのか、会社名は何か、どこにあるのか、責任者は誰かなどの、会社に関する基本事項をはじめ、定款に記される内容は会社法により定められています。
法人設立においては、公証人による定款の認証と法人登記の手続きの際に定款が必要です。
法人設立までの流れとしては、まず定款を作成し、株式会社では定款の認証を受け、法人登記手続きを行うことで法人設立が完了します。
定款の認証とは
定款の認証とは、定款が正しい手続きにて作成された法的に有効なものであることを公的に証明する手続きで、株式会社を作る際に必要です。
合同会社の場合、「定款」そのものは必要ですが、「定款の認証」は不要です。
定款の認証は本社の所在地と同じ都道府県内の公証役場で行い、認証された定款には法律的な効力が生じます。
定款を認証する2通りの方法
定款の認証方法には紙認証と電子認証の2通りがあります。
紙認証の際に用意するもの
認証は公証役場で行います。
手続きの際に持参する定款は、公証役場に提出するもの、設立登記のために法務局に提出するもの、会社で保管するものの全3通です。
全ての定款に発起人全員の実印を押印、また発行から3ヶ月以内の発起人全員の印鑑証明書を用意します。
(この定款認証の際に提出する印鑑証明書は、原本還付の手続きを行えば返却してもらえるので、次に行う設立登記の手続きの際にも使えます。)
紙認証の場合、収入印紙4万円分が必要です。
収入印紙は認証が確定した後で貼付し、発起人の実印(代理人が行う場合は代理人の実印)で消印します。
また、定款認証費用として現金5万円、謄本交付手数料として250円×ページ数分が必要です。
代理人が代わりに手続きに行く場合には、発起人の実印が押印された委任状が必要です。
電子認証はお得?
電子認証のメリットは紙認証で掛かる収入印紙代4万円が不要なことです。
これだけ聞くと電子認証の方がお得なように感じるかもしれませんが、そのために必要な機器や有料ソフトを購入して行うとなると結局は収入印紙代4万円を超える負担に加え、時間と手間もかかってきます。
ここは専門家に任せることで、機材を持っていなくても電子認証を行うことが可能となり、また、時間の節約、手間を省くことにもつながります。
定款が必要な2つの理由
定款はなぜ、必要なのでしょうか?
理由は2つあります。
法人に人格を持たせるため
例えば人が憲法により人としての権利、人権を与えられているように、定款が認証され法的な効力を持つことで、法人も人格を持つ一個人のような権利を持つことができます。
会社を守るため
定款でルールを作っておくことで、内外の様々なトラブルから会社を守ることができます。
経営トラブルから会社を守る
認証された定款は法的な効力を持つ、いわば会社の憲法のようなものですので、たとえ社長や重役であっても違反行為は許されません。
金銭トラブルから会社を守る
認証された定款は会社内部(経営者間)、会社と株主、会社と取引先などで起こりうる金銭トラブルを事前に防止する効果があります。
金銭トラブルが発生した場合の責任の所在、出資額などを明記しておくことで、トラブルを最小限にとどめ、対応しやすくします。
3段階にレベル分けされた定款の記載事項
法人登記をするにあたって必要な記載事項については会社法910条で定められています。
定款に必要な記載事項は、その強制度合いにより3段階にわけられ、強制度合が高い方から順に、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項となります。
全ての記載事項に関して、いったん定款に定めた事柄の変更を行うには、株主総会での定款変更決議が必要です。
絶対的記載事項
以下の絶対的記載事項は記載がないと定款自体が無効となってしまうほど重要なもので、定款には必ず記載しなければなりません。
事業の目的
会社が行える事業は、定款に記載しているものに限られます。
定款に記載していなければ事業として行うことはできないため、設立時には行わなくても、将来的に行う可能性のある事業内容があれば記載しておきましょう。
商号
商号とは会社名のことで、例えば株式会社であれば株式会社、合同会社であれば合同会社と、商号中に入れる必要があります。
本店の所在地
定款には法人本社の所在地を記載しなければなりません。
所在地は市区町村までとなる最小行政区画までを記載します。
賃貸契約の住所は、賃貸契約書を確認して法人不可の記載がなければ、本店の所在地として定めることができます。
設立に際して出資される財産価額又はその最低額
株式会社を設立する際には、株数でなく、出資する金額、もしくは出資する最低額を記載します。
会社設立後には出資額に応じて株式が発行され、発起人は株主として会社の意思決定に関与していくことになります。
発起人の氏名、住所
法人を設立するには、発起人が住所及び氏名を記載、押印しなければならないと会社法26条で定められています。
発起人とは、法人設立の際に資本金を出資し、法人の重要事項を決定、定款を作成、認証するなどの会社設立の手続きを実際に行う人のことをいいます。
発行可能株式総数
発行可能株式総数は絶対的記載事項ではありませんが、会社法37条に株式会社成立までに発行可能株式総数を定款で定めなければならないと明記されているので記載をしましょう。
相対的記載事項
相対的記載事項は、金銭トラブルが起きやすい事柄に備えるために記載します。
以下に該当するものは定款への記載が必要です。
記載がないと法律的に無効になってしまうので、注意しましょう。
現物出資がある場合
例えば土地や車などの現物出資がある場合、その出資者の名前、当該財産とその価格、その者に対して割り当てる設立時発行株式の数を記載します。
財産引受がある場合
法人設立成功の際に、会社の財産を譲り受ける財産引受がある場合、成立後に譲り受けると約束した財産とその価格や譲り受ける人の名前を記載します。
発起人の報酬・特別利益がある場合
法人設立成功の際に、発起人が受ける報酬や特別利益がある場合、その報酬・利益及びその発起人の氏名又は名称を記載します。
設立費用がある場合
設立後に法人が負担する例外的な設立に関する費用がある場合はその旨を記載します。
任意的記載事項
任意的記載事項は、定款に記載してもしなくてもいい事項で、記載しないことで設立時に困ることはありません。
ただし、各会社が自由にルールを設計できるようにとの会社法の配慮から、定款に記載することで有効となる事項もあるので、任意的記載事項の記載も適切に行いたいところです。
株主総会に関する事項
株主総会の開催時期や、招集者、議長を誰にするかなどをあらかじめ決めておくことができます。
事業年度
事業年度とは会社の財務状況などを確認するために一定の範囲で区切った期間をいいます。
個人では1月1日〜12月31日までの1年間と決められていますが、法人の場合、一般的には4月1日〜3月31日などの会計期間となります。1年半以内まで延長可能なことを除いて、1年を越えない範囲とされています。
役員の員数
会社法により取締役1名は必須で、それ以外の役員の員数、例えば更なる取締役や監査役、会計参与などに関しては基本的には自由に決められます。
きっちりと記載せずとも、「当法人の取締役は1名以上とする」と幅を持たせた記載でも大丈夫です。
役員報酬の決め方
役員報酬を定款に記載することもできますが、変更の際には定款変更の必要があり、手間ですので、定款に金額を記載することは通常ありません。
定款に定めがない場合での役員報酬は、株主総会の決議で決定することになります。
株式に関する事項
名義書き換えや株式取扱事務手続き、株券に関する事項について記載できます。
まとめ
本記事では、定款について解説しました。
この記事が、定款の作成や認証など、スムーズに手続きを進めていくことの一助となれば嬉しく思います。
とはいえ、決めるべきことは多岐に渡り、その一つ一つもそれぞれ重要で簡単に決められないことばかりと推察します。
更に手続きに関してもどの方法がベストなのか…などと悩まれる方も少なくないのではないでしょうか。
キャシュモグループでは、税理士・社労士・財務コンサルがワンチームで会社設立のお手伝いをします。
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