近年IoTという言葉がよく用いられるようになりました。
スマートスピーカーに始まり、スマート家電やスマート住宅という言葉も最近では違和感がなくなってきました。
例えば、エアコンであれば外出先でスマートフォンから電源を入れておき、帰宅した時にはすでに適温にしておくこともできるようになります。
エアコンだけではなくこれが照明・調理器具・お風呂・自宅のカギなどでも同様のことができるようになると、簡易的なスマート住宅にすることができます。
そのようなIoTは、従来の〈モノ〉にインターネットをプラスする仕組みなので、価格も高過ぎることはなく、生活に取り入れる ハードルも高くないと言われています。
しかし、それをビジネス現場に落とし込むのはイメージがしづらいかもしれません。
今回はそのようなIoTを中小企業向けに活用する方法について説明していきます 。
IoTとは何か
定義
IoTとはInternet of Thingsの略称であり、和訳では〈モノのインターネット〉と呼ばれています。
主に2016年頃から普及していたこともあり、その年に制定された法律の一部では「インターネット・オブ・シングスの実現」を「インターネットに多様かつ多数の物が接続され、及びそれらの物から送信され、又はそれらの物に送信される大量の情報の円滑な流通が国民生活及び経済活動の基盤となる社会の実現」としています。
つまり、インターネットに接続して、様々な機能を使えるようにしますという意味です。
では、インターネットを介してどのようなことが出来るかを考えてみます。
IoTで出来きること4つ
モノを操作する
一番イメージがしやすく、導入事例が多くあります。
スマート照明では手元のスマートフォンで操作をして照明のオンオフを操作、照明の強弱や色なども変更することが出来ます。
他のデバイスから直接操作(命令)をすることでモノを操作することが出来ます。
モノの状態を確認する
スマートロックなどはスマートフォンで開閉ができるだけではなく、現在のカギがどのような状態なのかを確認することが出来ます。
また、使用者を登録しておけば誰が家にいるか確認することが出来ます。
モノの変化を検知する
人感センサーを搭載した防犯カメラなどが該当します。
センサーが反応すればカメラのオンオフが切り替えられ、その映像はインターネットを通じてリアルタイムで確認することもできます。
モノと通信する
個人で所有するIoTデバイスとしては早期に導入されたのがスマートスピーカーになります。
音声認識からほかのスマート家電と通信して操作する等スピーカー機能以上の役割を担うことが出来ます。
他にもモノと通信するデバイスは多機能な傾向があるとされています。
事業別のIoT
既に生活に取り込まれているIoTではありますが、近年では事業に使用される事例も数多くあります。
「令和元年版 情報通信白書」によると、日本のIoT導入状況は全体で23.1%。IoTを利用する企業に限れば20.6%が活用しているとされています。
国も引き続きIoTの推進をしていますので、毎年多くの事業について報告書が出されています。こちらでは各事業でどのような活用方法があるかを説明していきます。
製造業
導入箇所は主に製造管理のデータ化、機械状態の自動検知、検品作業のシステム化が挙げられます。
上記をIoT化することで効率的なデータ管理、人的コストの削減が図れます。特に製造業は機械による生産が主になりますので、一からの導入ではなく、現在ある施設にインターネットを加えることで生産性の向上が図られています。
医療業
医療業界ではIoTはIoMT(Internet of Medical Things)とも呼ばれています。
慢性的な人員不足、遠隔地への医療ケア不足の問題を抱えている中で、バンド型のデバイスを使用し、心拍数や血圧測定の実施や、AIも利用した自動問診システムにより、遠隔地でも問診できるようになりました。
物流業
現在の物流業ではリアルタイムで配送状況を確認できるようになっています。
腕時計型やスマートフォン型のデバイスにより、配送状況の登録や、GPSによるドライバー情報の見える化がされています。
加えて、倉庫内ではBluetooth搭載のスキャナーや画像検品可能なカメラを用いることで、人為的ミスを減少させています。
農業
IoTの中でも比較的早い段階で期待されていたのが農業になります。
特にドローンを使用した農薬の散布等はIoTの先駆けとして話題になりました。
現在でも農林水産省ではスマート農業を推進しており、高齢化が進んでいる農業界ではロボット技術も合わせたIoT活用が図られています。
中小企業にとってのIoT
現在におけるIoTにおけるビジネスチャンスは主に2つに分かれているとされています。
1つ目は業務をスマート化する目的でIoTを推進し、事業の拡大や生産性向上、コスト削減を目指す。
2つ目は現在の商品やサービスをIoT化することで競合他社と差別化をする。
前者は中小企業こそ導入を考える必要があります。
中長期的に見て人的コストとIoTシステム導入を比較してみると、国内の平均給与で考えた場合、年収461万円。企業が支払う費用は年間500万円弱になります。
それに対して、IoTシステムを導入する場合、規模により値段は上下しますが、製造データの見える化150万円、検品作業などのエラーチェック350万円程と同価格程度でIoTを実現することが出来ます。
IoTシステムは、初期費用支払い後メンテナンス費用のみになりますが、雇用の場合は年間でのコストとなります。
勿論、人的リソースも必要になりますが、経営する事業規模によってはIoTシステムの導入を優先させることも必要です。
後者はややベンチャーの傾向がありますが、IoT化がまだ進んでいない国内ではビジネスチャンスは多くあります。
例えば、今話題になっている取付型のスマートロックなどはBluetoothにより、スマートフォンから〈開ける・閉じる〉といった動きを指示できる機能が備わっています。
従来のカギの機能であるドアのカギを〈開ける・閉める〉をスマートフォンからできるようにIoT化したアイデア商品になります。
このように、今ある商品にデバイスから簡単な操作ができるようになることがIoT化となり、アイデア次第でビジネスチャンスを広げることが出来る分野になります。
中小企業はIoTをどのように考えるか
ここまでIoTを使用して、各業界でも生産性向上やコスト削減が図れる事例を紹介してきました。また、中小企業におけるIoTの導入と、商品やサービスへの活用についても述べました。
上記ではいくつかの業界を例にあげましたが、最近ではあらゆる業界でIoTが利用され、特に金融・小売・建設・マスコミといった業界では改善が著しく、より良い商品やサービスが提供されるようになってきました。
IoTは大企業と中小企業の垣根なく検討される分野であり、IoTを導入することで生産性を上げ、商品の質向上につなげること、そして現在の商品・サービスをIoT化することでより利便性を高めていくことが今後必要になってきます。