中小企業経営者が知っておくべき色彩理論の基礎知識

経営お役立ち情報

色は視覚的なコミュニケーションにおいて、強力なツールです。色には、人の感情、気分、行動に影響を与える力があります。一見、色とビジネスは無関係にも思えますが、実は商品、広告、プレゼンテーション、ブランドカラーなど、ビジネスでも色が使われる場面は多岐に渡ります。
色が持つ力を理論的に理解し、十分に活用することで、ビジネスとその先にいる人々をうまく動かすツールにもなり得るのです。

色が人の心理や行動に及ぼす影響とは?色をどのようにビジネスに取り入れれば効果的なのか?今回は、ビジネスに活用できる色彩理論について基礎からわかりやすく解説していきます。

そもそも「色」とは何なのか?

色は、物体に当たった光の波長により、目が識別し判断するものです。つまり、物体が光を反射して、それが色として見えているのです。光のない真っ暗な場所では物体は光を反射しないので、色は見えませんし、物体の形も判別できなくなります。つまり、色は、光と目と物体の3つが揃って初めて生まれるといえます。

光を十分に受けると物体の色が見えます。たとえば赤いりんごは、受けた光のうち「赤」を感じさせる波長だけを反射し、それ以外は物体が吸収しています。このようにして私たちの目に届いた反射光が「色」の仕組みです。光と目と物体の3つが揃って生まれる色ですが、そのどれかひとつでも条件が変わると、異なる色になります。

このように、色とは、自身の目を通して感じる主観的な体験であるため、色が及ぼす心理的影響は切っても切れない関係にあります。また、その心理効果は科学的にも明らかにされています。

地球上に存在するすべての色は「光の三原色」(赤、青、緑の3色)の組み合わせでできています。その組み合わせによって「寒色・暖色」、「興奮色・鎮静色」、「柔らかい色・堅い色」、「膨張色・収縮色」など色々なカラーグループが存在しています。一度でも聞いたことのあるカラーグループがあるのではないでしょうか?色によってイメージを表現したり、人の気分を変えたり、時には健康に影響を与えることもあるのです。

また、寒色・暖色などの普遍的なカラーグループの他に、「流行色」のように、その時代の人々の気分を反映し、その年に発表される商品や広告などに戦略的に取り入れられる色もあります。

このように色が人に与える影響力は幅広く、色を使いこなすことによって、人の感情や気分、行動を左右することもできてしまうのです。デザイナーでなくとも、ビジネスの場面における適切な色選びはとても重要といえます。

色をロジックで考える。「色彩理論」とは

色はアートやデザインの要素として思われがちですが、「色彩理論」を使うと、色を使った特定の知覚の作り方がわかります。また、色の組み合わせ(=配色)の機能についても理解することができます。

複数の色を近くに置くと、色と色が影響し合います。色の組み合わせによって「調和がとれた」「とれない」配色となり、それが人の認識にさまざまな影響を及ぼすのです。例えば、色数が多すぎるまとまりのない配色は、視覚的なバランスがとれずに、見る人が混乱してしまいます。

ここでは、効果的な配色を選ぶ際に参考となる色彩理論の基礎を紹介していきます。

色の要素を理解する

「色」は、3つの要素で成り立っています。

色相:赤・青・緑といった色みのこと。色合いを表している。
明度:色の明るさの度合いのこと。高い=明るい色(白に近づく)、低い=暗い色(黒に近づく)
彩度:色の鮮やかさの度合いのこと。高い=ビビッドで鮮やかな色、低い=濁った色・無彩色

色相 × 明度 × 彩度を組み合わせることで、色ができあがります。
例えば色相は、七色の虹で表現されるようなグラデーションで表すこともできます。

配色の理論

それでは、色を複数使う時に、どうすれば良い色の組み合わせができるのでしょうか?
アメリカの色彩学者、ジャッド氏が提唱した「色彩調和論」を紐解くと、きれいな色の組み合わせができる原理がわかりやすく理解できます。

類似性の原理

「共通性のある色どうしは調和する」というものです。例えば、同じ色で明度や彩度だけを変えた配色や、同じ明度・彩度で統一した異なる色の配色などです。明度と彩度が似ている色を集めてグループ化したものを「トーン」と呼び、このトーンが近い色どうしは調和するといわれます。

明瞭性の原理

類似性とは逆に、「色相・明度の差が大きい、明快でコントラストの激しい色どうしは調和する」というものです。イタリアやフランス国旗のような3色配色や、非常口・危険の看板で見られる明快なコントラストの2色配色などがこれにあたります。

秩序の原理

これは「ある一定の法則(秩序)によって選ばれた色どうしは調和する」というものです。色相を環状に配置したものを色相観と呼ぶのですが、このように規則に従って配置された色どうしは調和するという原理です。グラデーションによる配色も、この原理を利用したものです。

なじみの原理

「自然界にあるような、よく見慣れた色どうしは調和する」という原理です。例えば、自然に生息している木や葉っぱ、花で見られる配色や、山や海などの景色から見つかる色の配色もこれに当てはまります。

これは数々ある色彩理論の一例ですが、このような色の原理を活用することで、調和がとれた色の組み合わせを作り出すことができるのです。

マーケティングやブランディングにも。ビジネスに活用できる色彩理論

色彩理論を応用すれば、ブランドの「個性」に適した配色を作ることもできます。また、色を活用してマーケティングを行えば、ユーザーに特定の行動を起こすきっかけを作ることもできます。

例えば、色が購入の決定に影響を与えた事例があります。同じ条件下でWebサイト上に作られた緑と赤の2色のボタン。それぞれのコンバージョン率を調査したところ、赤いボタンの方がコンバージョン率が21%高いという結果がでました。これはボタンの色を変えるだけで、コンバージョン率を高めることができるということを示しています。

このように、色彩理論と心理学には深いつながりがあります。色は人間の脳に強い心理的な影響を与えるため、見た人にさまざまな意味や感情を生み出すのです。色が人にもたらす影響を理解することは、効果的なビジネス戦略を立てることにも繋がります。代表的な色が人に与える心理的影響や、色の心理効果を利用したビジネスへの活用例を紹介していきます。

赤はとても高い温度を示す色で、強調したい、または注意を向けたい場合に適しています。ファーストフードのロゴやセールのお知らなどでよく使われます。

オレンジ

オレンジはポジティブな感情の色です。また商品の割安感も示すことができるので、お買い得商品を目立たせるのにも適しています。

黄は明るい陽気なイメージを表します。黒と組み合わせると、より注意を惹きつけることで知られています。(タクシーや工事現場の標識など)

緑は自然を連想させ、安全性や成功を表現するのにも適しています。自然との関連が深いオーガニック食品のブランドや金融関係でもよく使われています。

青は快適さ、信頼、安全性などを表す色です。あらゆる業界の企業がコーポレートカラーとしても使っている、誰にでも好かれやすい色です。

紫は高貴なイメージを示したい場面でよく使われます。感性を鋭くさせるともいわれ、クリエイティブな意味を持たせたい場面でも活用できます。

黒は重厚感、高級感、圧力を与える効果があります。高級ブランドで頻繁に使われる色でもあります。

白は清潔で純真なイメージを与える色です。もっとも光を通す色でもあり、健康を示す色でもあります。医療でもよく使われています。

まとめ

以上、色彩理論の基礎を解説しました。アートやデザインの一部のような印象が強い「色」ですが、その原理や心理効果も理解すると、ビジネスを成長させる大切な要素としての可能性を感じられたのではないかと思います。

中小企業は、同じ市場に同じような規模の競合他社が多く存在し、より競争がし烈といわれます。施策にかけられる費用や人員が限られているからこそ、このような色彩理論をうまく活用しながら、効果的なマーケティングやブランディングを行い、他社との差別化をしていきたいものです。自身がデザインなどを直接行うわけでなくとも、色がどのようにビジネスに活用できるかという知識として持っておくことで、今まで曖昧だったデザイナーとの会話がより生産的になることでしょう。