・顧客がなにを求めているのか知りたい
・どうすれば自社を認知してもらえるのだろうか
・開発中の製品が、市場のニーズにあっているか不安
このような悩みを解決できる手法が、マーケティングリサーチです。
ご紹介する「マーケティングリサーチの手法と活用方法」を実践すれば、市場のニーズを的確に把握することが可能です。
この手法は大手企業も積極的に取り入れており、実践する価値は十分にあります。
記事後半では実際の成功事例も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
マーケティングリサーチとはなにか
「マーケティングリサーチ」とは、企業が抱えるマーケティング課題に対して、さまざまなデータを収集・分析することでアプローチする方法です。
消費者の詳細なニーズを把握できることで、より満足度の高いマーケティングにつながります。
マーケティングリサーチを行うメリット
マーケティングリサーチを行うメリットは以下の3つです。
市場ニーズを把握できる
収集したデータに基づいて開発ができる
事業失敗のリスクを低減できる
ニーズを把握したうえで開発・プロモーションを行うことができるため、無駄なコストの削減にもつながります。
マーケティングリサーチが必要な場面
マーケティングリサーチが必要になるのは、以下の場面です。
市場のシェアを拡大したい
特定の製品・サービスの売上を増加させたい
新たな市場を開拓したい
上記の課題を解決するために、非常に有効な手段といえます。
「製品の売上が良くないのだが、どこを改善すればいいのだろう」。
このような問題に悩まれている方は、一度検討してみてはいかがでしょうか。
マーケティングリサーチの手法
この章から、マーケティングリサーチの手法について細かく解説していきます。
手法は大きくわけて、「アドホック調査」「パネル調査」の2つがあります。
それぞれ目的にあわせて使い分けるとよいでしょう。
アドホック調査
アドホック調査とは、特定のデータを収集するために、必要な都度行われる調査方法です。
アドホックとは「その場限りの」という意味を持ち、単発調査ともよばれます。
基本的にマーケティングリサーチの手法として、企業はこちらの方法を採用するケースが多い傾向にあります。
主なメリットは、その都度調査の内容を調整できること。
対象者への設問やサンプルなどを、目的にあったものに変更しやすく、求めているデータを的確に収集することが可能です。
アドホック調査は収集したいデータによって、「定量調査」と「定性調査」の2つに分けられます。
それぞれの主なリサーチ方法も紹介しますので、調査の実施を考える際の参考にしてください。
定量調査
定量調査とは、シェア率や認知度など「数値」をデータとして集計する方法です。
データが数値化できるため、結果をひと目で理解しやすいことが特徴のひとつです。
メリットは他にもあります。
結果を統計的に分析できる
調査方法のバリエーションが豊富
といったことが挙げられます。
調査方法について、以下の5つを紹介します。
インターネット調査
インターネット調査とは、文字どおりネット上でリサーチを行う方法です。
対象者に、ネット上でアンケートに回答してもらい、データを収集します。
現在定量調査の主流として利用されており、実施のメリットも多い方法です。
費用が安くすむ
短期間でデータを収集できる
幅広く回答を集めることができる
回答者側も手軽に行える
画像や動画を使い、サンプルを紹介しやすい
メリットの多いインターネット調査ですが、一方でデメリットも存在します。
高齢者や未就学児など、ネットを利用しづらい層がいる
回答者が、想定している人物とは異なる可能性(なりすまし)がある
製品やサービスを実際手に取って体験できない
情報が流出する可能性がある
インターネット調査はこれらのデメリットを考慮したうえで、実施することが大切です。
会場調査
会場調査とは、対象者を一定数会場に集めてアンケートを行う方法です。
メリットは、
調査員が立ち会うことで、機密性の高い情報も取り扱える
実際に製品やサービスを体験してもらえる
回答者と直接話すことで、深掘りした質問をすることができる
以上の3つです。
一方会場調査のデメリットとして、
実施コストが比較的高め
データを集めるのに時間がかかる
これらに注意する必要があります。
訪問調査
訪問調査は、調査員が対象者の自宅や職場に訪問して行う方法です。
対面で行うため、実際にサービスを利用してもらい、直接感想をいただくことができます。
しかし、実施するためには調査員を派遣するコストと時間がかかってしまいます。
訪問調査は、小さな規模のデータ収集に向いているといえます。
郵送調査
郵送調査は、対象者にアンケートを郵送し、回答してもらう方法です。
アンケートは回答を記入するだけなので、幅広い層を対象に行うことができます。
ホームユーステスト
ホームユーステストとは、対象者の自宅に商品を郵送し、実際に使用してもらう方法です。
サプリメントやスキンケア製品など、一定期間使用したデータが欲しい場合に有効です。
対象者が、想定していた方法とは異なる使用をされる場合もあるため、思わぬデータが計測できる可能性もあります。
定性調査
定性調査とは、数字としてデータを集める定量調査とは違い、消費者の行動や気持ちといった、数値化しづらい情報を得るために行われます。
その最大のメリットは、数値データからは読み取れない情報を得られること。
消費者の分析において、統計的な数値のみを頼りにしてはいけません。
消費者を本質的に理解するため、また正しいマーケティングを行うために、定性調査は必要なのです。
定性調査の主な方法として、以下の2つが挙げられます。
デプスインタビュー
デプスインタビューとは、調査員と対象者の1対1で行われるインタビュー形式の方法です。
そのメリットは、
対象者の情報について深く知ることができる
1対1でしか話せない内容も聞くことができる
が挙げられます。
対面形式でしか手に入らない貴重な情報を得られる一方、調査に時間を要するデメリットがあります。
グループインタビュー
グループインタビューは、司会進行役の調査員と数人の対象者が、特定のテーマについて話し合う形式です。
メリットは、
さまざまな意見を一度に集めることができる
活発な議論になれば対象者のさらなる発言を引き出せる
以上があります。
デメリットとしては、
参加者全員に深掘りした質問をしづらい
参加者が周囲に遠慮して発言できない可能性がある
活発な議論を進めるため、司会にある程度技量が必要
があります。
パネル調査
ここまで紹介したアドホック調査は、単発で行うリサーチになります。
一方パネル調査とは、調査対象者を固定(パネル化)し、半年から数年にかけて継続して行う調査です。
同じ対象者に、同じ調査を長期間行うため、時間の経過による変化をデータとして収集することが可能です。
他にも、
精度の高い情報が得られる
調査内容が固定化されるため、その都度質問するコストを省ける
毎回調査対象者を募集する必要がない
といったメリットがあります。
一方デメリットも存在します。
長期間の調査が必要となる
調査対象者の負担が大きく、離脱される可能性がある
マーケティングリサーチの流れ
この章では、マーケティングリサーチの一連の流れについて紹介します。
大きく4つの流れに分けることができるので、ひとつずつ見ていきましょう。
企画設計
まず初めに行うことが、企画設計です。
どんな悩みを解決したいのか、まずはっきりとさせましょう。
調査の目的を明確にしておかなければ、この後の流れも上手くいきません。
企画設計はマーケティングリサーチの骨組みともいえます。
「なにが問題」で、「なにを知りたい」のか、確認することが重要です。
調査票作成と実施
目的を確認できたら、次に調査票を作成しましょう。
調査の手法
対象地域および対象者
調査項目
調査時期
調査費用
これらの項目を記入していきます。
調査に必要な準備が完了したら、マーケティングリサーチを実施します。
分析
実施した結果を集計し、分析を行いましょう。
平均値や年齢別に比較した数値を算出し、データ化します。
評価
分析結果をもとに、マーケティングリサーチの評価を行います。
調査の目的は達成できたか
他に調査するべき項目はなかったか
以上の振り返りを行い、調査終了です。
マーケティングリサーチの活用方法
マーケティングリサーチの活用方法はさまざまです。
メリットにもつながる内容ですが、もう一度おさらいします。
売上の改善
市場の拡大・開拓
消費者ニーズの把握
失敗リスクの軽減
これらをより具体的に理解するため、実際の活用事例についてご紹介します。
マーケティングリサーチの活用事例
アサヒビール社「ドライゼロ」の開発
現在、ノンアルコールビールの代表的な商品として、アサヒビールから販売されている「ドライゼロ」。
実はその前に発売された「ダブルゼロ」という商品が売上を伸ばせなかったため、そのリニューアル版として開発されたのがドライゼロです。
ダブルゼロが発売された当初、サントリーの「オールフリー」、キリンビールの「キリンフリー」が市場の大多数を占めており、割って入ることができませんでした。
ダブルゼロの失敗を挽回するため、マーケティングリサーチを行い、ドライゼロは結果として市場シェア率1位(2020年3月時点)を獲得することができたのです。
具体的な手法としては、1000人規模の対象者にアンケートを行い、ノンアルコールビールを飲む理由や頻度について調査しました。
その結果、当初想定していた「ノンアルコール飲料は妊婦やドライバーが飲む」という考えがくつがえることになります。
調査の結果、ノンアルコールビールを飲む9割が、普段はビールを愛飲している層だったことが判明したのです。
「休肝日を作りたい」
「本物の味に近いノンアルコールビールが飲みたい」
アサヒビールは上記の意見を取り入れ、「本格的な味を追求した」ノンアルコールビールの開発に着手。
ターゲットをビール愛飲者に設定し、パッケージもスーパードライに近いデザインを採用しました。
その結果、「健康的」や「女性向け」というコンセプトを打ち出していた他社との差別化に成功し、売上アップに至ったのです。
顧客の声を聞き、事業に反映する「メルカリ」
メルカリといえば、2013年からフリマアプリの一角を担ってきた企業です。
2016年には日米合計6000万ダウンロードを達成したメルカリが、サービスを展開するうえで重要視していることがあります。
それは、「ユーザーの利便性」です。
ユーザー自らが出品・購入者とのやり取りまで行うメルカリは、サービスの使いやすさが非常に重要。
使いやすいサービスをめざし、常にリサーチを行なっています。
リサーチの一例として、「出品の際、説明文になにを記載すればいいかわからない」という問題に対する事例を紹介します。
メルカリはこの問題を解決するため、出品経験がある人を対象としたデプスインタビューを行いました。
1人あたり2時間ものインタビューを行い、実際に操作してもらった感想を聞き出すという内容です。
その結果、問題の解決につながり、ひいてはより良いシステムの構築に成功しました。
メルカリのマーケティング担当者は、「調査とは、ユーザーと自分との感覚のずれを埋める機会」であると語っています。
ユーザーが求めているものと、自社がめざすゴールは本当に一致しているのか。
確認の意味も込めて、マーケティングリサーチは有効な手段であるといえます。
マーケティングリサーチの手法と活用方法まとめ
以上、マーケティングリサーチの手法と活用方法について解説しました。
さまざまな手法や活用事例がありますが、根底には必ず「ユーザーへの理解」がなければいけません。
アサヒビールやメルカリの事例からもわかるように、常に「ユーザー目線」でマーケティングを行う。
この考え方を持つことが、マーケティングリサーチで最も重要な点ではないでしょうか。
ぜひ本記事を参考にして、より良いマーケティング活動に活用していきましょう。