ビジネスをしていると必ず直面する課題の一つに、「どうやって顧客管理をするか」というものがあります。
スーパーやコンビニなどの小売業のように顧客が把握しづらいビジネスもありますが、多くのビジネスでは顧客、もしくは見込み顧客を把握することはとても重要です。近年ではより細かい顧客の分析が必要になっており、その管理は複雑さを増しています。数人〜数十人程度なら経営者や営業マンの記憶力で対応可能かもしれませんが、多くの顧客との取引を行う場合は現実的ではありません。
今回はその顧客管理方法について、基本的な情報から有効なツール、ベストな管理方法の選び方までご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
どうやって顧客管理をするべきなのか
「このお客さんってどういう方だったか?」と思い出せなかったり、「社内で顧客情報が共有しきれていない」という悩みはありませんか。ビジネスを継続していれば日々顧客は増えていきます。人間の記憶力には限界がありますし、日々の業務に追われながら、いつ必要になるかわからない顧客情報を共有するのは至難の業です。
このような悩み、問題が出るのもある意味当たり前と言えます。解決するためのツールや方法を見ていきましょう。
そもそも顧客管理とは?
顧客管理と言われてまず思いつくのは、氏名や住所などを記載した「顧客リスト」ではないでしょうか。もちろん顧客リストは顧客管理に必要なものですが、顧客管理の本質ではありません。
顧客管理とはそういった基本情報を押さえるだけでなく、「顧客との関係性」を管理していくものになります。購買履歴やマーケティング活動への反応、価格感応度、性格その他に至るまでできるだけ顧客の特性を把握し、ベストな関係性を築いていきます。
飲食店の顧客を例にとっても、話しかけて欲しい人、放っておいて欲しい人、高いワインを頼む可能性がある人、お酒を飲まない人などによってアプローチの仕方を変える必要があるのは明白です。そして、たとえスタッフが変わったとしても顧客ごとにベストな対応を行うためにも顧客管理は重要です。
顧客管理ツールを使うのが一般的
経営者自らが店頭に立つ小規模な飲食店なら経営者の記憶でカバーできる場合もありますが、規模が大きくなれば個人の記憶力に頼るには限界があります。そこで登場するのが顧客管理ツールです。
以前であればノートなどに記録していくのが主流でした。病院のお医者さんが書いているカルテもノートへの記録に近いものと言えるでしょう。しかし、現代のビジネスはスピードも速く、扱う情報量も多いためITツールを使うのが一般的です。
各業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)が求められている理由の一つでもありますが、顧客管理はITツールの得意分野でもあります。ITツール、それも自社に適切なツールを選ぶことは必須と言えるでしょう。
顧客管理ツール4選
主な顧客管理のITツールとしては4つ挙げることが出来ます。
・エクセル
・CRM
・SFA
・MA
聞き馴染みのない言葉もあるかもしれませんが、一つずつ解説していきます。
エクセル
こちらはおなじみ、マイクロソフト社の表計算ソフトです。
近年ではGoogleスプレッドシートや他社製の表計算ソフトも良く使われるようになりましたが、そういった表計算ソフトの総称としてここでは「エクセル」と言います。エクセルで顧客管理を行う最大のメリットは追加コストが不要であることです。マイクロソフトのエクセルは有料ではありますが、大抵の場合他の業務で使うために経営者や社員のパソコンに入っていますし、もしない場合でもGoogleスプレッドシート等無料で使えるツールもあります。既に何かしらの表計算ソフトを使っているケースが大半でしょう。
導入コストもなく、使い方も分かっているエクセルを使うのは「始めやすい」という点で優れています。
一方デメリットは、「そもそも顧客管理のために作られたツールではない」ということです。表計算ソフトはデータ分析や管理をするための汎用ツールです。場合によっては書類作成にも使われるなど、何でも出来るツールではありますが、顧客管理に特化した機能が用意されているわけではありません。より高度な顧客管理をするためには、顧客管理専用のツールを使う必要が出て来ます。
CRM
CRMとはCustomer Relationship Managementの略です。
この言葉自体は「顧客との関係性のマネージメント」という意味ですが、この場合はそのために使うシステムを指します。顧客管理に特化したシステムと考えれば良いでしょう。
メリットとしては、
・属人化していた情報を一元化出来る
・部門間で情報を共有しやすい
ことが挙げられ、結果として顧客満足度の向上や業務効率化に繋がり、また新たな戦略を立てるときの根拠情報として活用しやすくなります。また、エクセルなどの手作業では発生しがちなデータの重複などのミスやエラーをシステム的に防ぐことができます。
デメリットは、ほとんどのシステムが有料であるため導入コストが掛かることです。また一般的に使われているツールでは無いので、使い方を習得する必要があり、社内にうまく定着しない可能性も考えられます。
SFA
SFAはSales Force Automationの略で、日本語では営業支援システムと呼ばれます。Automationという言葉がある通り、営業部門の業務を自動化、支援するシステムのことを指します。
SFAのメリットは、営業活動の効率化と生産性の向上です。名刺を見ながら情報をエクセルに入力したり、どんな顧客だったか思い出すために時間を掛ける必要がなくなり、本来の営業活動にリソースを集中することで利益の最大化を狙います。CRMと同じく属人化を避けるためにも有効です。他の営業マンと顧客のやり取りで得た情報やアポイントの期限などもひと目で共有できるため、顧客に二度説明する手間を取らせることもなくなるでしょう。
デメリットとしてはやはり有料であること、そして学習が必要であること、更に日頃のメンテナンスが必要であることが挙げられます。「情報が共有できる」ということは「常に情報をアップデートする必要がある」ということでもあります。
SFAを使いこなすためにはシステムに対する習熟度が求められるでしょう。
MA
MAはMarketing Automationの略で、この場合MAとはマーケティングを自動化し、効率的な営業活動を実現するためのツールを指します。マーケティングについて解説すると別の記事が一つ書けるほどの分量になりますので割愛しますが、マーケティング全体を自動化するツールです。
メリットは人為的なミスを減らせること、高度な分析をしやすいことが挙げられます。営業活動には選択と集中が重要ですが、選択をしていく段階においても記憶や手作業で絞り込んでいくには手間もかかりますし、ミスも発生します。ツールの中で条件に合う顧客だけを瞬時に抽出することでしっかりと「選択と集中」を行うことが出来るようになります。また、顧客がWebサイト上でどう動いているかなどの分析力に優れており、今まで見えなかった顧客の特性が可視化されます。より顧客に「刺さる」営業活動につながるでしょう。
デメリットとしてはやはり導入コストが掛かること、ツールに対する習熟が必要な点になります。
ツールと管理方法を決める方法
4つのツールをご紹介しました。
まとめると、
エクセル :氏名や住所などの基本情報を管理。
CRM :より深く、また性格に顧客情報を管理。
SFA :営業活動を管理、支援、自動化
MA :マーケティング活動全体を管理、支援、自動化
と、段階的により広い範囲を扱えるようになっていきます。自社に適したツールを決めるポイントについて見ていきましょう。
ビジネスの規模や将来の展望
規模はわかりやすい指標になります。数人の顧客なら記憶力だけカバーできますし、数百人、数千人、数万人と規模が大きくなるにつれて高度なツールを使う必要があるでしょう。現在の規模だけでなく、将来どの程度の規模まで拡大する見込みなのかも考えて決めていきましょう。
ご紹介したとおり各ツールには習熟が必要な場合もあります。最終的に高度なツールを使うならなるべく早い段階から使用し、習熟と同時にデータの蓄積をするのが好ましいでしょう。
ビジネスの成長スピードに追いつかず、顧客管理がネックになってしまっての機会損失は最悪です。早め早めに動いて行きましょう。
ビジネスや顧客の特性
どういった特性のビジネスなのかという点も重要です。
ITリテラシーが高い客層なのかそうでないのか、リピート頻度や地理的な特性にも依るでしょう。また、toCかtoBにもよりますが、toCの場合自社ツールでまとめた情報を顧客に展開するためにはエクセルなどに書き出す必要があり手間になります。こういった場合はある程度自動化出来るツールに替えたほうが効率化されるでしょう。
まずはエクセルで始めるのも一手である
とはいえ、現実には「やってみないとわからない」部分があるのも事実です。
ビジネスや顧客、将来像がはっきり固まっていない場合は実質的に無料で始められるエクセルからスタートするのも良いでしょう。しばらく顧客管理をエクセルでしてみることで、必要な項目や不足している機能が見えてきます。そこから専門的なツールの選定に入るのも有効です。
まとめ
今回は顧客管理についての解説と、そのためのツール、そして選び方をご紹介しました。
結論としてはエクセルにせよ専門的なツールにせよ、いずれかのツールを使用して顧客管理をすることは必須と言えます。自社の特性に合ったツールを利用して業務効率、利益を最大化していきましょう。
専門的なツールのポイントに「自動化」があります。ITで出来る部分はITに任せることで劇的な効果を見込めますが、自動化には「アウトソーシング」という選択肢もあります。
経理のように直接利益を生まない間接業務はプロにアウトソーシングすることで、一気に効率化することが可能です。顧客管理、営業活動に集中するためにも経理業務のアウトソーシングも検討してみてはいかがでしょうか。