日本政策金融公庫の経営改善計画書とは、企業の業績が芳しくない場合の業績回復に向けた作戦計画書であり、追加融資の申し込みや、自社の業績が落ち込んできた場合などに、金融機関から提出を求められる場合もあります。経営改善計画書の作成により、自社の現状を改めて客観的に把握し、業績回復のための道筋を立てることができます。
本記事では、経営改善計画書の書き方のポイントについて解説します。
経営改善計画書とは
経営改善計画書とは、自社の経営状態を改善する方法について、具体的な数値で示した計画書のことをいいます。経営改善計画書を作成するケースには大きく3つあります。以下でそれぞれのケースについて紹介します。
自社の事業を見直すため
経営改善計画書は、自社の事業を見直すための「事業計画書」として作成する場合があります。日々変化する経営環境を想定し、5年後・10年後にどのような経営を行っているのかについて中長期的な視点で作成します。
金融機関からの支援や借入を受ける場合
経営改善計画書は、金融機関からの支援や借入を受ける場合に作成することもあります。仮に、現在の業績が堅調であったとしても、追加融資を受けるにあたって審査担当者を納得させるために経営改善計画書を作成することがあります。
経営状況の悪化により、金融機関から提出を求められる場合
経営状況の悪化や追加の融資が困難になった場合、「緊急事態の対応策」として短期間の経営改善計画書を作成し、提出するよう求められる場合があります。ただし、短期間の経営改善計画書はあくまでも「緊急事態の対応策」であり、その後の業績によっては長期的な経営改善計画書を作成する必要があります。
経営改善計画書を作成するメリット
経営改善計画書の作成は、「金融機関に提出を求められたから」といった消極的な理由だけで作成していては意味をなしません。
経営改善計画を作成することで、自社の現状を客観的に把握し、改善に向けた具体的な行動内容が明確になります。その結果、「売上増加・費用削減による業績の改善」「金融機関や取引先からの信用確保」「従業員の生産性向上」などのメリットが発生します。また、経営改善計画に基づいた行動により早期の業績回復が見込まれ、改善計画の進捗次第では、新たに金融支援を受けられる可能性もあります。
経営改善計画の作成は、自社の事業を見直し、自社の力を大きく底上げすることにも繋がります。
経営改善計画書の枠組み
経営改善計画書にはさまざまな書き方がありますが、大まかな枠組みは存在します。各項目のポイントを抑えることで、実現可能性の高い経営改善計画書を作ることができます。以下で経営改善計画書の大まかな枠組みについて説明します。
自社の現状
まず初めに、自社の現状について記載します。事業概要からビジネスモデル、経営理念や経営方針について説明を行います。前回も経営改善計画書を作成しているのであれば、ここで計画の進捗状況についても説明します。
資金繰り表
資金繰り表とは、一定期間の全ての現金収支を分類・集計し、現金収支の動きや現金過不足の実態などを把握するための表を指します。日本政策金融公庫に対して経営改善計画書を提出する際には、この資金繰り表の作成も必要となります。これまでの実績を示す資金繰り表を作ることにより、損益状況と現金収支の両面から事業を見つめなおします。また、必要に応じて将来の資金繰り予測についても作成します。
収支計画表
収支計画表は、今後どのような収支が予測されるのかを示します。過去の実績と今後予測される収支を記載することで、事業がどのように改善されていくのかを可視化することができます。日本政策金融公庫には収支計画表のサンプルもあるため、参考にしてみてください。
経営改善の行動内容
経営改善を実施するにあたり、具体的にどのような取り組みを行っていくのか、その行動内容について記載します。初めに、経営悪化の要因について分析・把握を行い、その対策としてどのような取り組みを行うのかを説明します。また、行動内容の費用対効果についても検証する必要があるため、収益目標などを定めて考える必要があります。
今後の努力目標
経営改善の行動内容をもとに、今後の売上や可処分利益などについて努力目標を定めます。自社の状況に応じて3年・5年・10年といった長期的な目標を作成します。また、キャッシュフロー計画書についても併せて作成することで、損益の推移だけではなく現金収支についても管理していくことが可能です。現金収支を意識することで、資金繰りの早期改善に繋がっていきます。
経営改善計画書を作成する際の注意点
前述では、経営改善計画書の枠組みについて確認しました。大まかな記載内容は決まっており、自社の現状を踏まえた実現可能性の高い計画を作成することで、早期の経営改善を図る事が可能となります。ここでは、経営改善計画書を作成する際の注意点について3つ紹介します。
計画は保守的に作成する
現在の事業の状況が芳しくない以上、経営改善計画書は保守的に作成しましょう。具体的には、過度な売上増加は織り込まないことです。毎期増収増益の右肩上がりの経営改善計画では「事業の見通しが甘い」と判断される可能性があります。根拠のない希望的観測は捨て、保守的な計画の作成を心がけましょう。
経営悪化は自社の責任である
経営悪化の要因は、あくまでも自社の責任であるということを認識しましょう。事業の内部環境や外部環境の変化には、自社で対応しきれない点も多くあるかもしれません。しかし、経営悪化時には環境の変化を客観的に判断し「今後の収益をどのようにして確保するのか」を具体的かつ詳細に分析し、経営改善を行っていく必要があります。そのため、経営悪化の原因を他社に求めるような「他人に厳しく、自分に甘い態度」はやめましょう。
自社の犠牲を払う姿勢
経営改善計画においては、時として痛みを伴う犠牲も必要になります。経営が芳しくない時には、現状分析を客観的に行い、役員報酬の減額や従業員のリストラなど「自社の犠牲を払う姿勢」を示す必要があります。自社の犠牲を払わずに、追加融資や返済条件の変更など、他社に対してばかり犠牲を求めていては、金融機関担当者に経営改善の覚悟が伝わらず「見通しの甘い経営者」だと誤解されてしまいます。
まとめ
経営改善計画書の作成は、金融機関への提出だけが目的ではなく、自社の経営状況を見直し資金繰りの改善に繋げる重要な機会です。日本政策金融公庫のホームページでは、経営改善計画書の雛形が記載例と共にダウンロードできるようになっていますので、作成時の参考にしてみてください。本記事で記載したポイントを抑え、実現可能性の高い経営改善計画書を作成しましょう。
また、自社だけで経営改善計画書を作成することが難しい場合、専門家のサポートを受けることも選択肢の一つです。専門家のサポートを受けることで、自社の現状分析や改善方法について深掘りすることができます。専門家ならではの、さまざまな視点からのアドバイスを受けることができるメリットもあります。経営改善計画書を作成する際には、専門家サポートも検討してみてください。