会社設立時の株主構成【決定版】決め方のコツは議決権3分の2の確保

経営お役立ち情報

「これから会社を設立するのだけど、はじめの株主構成について気をつけておくべき点はあるのだろうか?」
「自分と配偶者の2人で株主になろうと思うけど、問題ないのかな?」

会社設立時の株主構成について上記のような疑問を持ったことはあるでしょうか?株主構成は、自分1人、自分と配偶者、自分と友人など様々なパターンがありますが、結論から述べるとあなたが3分の2の議決権比率を確保できる体制が望ましいです。

なぜ3分の2なのかという点もふまえて、今回の記事では会社設立時の株主構成について以下の内容を解説します。

・起業人数別の株主構成
・持ち株比率ごとに株主総会で決定できる事項
・発行可能株式総数と1株あたりの金額の決め方

この記事を読むと会社設立時の株主構成に関する注意点を知ることができ、将来にわたって迅速な意思決定のできる会社を設立できるはずです。

起業人数別|会社設立時の株主構成

会社設立時の株主構成を決める際、まず基準となるのが資本金の額です。一般的に設立時の資本金は500万円程度の会社が多いです。これは資本金として3〜6ヶ月分の運転資金を用意するケースが多く、また資本金が1,000万円を超えると税金が高くなるためです。

当然ですが、この500万円を何人で払い込むのかにより株主の人数が決まります。それでは起業人数別の株主構成について順番に確認していきましょう。

1人で起業する場合は100%株主

設立時の資本金を1人で払い込む場合、当然に1人で100%の株式を保有することになります。つまり議決権100%をあなた1人で保有するため、後述する株主総会における決議事項のすべてをあなたが自由に決められます。

1人株主となる場合は議決権比率で問題が起こることもありません。

複数人で起業する場合は3分の2以上の株主になるのが基準

会社設立時に、あなたの他に「配偶者、親族、友人」が株主になるケースもあります。この場合はそれぞれが資本金を払い込んだ比率により、株主構成が決まります。あなたと配偶者で同じ資本金額を払い込めば50%:50%です。

この点について結論を述べると、誰と共に株主になるとしても、あなたが資本金の3分の2以上を払い込むのが将来における意思決定の迅速さの点からおすすめです。以下では3つのパターンについて詳しく確認していきましょう。

パターン①配偶者と2人で株主になる

はじめに確認するのは「あなたと配偶者の2人」で株主になるケースです。

このケースで最も避けるべきは50%:50%の株主構成となることです。会社の経営について判断が別れた場合、双方が同じ議決権を持っていることから株主総会決議で経営の方向を決めることができなくなるためです。

配偶者と2人で株主になる場合であっても、最終的な意思決定者が3分の2以上の株式を持つ状況にしましょう。あなたの会社であなたのビジネスを営むのであれば、配偶者の保有割合は30%もしくは10%ほどにしておきましょう。

パターン②配偶者+親族で株主になる

次に確認するのは「あなたと配偶者に加えて親族」で株主になるケースです。

原則としては夫婦で株主になるケースと同じで、あなたが3分の2以上の株式を持ちましょう。親族にお金持ちがいて、その方からの資金援助でビジネスを始める場合であっても、株式としては3分の2をあなたが保有し、資金援助は借入れなどで処理するのがおすすめです。

パターン③友人と2人で株主になる

最後に確認するのは「あなたと友人の2人」で株主になるケースです。

同じ志を持つ友人と会社を設立する場合、50%:50%にしたくなる気持ちはよくわかります。最終的な出口が上場であってもM&Aであっても、同じ株式比率でイーブンに利益を得られるためです。

しかし前述のとおり、やはり50%:50%はおすすめしません。あなたと友人でビジネスに関する考えが異なった場合、意思決定ができなくなるためです。

そのため友人となるべくフェアに起業する場合であっても、せめて株主構成を51%:49%にする等して最終的な意思決定者を明確にしておきましょう。

持ち株比率ごとに決定できる内容

ここまで会社設立時の株主構成についてパターン別に解説してきました。結論としては、可能な限りあなたが3分の2以上の株式を保有する状況を作るのがおすすめです。

ここでは、なぜ3分の2以上なのかについて確認していきましょう。具体的には以下の2つについて解説します。

・50.1%以上の株式(議決権)を保有している場合に決定できる事項
・3分の2以上の株式(議決権)を保有している場合に決定できる事項

50.1%(過半数)以上

会社の株式(議決権)を50.1%以上保有していると、あなたは単独で主に以下の事項を決定できます。

・取締役・監査役の選任
・取締役の解任
・役員報酬の決定
・剰余金の配当

このように50.1%以上の保有で、取締役の選任・解任という非常に重要な事項をあなたが決定できる状態を作れるのです。その上で、株式保有割合が3分の2以上となった場合は何を決定できるのでしょうか。

3分の2以上

会社の株式(議決権)の3分の2以上を保有していると、あなたは単独で主に以下の事項を決定できます。

・募集株式の募集事項の決定等
・定款の変更
・組織再編行為の承認
・事業譲渡の承認
・解散

取締役の選解任は当然できるとして、さらに合併や会社分割といった組織再編行為まであなた単独で決定できます。ここまでできると、会社の経営権はあなたにあるといっても過言ではありません。

こうした重要事項を単独で決議するためにも、あなたが3分の2以上の株式を保有すべきなのです。

33.4%(3分の1)以上

あなたが株式の3分の2を保有すべきという点を、「別の人に33.4%以上の株式を渡した場合にどうなるか」という側面から確認してみましょう。

あなたとは別の人に株式の33.4%を持たせた場合、その人物は主に以下の事項に関する決議を単独で阻止できます。

・募集株式の募集事項の決定等
・定款の変更
・組織再編行為の承認
・事業譲渡の承認
・解散

つまり、あなたが会社の成長のために他社と合併すべきと考えた場合であっても、もう一人の株主が反対した場合は合併できなくなります。

こうした理由からも、あなたが株式の3分の2以上を保有し、別の株主に33.4%以上を保有させない株主構成にすべきです。

発行可能株式総数と1株金額の決め方

ここまでの内容で、会社設立時の株主構成をどうすべきかイメージできたでしょうか?ここでは、設立時の株主構成とあわせて疑問を持つケースの多い「発行可能株式総数」「1株あたりの金額」について解説します。

発行可能株式総数

株式については発行可能株式総数というルールがあります。発行可能株式総数とは、株主総会の決議を経ずに、取締役会の決議のみで発行できる株式数の上限です。この点に関する制限の内容は以下のとおりです。

「株式に譲渡制限を設けない場合、設立時の発行株式数は発行可能株式総数の4分の1を下回ることができない」

つまり、会社設立時に500株を発行する場合、発行可能株式総数は2,000株までとなります。しかしこの制限が適用されるのは「株式に譲渡制限を設けない会社のみ」となります。譲渡制限については以下で解説します。

株式の譲渡制限

一般的に設立後間もない会社は自社の株式について「株主総会もしくは取締役会の決議がなければ譲渡できない」とする譲渡制限を設けています。

この制限は、自社の株式が意に沿わぬ相手に譲渡されて、意に沿わぬ相手が会社の経営に参画することを防ぐためのものとなります。こうした譲渡制限を設けている会社であれば、先ほど解説した発行可能株式総数に関する制限はなくなります。

1株あたりの金額は1〜5万円が多い

最後に、会社設立時における1株あたりの株価について解説します。冒頭で触れたとおり、設立時の資本金額は500万円前後が多くなります。これは資本金が1,000万円を超えると税金が高くなるためです。

その上で1株あたりの金額は1〜10万円ほどに設定するケースが多くなります。つまり資本金500万円の会社で、500株もしくは50株を発行するかたちです。

設立当初から何万株を発行する必要はありません。会社の成長に沿って外部の資本を受け入れる過程で、株式の発行数も設計していきましょう。

まとめ

今回の記事では、会社設立時の株主構成について解説しました。繰り返しになりますが、将来における会社の意思決定を迅速にするためには、あなたが3分の2以上の株式(議決権)を保有するかたちを実現しましょう。

以下は記事のポイントです。

・株式の50.1%以上を保有することで、取締役の選解任を単独で決定できる
・株式の3分の2以上を保有することで、組織再編なども単独決議可能
・株式に譲渡制限を設けない場合、発行可能株式総数のルールがある
・1株あたりの金額は1〜10万円に設定されることが多い

このように、会社設立時の株主構成は御社の今後の成長に大きく影響を及ぼす可能性がありますので、慎重な判断が求められます。

キャシュモグループでは、会社設立に関するアドバイスを始め、設立後の経営管理や税務のお手伝い、更には経理や給与計算などのアウトソーシングを承ります。会社の設立や、その後の経営管理など少しでも不安がありましたら、ぜひ弊社までお問合せ下さい。