意外と知らない「損益分岐点」<経営講座第8回>

経営お役立ち情報

「損益分岐点」

皆さんはこの言葉を聞いたことがありますでしょうか?

ほぼ全ての会社は「利益を出したい」と考えていらっしゃることでしょう。
しかし、「利益を出すためにはどれだけの売上高を出す必要があるか」と聞かれると、いまいち理解していない場合が多いのが現状です。

しかし、会社の経営においては、「損益分岐点」は、非常に有効な指標です。
難しい話になりやすいトピックですので、なるべく簡単に説明していきます。

ある日、こんな相談をされたら


ある日、A社長からこんな相談を受けたら、皆さんは、何と答えてあげますでしょうか?

損益分岐点の仕組み

損益分岐点とは

冒頭でも触れましたが、「利益を出したい」という願望は、ほぼすべての会社が持っている願望です。では、なぜ会社は「利益を出す」必要があるのでしょうか。それは、会社を「存続させるため」です。会社は存続しなければ、理念を実現させることも、世の中に貢献することもできないので、利益を出して存続することが大事です。

損益分岐点とは、言葉通りの意味でとると、「失と収分岐になる

つまり、簡単に言えば、「その会社が赤字になるか、黒字になるかの境目で、利益がちょうどゼロになる点」を表すものということです。

利益は、「収益(売上)- 費用」で計算されますので、利益がゼロということは、収益(売上)と費用が同じと言い換えることもできます。

簡単にまとめると、以下の通りです。

損益分岐点を知ることは、今が赤字の会社にとっても、今が黒字の会社にとっても非常に有効です。今赤字の会社にとっては、「今の赤字をなくすためには、あとどれくらい利益が必要なのか」を知ることができますし、今黒字の会社にとっても、「あとどれくらい利益が減れば、赤字になってしまうのか」を知ることができるので、現状を把握したり、計画を立てたりする上でも非常に重要な指標となるのです。

損益分岐点の計算方法

損益分岐点はどの利益でもOK

ここからは具体的に損益分岐点の計算方法を見ていきます。

以前、損益計算書の回で、利益には様々な種類があるというお話をしました。この損益分岐点は、どの利益の場合でも計算することが可能です。

今回は、説明をわかりやすくするために、営業利益が0となる損益分岐点を考えてみましょう。

変動費と固定費

利益は「収益(売上)- 費用」で計算されるとお話しましたが、この「費用」には2種類あり、損益分岐点を求めるためには、まずは費用を分解する必要があります。



図のように、費用は、「変動費」「固定費」の2種類に分類されます。

変動費は、売上の増減に比例して、増減する費用です。極端なことを言えば、店を閉めて、何も売らない場合は、発生することがない費用です。代表的なものとしては、商品や材料の仕入高です。売れば売るほど、その分仕入れをしなければならないですし、店を閉めた場合は、売らなくていいので、その分、仕入れる必要もなく、売上に比例します。

一方、固定費は、売上に関係なく、発生する費用です。開店してから、お客様が一人も来ず、売上がゼロであったとしても、従業員へのお給料や、店舗の家賃は必ず支払わなければならないですよね。そういった、売上に関係ない費用のことを固定費と言います。

利益がゼロ=?

今回は、営業利益がゼロとなる場合を考えるわけですが、損益計算書において、営業利益は以下のように算出されますよね。

営業利益 = 売上高 - 変動費 - 固定費
= 売上総利益 - 固定費

図を用いると、以下のようになります。


営業利益がゼロというわけですから、「売上総利益 = 固定費」となればいいわけです。

つまり、固定費は会社にとって必ずかかる費用ですので、この固定費分の売上総利益、粗利を出す必要があるわけです。

それをさらに細かく分解すると、売上総利益は、「売上高 - 変動費」によって算出されますので、「固定費分を賄う売上総利益」を出すには、「売上高はどれだけ必要?」とさらに分析していくことが可能です。

言い換えれば、損益分岐点は、「固定費を賄うためにどれだけ粗利益が必要で、そして、その粗利益を出すためには売上がどれだけ必要か」を求めているものであるということです。

利益に影響を及ぼす要素

利益を改善するためには、粗利益を伸ばすことだけが必要なわけではありません。
先程の図を用いて考えてみましょう。

【ポイント①:営業利益を増やすには】

上図を見れば一目瞭然ですが、売上総利益から固定費を差し引いて、営業利益が算出されるわけですから、営業利益を改善したい場合は、
①売上総利益を増加させるか、②固定費を削減するかの2つです。

【ポイント②:売上総利益を増やすには】

次に、固定費の削減は難しいので、粗利益を増やす方法で考えるとします。
その場合、図より、売上総利益は、売上高から変動費(仕入高)を差し引いて算出されますので、売上総利益を改善したい場合は、
①売上高を増加させるか、②変動費を削減するかの2つです。

【ポイント③:売上高を増やすには】

次に、変動費の削減は難しいので、売上高を増やす方法で考えるとします。
その場合、図より、売上高は、P(販売価格)とQ(販売数量)の掛け算で算出されますので、売上高を改善したい場合は、
①販売価格を上げるか(値上げ)、②販売数量を増やすかの2つです。

ただし、注意点があります。販売数量を増やす場合は、売上が上がるとと同時に、変動費も上がります。なので、その点を考えなければなりません。

これをまとめると、以下のようになります。

喫茶店の損益分岐点を計算してみよう

喫茶店の赤字はいくら?

冒頭でA社長から受けたお悩みに答えてみましょう。
喫茶店に関する情報をまとめると、以下のようになります。


計算してみると、A社長の喫茶店は100,000円の赤字であることがわかりました。

喫茶店の赤字をなくすためには

喫茶店の赤字100,000円をなくすためには、どういった方法が考えられるでしょうか。
今回の記事の内容を踏まえて、考えてみてください。

【ポイント①:営業利益を増やすには】

売上総利益から固定費を差し引いて、営業利益が算出されるわけですから、
営業利益を改善したい場合は、①売上総利益を増加させるか、②固定費を削減するかの2つでした。

ですので、この場合では、
①固定費の600,000円を賄う為、売上総利益をさらに100,000円増やす(=600,000円)
②固定費の中で100,000円分削減できるものがないか探し、固定費を500,000円にする
の2つが考えられるでしょう。

【ポイント②:売上総利益を増やすには】

次に、固定費削減は難しいと言われてしまったので、粗利益を増やす方法で考えます。
売上総利益を改善したい場合は、①売上高を増加させるか、②変動費を削減するかの2つでした。

ですので、この場合では、
①売上をさらに100,000円伸ばし、売上高を800,000円にする
②さらに安い仕入先を探し、変動費を100,000円に抑える

【ポイント③:売上高を増やすには】

次に、変動費の削減は難しいので、売上高を増やす方法で考えるとします。
売上高を改善したい場合は、①販売価格を上げるか(値上げ)、②販売数量を増やすかの2つでした。

ですので、この場合では、
①1杯あたりの販売価格を100円あげる(100円値上げ)
②さらに200杯売る
の2つが考えられるでしょう。

最後に

いかがだったでしょうか。
利益を出したいと願うだけでなく、「そのためにどれだけ売上が必要だろう」というところまで、落とし込んで考えることが非常に重要です。
ぜひ、様々な会社の利益計算や改善案も考えてみてください。