今年もこの季節がやってきました。
年度更新は、毎年の恒例行事のようなもの…
今回は、労働保険の年度更新について解説します!
ですが、突然「年度更新とは?」から話し始めても、
肝心の「労働保険」が何かが分からない!
と思う読者の方も多いかと思いますので、
1度「労働保険とは何か?その目的は?」について、おさらいしておきましょう。
1.労働保険とは?
『労災保険(労働者災害補償保険)』と『雇用保険』を合わせたものを
『労働保険』と呼んでいます。
労働保険は、労働者の生活と雇用の安定を守るためにある国の制度です。
労災保険の目的
業務上の事由または通勤途上での怪我や、病気、障害、死亡等に対して
必要な保険給付を行うことにより、労働者の生活を守ることを目的としています。
一方、労働者に対して災害補償義務を負う会社にとっても労災保険に加入して
保険料を納めることにより、国が代わりに治療費や補償費を支払ってくれるため、
守られているという面もあります。
雇用保険の目的
労働者が失業した場合および雇用の継続が困難になる事由が生じたときに
必要な給付を行うことにより、収入の減少等を補い、再就職の支援等を通じて
労働者の雇用と生活の安定を図ることを目的としています。
2.年度更新の仕組み
では、冒頭で触れた「年度更新」とは、一体何なのでしょうか?
「年度更新」とは、「労働保険料(労災保険料+雇用保険料)」を年度単位で、
労働基準監督署へ申告し、保険料を納付することを言います。
こちらの図を見てください。
「年度更新」の流れを図にしました。
H28年に成立した企業の場合ですが、労働保険に加入した企業はまず最初に、
「H28概算保険料」を労働基準監督署に納付します。
これはいわゆる「保険料の前払い」です。
「概算労働保険料」は、企業に雇用されている全労働者の"当年度(H28.4.1~H29.3.31)に支払う予定の賃金総額"に事業の種類によって決まった保険料率を乗じて計算します。
そして、翌年度に、実際に支払った賃金総額を元に確定した労働保険料である「H28確定保険料」と
前払いしていたこの「H28概算労働保険料」を比較します。
「見込み額」を支払っている訳ですから、勿論それなりの差額が生まれます。
この差額、つまり「過不足分」を精算するのと同時に、次年度の「H29概算保険料」を
計算し、合算して、納付します。
ここまでの流れを毎年繰り返している訳ですね。
3.労働保険の対象者・計算方法について
では、この労働保険はどのような人が対象となり、
どのように各個人の保険料が決まるのでしょうか?
〇労働保険の対象者
先述の通り、労働保険には大きく分けて「労災保険」と「雇用保険」の二つの保険があります。
【労災保険】
「労災保険」は、正社員やアルバイト、パートを問わず、
従業員を1人でも雇用している企業は、原則として加入しなければなりません。
【雇用保険】
「雇用保険」は、正社員・パート・アルバイトなどの名称によらず、
①31日以上の雇用見込みがあり
②所定労働時間が週20時間以上
等の一定の条件を満たす方が加入対象となります。
しかし、会社の代表者や取締役、自営業の個人事業主とその家族等は原則として、
労働保険・雇用保険へ加入は出来ません。
〇計算方法について
・労災保険
⇒ 労災保険加入者の賃金 × 労災保険率 = 労災保険料
また、労災保険の保険料はすべて企業が負担する為、従業員個人の負担はありません。
保険料率は事業の種類によって異なります。
保険料率については、厚生労働省提供の表を参考にして下さい。
こちら
・雇用保険
⇒ 雇用保険対象従業員の賃金総額 × 雇用保険料率 = 雇用保険料
雇用保険料は企業負担と労働者負担に分けられます。
保険料率は、以下の表を参考にして下さい。
こちら
〇賃金の総額に含まれるもの・含まれないもの
労働保険料の計算式にある「賃金」の総額には、基本賃金のほか、賞与や通勤手当、残業手当等も含まれます。
労働保険の対象賃金に含まない賃金は、「出張旅費」「結婚祝い金」
「災害見舞金」などの一時金・退職金・休業補償費・傷病手当金等です。
保険料の分割払い
1年度分の労働保険料を一括支払いするのは、企業にとって難しい場合もあります。
そんな時は「延納」の申請をします。
要件を満たせば、最大3回の分割支払いが可能です。
本年度の注意
・2020年4月1日より、高年齢被保険者の雇用保険料免除が廃止
これまで年齢が65歳以上の高年齢被保険者は、雇用保険料の個人負担分の徴収が免除されていました。
しかし、2020年4月1日より、法律の改正によって、上記の対象者も雇用保険料の個人負担分を納めることになっています。
本人からの預かり忘れのないようご注意下さい。
・労働保険申告期限・納付期限の延長
新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて、今年度の労働保険の年度更新期間について、
本来6/1~7/10である期間が、6/1~8/31に延長されています。