8月17日、今年度の最低賃金の改定額が発表されました。それによりますと、全国平均は前年度比25円増の848円。上げ幅は過去最大だった昨年度と同額で、上昇率は3%。政府目標の「3%程度」が今年度も達成されました。新たな最低賃金は9月30日から10月13日の間に順次適用される予定です。
<今回のポイント>引上げ額の全国加重平均は25円となり、最低賃金が時給で決まるようになった平成14年度以降で最高額となる引上げとなります。
増額幅が大きいため、パートタイマーやアルバイトの時給や、固定残業代制度を導入している事業所では、知らぬ間に最低賃金を下回っていたということの無いように注意が必要です。
<東京の場合>932円から958円への引き上げ。
<適用時期>地域ごとに順次適用されます。
例えば、10月1日より適用される場合、は10月1日の「労働日」以降は、新しい最低賃金を下回ってはいけませんので注意が必要です。
<最低賃金改定>
【1】最低賃金とは
最低賃金とは、最低賃金法に基づき国が定めた賃金の最低額であり、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければなりません。
仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされます。
使用者が労働者に最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合には、使用者は労働者に対してその差額を支払わなくてはなりません。なお、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、50万円以下の罰金(最低賃金法第4条)になります。
【2】対象となる賃金
最低賃金の対象となるのは毎月支払われる基本的な賃金であり、残業代やボーナスは含まれません。
固定残業代制度(みなし残業代、定額残業代等)を導入している場合は、「所定内労働に対する賃金部分」から「固定残業代部分」を控除した賃金が対象になります。固定残業代部分が増えれば増えるほど、最低賃金の対象となる賃金単価は下がりますので、基本給の中に固定残業代を含んでいる場合や最低賃金を下回っていることがないか、特に注意が必要です。
【3】最低賃金の計算方法
固定残業代にも最低賃金が適用されます。東京の場合、平成29年10月以降、「残業代(1時間あたり)」は、最低でも下記の賃金を上回るようにしなければなりません。
958円(10月以降の想定額)×1.25(割増賃金率)=1197.5円
厚生労働省ホームページには、従業員個々の給与が最低賃金以上かどうかを確認する方法が、紹介・解説されていますのでご参考ください。
<参照> 厚生労働省HP『最低賃金額以上かどうかを確認する方法』
【4】今後の対応
今回も昨年度に続き大幅なアップとなりますので、現在、最低賃金ぎりぎりに賃金を設定している従業員(正社員、パート、アルバイト等)がいる場合、知らぬ間に最低賃金割れとなってしまうことのないよう給与の総点検を行いましょう。また、近々、昇給やパートタイマーの契約更改をする検討されていましたら、今回の最低賃金の引き上げも念頭に入れて、昇給額等を検討するのが良いでしょう。
【5】助成金
最低賃金の引き上げは、雇用確保・経済回復の一端となる一方、人件費の高騰は中小企業とっては大きな影響を及ぼします。1日8時間労働のフルパート従業員が10人いる事業所を想定しますと、26円のアップで、年間約50万円の負担増になります(8時間x240日x26円=49万9千円)。
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厚生労働省と経済産業省は、最低賃金の引き上げにより、影響を受ける中小企業に対する支援として助成金や相談窓口の開設を行っております。これを機会にご検討されてみてはいかがでしょうか。
<参照>厚生労働省HP『最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業』