財務分析第1回~財務分析とは何か?~

経営お役立ち情報

前月号では「決算書の見方」をご説明しました。今月号からはもう一歩踏み込んで、財務分析を取り上げていきます。「よく聞く言葉だけれど、具体的にどのように役立つかわからない」とお悩みの方に、特にお勧めしたい特集です。

財務分析の主体は誰か?

財務分析を説明する上で、「誰の目線で行われる財務分析なのか」を明確にすることは非常に重要です。企業の税務分析を行う人は大きく分けて2種類います。

① 経営者
② ステークホルダー (株主、投資家、取引先、金融機関 など)

今回から始まった「財務分析活用法」シリーズでは、経営者の目線で行う財務分析を取り上げていきます。

経営者に持っていただきたい2つの視点

経営者自身が財務分析を行うのは、業績の改善に役立てるためです。成長の妨げになっているのは何か、どのような行動が改善につながるのかを、以下の2つの視点から明らかにできます。

① 収益性分析
「儲ける力が高いか低いか」を分析します。「収益」に注目することになりますので、損益計算書を中心に分析することになります。

② キャッシュフロー分析
「資金が滞りなく循環しているか」を分析します。こちらは資金の動きに注目するので、貸借対照表を中心に分析します。

長期的には、収益性が高くなると、キャッシュフローの循環が改善され、資金に余裕が生まれ、効果的な投資などを行えば、さらに収益性が高くなる、というように双方の指標がお互いを引き上げていくイメージになります。

指標をどのように活用するのか

財務分析の活用は、以下の3つのステップを参考にしていただくと効果的です。

① 現状分析を行い、自社が注目すべき指標を見つける
財務分析の指標は多種多様です。当然のことながら、会社の現状によって、注目すべき指標は異なります。例えば、成長期にある企業であれば、収益性の分析を行い、「儲ける力」が高まっているかを確認します。また、借入金がある企業であれば、キャッシュフロー(資金繰り)に特に注目することが必要です。

② 指標の業界平均値や、理想値を確認する
経済産業省や、中小企業庁などが発表している統計を基に、自社が所属している業界の平均値や、一般的に優良企業とされている会社の数値を参考に、「自社の指標は優れているのか、課題があるのか」「どのくらいの数値になれば、理想的なのか」を確認します。
業界によって特徴は様々で、例えば、不動産業は収益性の指標は高く、キャッシュフローの指標は低い傾向があります。小売業の場合は逆に、収益性の指標が低く、キャッシュフローの指標は高くなります。

③ 改善目標を立て、具体的な対策を立案・実行して、定期的に確認する
注目すべき指標と、その理想的な値が明らかになったら、改善目標を立てます。決算前に来年度の予算を立てると思いますが、財務分析指標の改善目標を達成できるような予算になっている必要があります。さらに、「在庫を減らす」「人件費を削減する」など具体的な行動計画に落とし込むことが重要です。
また、毎月や、数か月に1度、実際に財務分析を行い、目標値に近づいているかの確認が必要です。

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多忙な日々の中、財務分析を行い、目標値を立て、改善計画を立案する、というのは困難なことかもしれません。しかし、会社を良くしていくためには、必要不可欠です。次回は中小企業におすすめの指標をご紹介します。