中小企業経営者が知っておくべきビッグデータの基礎知識

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ビッグデータという言葉を一度は目にしたことがあるかと思います。とても簡単な英語ではありますが、それの意味となると説明するのは少し難しいのではないでしょうか。

この記事ではビッグデータという言葉の意味と活用例、そして中小企業の経営者として必要なビッグデータの活用に対する心構えについて説明します。自社で取り入れる際に何から始めればよいか、何に気をつければよいか分かりやすく解説していきます。

「ビッグ」の3つの意味

最近よく目にするビッグデータという言葉ですが、具体的にどういうものか説明できる人は少ないのではないでしょうか。その理由は、ビッグデータの「ビッグ」には複数の意味が込められていることが原因かもしれません。

一般的に英語の「ビッグ」の意味は「大きい」ですが、ビッグデータの場合は「いろんな」とか「たくさん」といった意味が含まれています。それではそれぞれの意味について説明していきましょう。

「ビッグ」=「大きい」

まず「大きい」ですが、これは取り扱うデータのサイズが単純に大きくなっているという意味です。昔のインターネットはサイズの小さい文字情報が中心でしたが、今では画像は当然のこと、動画を扱うことも当たり前になっています。その動画もフルHD、4Kと高精細化が進み、データサイズが急増しています。

「ビッグ」=「いろんな」

「いろんな」とは、扱うデータの種類が増えているという意味です。コンピュータが処理しやすい数字や文字列だけのテキストを、決まった形式で記述したもの(構造化データ、と言います)を扱うことが一般的でした。今では形式の決まっていない自由なテキストの他に、マルチメディアと言われる画像・音声・動画といったデータを扱うことが当たり前になっています。

「ビッグ」=「たくさん」

「たくさん」とは、データの数が爆発的に増えているということです。特定の人のものだったインターネットは、一般に開放されてから利用者が増え続けています。少し前では学校からしか使えなかったり、一家に一台のパソコンからしか使えなかったりとまだまだ一部の人のものでした。今では一人一台は持っているモバイル端末から各個人が利用しているという状況です。人だけでなく、データ自体が生まれる速度も上がっています。例えば各種のセンサーやアクセスログなど、かつては1日~数時間単位で数件だった計測が、今では秒単位で数万を処理することも珍しくありません。

「データ」が意味するもの

ここまで何度も使っている「データ」という言葉ですが、こちらもビッグデータではどのような意味になるでしょうか。ビッグデータにおいては、情報というよりも記録、記録というよりも「過去にあった事実」と言い換えるのが最も適切かもしれません。例えば、以下のようなものです。

・今日のAさんの体重は60kgだった。
・Bさんが8時35分に駅前のコンビニで肉まんを150円で買った。
・今朝8時の東京の気温は12℃でお天気は晴れだった。
・大阪では雨が降っていて、降水量は10ミリだった。

どれもただ単に実際に起きた出来事を数値にしたものです。他にも、録音した音声は過去にだれかが実際に発した音ですし、写真は過去にあった映像風景、動画撮影も過去に起きたことを記録したものです。今ではそれらはすべてコンピュータで記録することが可能になっています。つまりデータとは、コンピュータで扱えるように記録された「過去に起きた事実」なのです。

ビッグデータとは

ここまでビッグデータにおける「ビッグ」と「データ」それぞれの意味を説明してきました。これらをまとめると、ビッグデータとは、「大きい」「いろんな」「たくさん」の「過去にあった事実」を集めたものです。ですがそれだけではなく、この集めたデータを、扱いやすいように加工したり、傾向や法則を見つけ出したり、仮説を構築したり、そういった「分析」をすることで「未来を予測する」こと、ここまで一連の流れをすべて含んでようやく「ビッグデータ」と言えるのです。データを集めて終わりではないということに注意が必要です。

ビッグデータの活用例

ビッグデータを活用した未来予測には大きく2種類あります。一つは全体の傾向を予測するものです。例えば、交通情報から渋滞を予測して最適な経路を探索するカーナビゲーションシステムや、販売データから需要を予測して在庫管理や発注を最適化するショッピングシステムがそれに当たります。

もう一つが、個人の傾向を予測するものです。動画視聴データや買い物データから個人の好みを予測して、おすすめをするシステムなどです。みなさんの周りでも既に身近になっていることでしょう。

データサイエンティストの登場

ビッグデータの分析により未来予測が可能になるかもしれないということもあり、ビッグデータの価値や分析に対する重要性や評価が高まっています。今では「データサイエンティスト」と呼ばれる、ビッグデータの専門家ともいえる職業が生まれています。彼らは統一性がなく集計が難しいデータを分析しやすいように加工したり、できあがったデータを分析して傾向や仮説を構築したりという、まさに統計のプロフェッショナルです。年収は少なくても1,000万円からというまさに現代の花形職業であり、ニーズの高まりから大学ではデータサイエンスに関わる学部が新設されたり、カリキュラムに新しく組み込まれたりといった動きが活発になっています。

中小企業とビッグデータ

ビッグデータは大企業やIT企業だけのものではありません。中小企業でもクラウドサービスを中心として、ビッグデータを扱える環境は整ってきています。そんな中、中小企業でビッグデータを扱う場合に、注意することとは何でしょうか。

ひとつは「ビッグデータ自体を目的としないこと」です。業務の効率化や自動化をすすめるなかで、ついでにデータもとれるようにならないか、という工夫が必要です。改善を進める中で、データを取りやすい・活かしやすい環境を整備しておくことが重要です。なぜなら、ビッグデータを始めようという時によくある問題のひとつが「そもそもデータがない」という状況だからです。精度の高いデータ収集をついでに行えないか、考えるようにしましょう。

もうひとつは「専門家に任せっきりにしない」ということです。先ほどデータサイエンティストという専門家の話をしたばかりですが、よくある失敗としてデータサイエンティストを雇ったからすべて任せればOK、と考えてしまうことです。なぜこれが失敗しやすいかというと、データサイエンティストはデータ分析の専門家ではありますが、その企業の業務の専門家ではないということです。データの専門家よりも、業務の専門家である既存の社員こそが、傾向を見抜くといった分析に最も適しているのです。社長自ら、データ分析を初歩から学び、ビッグデータの収集や分析に参加している例は少なくありません。専門家におまかせするのではなく、我が事として向き合う姿勢が企業の大小や職種に関係なく必要なのです。

まとめ

ビッグデータの意味とビッグデータでできること、そして中小企業でビッグデータを活かすために必要なことを説明してきました。最初は巨大テック企業から活用が始まったビッグデータですが、今では敷居が下がり、中小企業での活用事例も少なくありません。

ビッグデータが隆盛した背景には、データ自体の爆発的増加もありますが、クラウド、人工知能、高速通信といった最新技術がデータの収集や分析を可能にしています。これらの技術はこれからも進化し続け、ビッグデータも今まで以上に活発に活用されていくことでしょう。まずは身近なところから、普段の何気ない業務を自動化し、ついでにデータを取るようにするところから始めてみませんか。

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