アウトソーシングを検討している業務があるのだけれども、人材派遣という方法もある。いったいどちらがいいのだろうか、と迷われる方も多いのではないでしょうか?。
その答えは、アウトソーシングと人材派遣、2つの違いをきちんと理解したうえで判断する必要があります。
この記事では、アウトソーシングと人材派遣の違いを解説したうえで、それぞれのメリットとデメリットについて考察、さらには自社がどちらに向いているのかについて判断するための方法について解説していきます。
アウトソーシングと人材派遣の契約上の違いについて
アウトソーシングと人材派遣では、契約形態や指示の仕方、制限事項などが大きく違います。業務を他社に委託するのと労働者を派遣してもらうことの違いですので適用される法律も違います。
契約形態の違い
アウトソーシングは、外部企業との”業務委託契約”に基づき自社が”委託者となり、業務そのものは”受託者”である外部企業が行うこととなります。
人材派遣は、人材派遣会社との”労働者派遣契約”に基づき労働者が派遣されます。業務そのものは自社で行うので、自社が派遣された労働者への指示や教育を行います。
業務指示
業務の管理者という観点で、アウトソーシングと人材派遣は正反対になります。
アウトソーシングは、自社がアウトソーシング先に業務委託をし、受託先企業の指示で業務を行います。
これに対し人材派遣では自社が、自社の労働者と同様に指示や教育、進捗管理を行います。
業務制限
アウトソーシングについては、弁護士など資格が必要な独占業務以外は可能です。しかし、人材派遣については労働者派遣法により以下の業務が禁止されています。
① 港湾運送業務
② 建設業務
③ 警備業務
④ 病院等における医療関係業務
アウトソーシングのメリットデメリット
人材派遣と比べてアウトソーシングには次のようなメリットとデメリットがあります。
メリット1:コスト削減
その業務を行うために人を雇用して育成するよりコストが安くて済みます。人材派遣のように自社で業務を行って指示する必要もありません。丸ごと業務を委託することで品質の高い仕事の結果が早く得られることは大きなメリットです。
メリット2:業務の種類や期間の制限が無い
業務委託契約なので、労働者派遣法のような制限は受けません。ほとんどの業務が委託でき、期間も自由に契約することができます。(医師・弁護士などを除く)
デメリット1:社内にノウハウが蓄積されない
アウトソーシングした業務は社内では行われないということになります。すると、その業務に関するノウハウは一切社内に残りません。社内で誰も何も知らないということになると、将来その業務を社内に取り込もうとする場合に困るかもしれません。
デメリット2:突発的な業務はアウトソーシングできない
他社に業務委託をするのですから、細かい点までマニュアルや仕様が決まっている必要があります。突然の仕様変更や追加があっても対応できない可能性があります。
また、高度な判断を伴うような複雑な業務はアウトソーシングには向いていません。
人材派遣のメリットデメリット
アウトソーシングと比較して人材派遣のメリットとデメリットには次のようなものがあります。
メリット1:業務の管理がしやすい
人材派遣は、派遣された労働者を自社で管理するので、労働者のスキルに合わせた指示やスケジュール管理、不具合点の改善を行うなど、柔軟に業務の管理ができることがメリットです。
メリット2:短い期間でも利用できる
アウトソーシングは外部企業に業務を委託するため、業務の仕様や責任の範囲などを詳細にすり合わせる必要があり、スタートするまでに時間がかかります。人材派遣であれば、自社で業務を管理するので、繁忙期などに短期間だけ派遣してもらうような短期的な利用も可能です。
デメリット1:残業代が発生する
人材派遣は便利な点もあるのですが、予期せぬ事態が発生したり、想定した通りの能率が上がらなかったりして、残業にならざるを得ないことがあります。こうした場合でも残業代は派遣先が負担しなければならないことになっているため、予算をオーバーしてしまうことがあり、注意しなくてはなりません。
デメリット2:派遣期間の上限を気にしなくてはならない
労働者派遣法では基本的に同じ人を同じ派遣先で3年以上働かせてはいけないことになっています。その人を3年以上働かせたいときは直接雇用に切り替えるなどの手続きが必要となります。
デメリット3:人材派遣してはいけない業種があることに注意が必要
先述した通り、港湾運送業務・建設業務・警備業務・病院等における医療関係業務は人材派遣ができません。
自分の会社はどちらに向いているか
自社の業務をアウトソーシングすべきか、人材派遣を利用すべきか迷われる場合には、以下のような観点で考えてみてはどうでしょうか?。
その業務は定期的に行う決まった業務か
いろいろな業務がある中で、毎月、あるいは毎年、決まった時期に行う業務があります。こうした業務の多くはマニュアルを作成することができて、きちんと引継を行えば、比較的難易度が低く、高度な判断が必要ない業務です。
こうした業務はアウトソーシングが向いています。まるごと任せてしまえば、自社はその業務から解放されますので、その分集中すべき業務に人材を集中させることができるわけです。
イレギュラーな事態に対処する必要があるか
市場環境の変化、受給量の増減、クライアントごとの異なった対応など、イレギュラーな事態に対処する必要がある業務の場合はアウトソーシングには向いていません。こうしたことが多い業態は自社内で直接指示ができる人材派遣に向いています。
「人手が足りない」と感じる業務の多くはこうしたイレギュラーな事態に時間を取られている場合が多く、自社内の経験者が適切に指示を行って対応する必要があります。
アウトソーシングと人材派遣を上手に使い分けよう
会社経営において、必要な時、必要な業務に、必要なだけ人材を投入することができればとても便利ですが、なかなかそうはいかないのが現実でしょう。
自社の人材の有効活用を図るためには、アウトソーシングと人材派遣のメリットとデメリット、自社のニーズをきちんと把握し、最適な業務体制を構築することが重要です。
アウトソーシングや人材派遣を上手に活用して、自社にとって真に重要な仕事に集中して、業績を伸ばしていきましょう。