書面添付制度をご存知でしょうか。
書面添付制度は、税務の専門家である税理士だけが行うことができる制度で、適正に活用することにより税務調査が省略される場合があるなど、大きなメリットがある制度です。
今回は、この書面添付制度について、ご説明します。
書面添付制度とは
書面添付制度とは、「税理士が税務申告書に会社の決算の内容を説明した書面(法第33条の2の書面)を添付して提出するという制度」で、税理士だけが行うことができる制度です。
この書面には、税務申告書だけでは読み取れない内容を具体的に記載するため、税務申告書の適正性がより高まります。
<書面の記載内容>
①関与先にどのような資料、帳簿類が備え付けてあり、どの帳簿類を基に計算し、整理し、申告書を作成したか
②今期大きく増減した科目の原因及び理由
③関与先からどのような税務に関する相談を受け、回答したか
④税理士として関与先の申告書内容について、どのような所見をもっているのか
書面添付制度を利用した場合、税務署は、納税者に対して税務調査の事前通知をする前に、添付書面に記載された事項について、税理士に意見聴取を行わなければならないこととされています。
この意見聴取によって税務署の疑問点が解消し、それ以上調査が必要ないと認められたときには、税務調査が省略される場合があります(意見聴取後の調査省略割合は全国平均で約50%)。また、意見聴取後に税務調査に移行したとしても、既に調査を行うテーマが分かっており、短時間で終了することがほとんどです。
【参考】法人税書面添付における調査省略割合
【参考】書面添付制度のフロー
(出典:日本税理士会連合会パンフレット)
書面添付制度のメリット
書面添付制度を利用した場合に想定されるメリットには、次のようなものがあります。
①税務調査の省略や税務調査期間の短縮
税務調査は、経営者にとって負担となるため、税務調査が省略等されると、経営者の負担の軽減につながります。
②金融機関や取引先からの評価・信頼性の向上
申告書から数字以外の会社の実態を把握することができるため、金融機関や取引先からの信用も向上します。
場合によっては、資金調達の際に金利や返済期間について優遇措置が行われることもあります。
③経営力の向上
書面添付制度を活用することにより、正しい決算に基づいた適正な申告が行われるため、結果として、よい会社経営を行うことができます。
④修正申告の場合、原則加算税賦課なし
税務調査時に指摘を受けた誤りを修正申告した場合には、修正申告により納付することとなった税額の5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%)の加算税が課せられます。
一方、書面添付による意見聴取の段階で申告内容の誤りに気づき、税務調査前に自主的に修正申告を行った場合には、原則加算税の対象とはなりません。
おわりに
以上のとおり、税務調査対策のひとつとして、書面添付制度は、非常に有効な制度です。
しかし、経営者の脱税意識が強い、経理業務が適当であるなど、正しい決算を行うことができない場合には、書面添付制度を利用していても、書面添付の質が低くならざるを得ず、結果として税務調査が行われることがあります。
この制度を有効に活用するには、「質の高い書面添付」が必要であり、そのためには、正しい決算、経営者の納税意識、顧問税理士との信頼関係が必須であるといえるでしょう。
よりよい会社経営を行うためにも、書面添付制度活用の検討をお勧めします。