試用期間中の賃金を、本採用後の賃金と別に設定してもいいでしょうか。
就業規則に規定していれば可能です。
解説
賃金額に関する規制
具体的な賃金額の規制については、最低賃金法により、最低賃金額に関する制限があるのみです。同法の水準を上回っている限り、使用者と労働者の合意により、自由に賃金額を決定することができます。
したがって、いまだ教育訓練中である試用期間中の社員の賃金を、本採用後の社員の賃金よりも低くすることも可能です。ただし、そのためには就業規則に規定しておく必要があります。
就業規則への記載
労基法89条は、就業規則について次のように定めています。
「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。(中略)賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」
したがって、試用期間中の社員について、本採用後の社員とは異なる賃金を設定するのであれば、就業規則中に、その旨を規定しておかなければなりません。
均等待遇の原則(労基法3条)との関係
労基法3条は、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と定めています。この条文との関係で、試用期間中であるということが「社会的身分」に当たり、本採用後の社員よりも試用期間中の社員の賃金を低額にすることが「差別的取り扱い」に当たるかが問題となります。
しかし、行政当局によると、ここでいう「社会的身分」とは、「生来の身分」をいう(昭22.9.13発基17)とのことであり、試用期間中という身分は生来のものとはいえず、ここでいう「社会的身分」には当たらないとのことです。したがって、試用期間中の社員について、本採用後の社員と異なる賃金額を設定しても、均等待遇の原則に反することにはなりません。
まとめ
試用期間中の社員と、本採用の社員の賃金を別に設定することは可能です。しかし、そのためには就業規則にその旨を記載する必要があります。
就業規則で待遇の基準をはっきりと定め、労使間でトラブルが生じないようにしておくことが大切です。