中小企業経営者が知っておくべきブロックチェーンの基礎知識

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ブロックチェーンという言葉は2018年ごろからよく耳にするようになりました。その時期は仮想通貨(暗号通貨)のビットコインが注目されたタイミングでもあり、仮想通貨と共にブロックチェーン関連の書籍が何冊も出版されました。

最近では仮想通貨のブームもある程度収まり、ブロックチェーンの話題はあまり聞かなくはなりましたが、ブロックチェーンの技術は既存のビジネスに大きな変革をもたらす可能性のあるものです。そのため、今回はブロックチェーンの解説と今後の技術の活用方法などを解説していきます。

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンとは、暗号技術を使用して、〈ブロック〉というデータの単位を生成し、それをチェーンのように繋ぎ合わせる技術のことを指します。

暗号技術自体は日常生活でもWebページなどで使用され、主に個人情報・パスワード・機密情報などの重要情報を暗号化することが多くあります。ブロックチェーンでは暗号化されたデータである〈ブロック〉と、更に他の異なるデータで〈ブロック〉を生成し、繋ぎ合わせます。このようにブロックにブロックが派生していくたびに繋いでいくため、末端にも元の情報が記録されています。

記録を重ねていくことで重要情報が改ざんされることを防ぐ機能があります。これはブロックを改ざんする際には、それより後に作られたブロックをすべて破壊または書き換えを行い、演算をやり直さなければならないという仕様になっているためです。2022年1月現在ではブロックチェーンでの改ざんの事例は数えるほどしか発生していないので、従来のデータ保護対策よりも飛躍的に優れているといわれています。

そのため、政府でもブロックチェーン推進を提言しており、2021年には〈ブロックチェーン推進議員連盟〉が発足ました。提言内容は「ブロックチェーンを国家戦略に。~ブロックチェーンの普及に向けた提言~」とされており、国としても少しずつではありますがブロックチェーンの活用を模索しています。

また、他国でのブロックチェーンの展開も含め、2025年には「GDPの10%がブロックチェーン上に記録された取引によるものになる」ともいわれているため、今後爆発的な広がりを見せるかもしれません。

ブロックチェーンにできること

ブロックチェーンの強みは前述したように、情報セキュリティの高さにあります。更には、膨大なデータを保管することができ、オートメーション化も可能なため、データの記録も容易になっています。その特徴を生かし、以下のようなことが可能になります。

スマートコントラクト

ブロックチェーンの技術を活用すれば、契約締結を容易にすることができます。予め指定された条件を満たした際に自動的に契約締結されるようにすることで、契約の電子署名をした瞬間にサービスが開始されるようにできます。

例えば、カーシェアリングが近年普及しましたが、スマートフォンで支払いを完了した瞬間に、車のキーが自動的に解除され、すぐに利用できるようになる、といったことが可能になります。2020年には住友商事が、賃貸契約を結んだ後、即座に電力やガスなどの連携を行うスマート契約を行っています。

トレーサビリティ

ブロックチェーンの活用により、製品の現在の状態や所在地を簡単に把握することができるようになります。

例えばウォルマートでは、ブロックチェーンを使用して食品の消費期限の改ざんを防ぐ取組を始めています。消費期限はもちろん生産者、処理業者、物流業者などすべてを記録することで、密輸や偽造を防ぐことも可能です。

偽造と言えば近年問題になっているのはハイブランド商品です。その代表格と呼ばれるLVMHもブロックチェーンを活用した対応を進めています。LVMHではルイ・ヴィトンやディオール、プラダなどのブランド製品にQRコードを付け、サプライチェーンをトレースできるようにすることで、信頼できるサプライチェーン情報の開示を可能とし、偽造品の排除を図っています。

権利管理

インターネットが普及したことで、著作物の不正利用が度々問題視されています。

最近では漫画の海外サイトの問題がニュースになりました。そのような背景から、デジタルコンテンツに著作者の証明をつけるなどの著作権管理が必要になります。ソニーミュージックなどではデジタル教科書や、音楽、映画、電子書籍などにブロックチェーンを活用した著作の記録を付与することにより、著作物の不正利用を防ぐ対策をとっています。

このように現在では、一部の大手企業がブロックチェーンを活かしたサービスなどを展開していますが、まだ発展途上の技術と見ている企業がほとんどです。多くの会社では、今後意欲的にブロックチェーンを使用し、改善をしていきたいとのコメントを発表しています。

ブロックチェーンの注意点

ここまでブロックチェーンのメリットを述べてきましたが、このように便利なブロックチェーンが世間一般では仮想通貨と紐づけられて話されてしまうのは、なぜでしょうか。それは、ブロックチェーンの利用には以下に示すような注意点があり、仮想通貨と同様にリスクのあるものという認識が広がっているためです。改ざんリスクが低いからと言って、セキュリティ上万能かというと、そうではないのです。主に理由は2つです。

1.ブロックチェーンのシステム自体に問題はなくとも、ブロックチェーン上のデータを参照する際のキー(秘密鍵)が流出する可能性がある。
2.51%攻撃と呼ばれるブロックチェーンのアルゴリズムを逆手に取った不正のリスクがある

上記2つの方法によってもブロックチェーン上のデータの改ざんは不可能ですが、実質的な乗っ取りや不正利用が行われる可能性があります。2については、ブロックチェーンの計算能力の50%以上を支配されると、計算能力がその支配者に依存してしまうということで、不正な支払いなどが可能になることを指します。

リスクに対応するためには

このようなリスクに対して、1には<マルチシグ>と呼ばれる秘密鍵を複数使用する方法に変更することでリスクを軽減できます。これにより秘密鍵が1つ流出してもデータを不正に扱うことが出来なくなります。

2については計算能力の50%以上が支配されることが問題なので、そのアルゴリズム自体を変更することで解消されます。しかし、アルゴリズムの変更を行うには多大な労力が必要となります。そこで、ブロックチェーンのブロック数を増やすことで、アルゴリズムを変更せずにリスクを軽減する方法も考えられます。つまり、多くの人に使ってもらうことでブロックの母数を増やし、50%以上の支配を困難にする方法です。

まとめ

ここまで紹介してきたように、ブロックチェーンは非常に便利な技術ですが、一方でリスクもあり、現時点では黎明期の技術と言えます。中小企業でブロックチェーンを導入するには、今後の技術の成熟を待つ方が賢明かもしれません。

しかしながら、ブロックチェーンは画期的なビジネスプロセスの改革をもたらす可能性を秘めており、今後大きなビジネスチャンスに結び付くことも予想されます。ブロックチェーン技術の動向を注視し、ビジネスへの活用の検討を始めることをお勧めします。

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