男性の育児休業取得促進に向けて

労務お役立ち情報

育児休業は原則子供が1歳になるまで取得できますが、厚生労働省の雇用均等基本調査では、平成31年(2019年)度の育児休業取得率は女性が83.0%だった一方で男性は7.48%と過去最高を記録しました。しかし、依然として男性の育児休業が浸透していない現状があります。そうした中、早ければ2021年の国会で男性の育児休業の取得推進に向けての法案が成立する見通しです。

今回は早ければ来春から施行される予定の男性の育児休業について解説していきます。

男性の育児休業取得促進に向けた取り組みについて

現在検討されている主な改正内容について解説していきます。

男性の出生時育児休業制度の新設

子の出生から8週の間に合計4週間育児休業を取得できる(2回まで分割取得可能)(2022年10月から施行予定)

企業から従業員への通知と取得促進の義務化

男女問わず、子供が生まれたら会社側からその従業員に育児休業制度の通知と育児休業を取得するかどうかの意思確認を行うことを義務付け(2022年4月から施行予定)

その他

・今までは原則1回だった育児休業取得が子が1歳になるまで2回に分けての取得が可能になる(2022年10月から施行予定)

・今まで育児休業を取得できなかった有期雇用労働者も労働契約が満了することが明らかでない限り、育児休業の取得が可能となる(2022年4月から施行予定)

男性の育児休業の現状

下の図のように男性の育児休業取得率の低さには言い出しにくい職場の雰囲気や社内ルールの整備不足、周知不足が大きく影響しています。もっとも日本では男性は育児よりも仕事を優先する傾向が色濃く残り、育児休業の発想すらない人が多いのかもしれません。

また、職場復帰した時に「自分の居場所があるのだろうか」「休業のブランクがキャリアに影響するのではないか」などの不安からなかなか踏み出せないケースもあります。

育児休業を取得しなかった理由に上記のような意見がありますが、男性新入社員の8割近くが「子供が生まれた時には育児休業を取得したい」(日本生産性本部の調査)と回答しているように、会社を選ぶ際にワークライフバランスを重視する人が増えている中で男性の育児休業取得率は、働きやすい会社かどうかを見極める一つの要素となっています。

中小企業にとっては今後も厳しい状況が続きますが、今回の法改正は、労働者から選ばれる企業になるために男性の育児休業などの推進を通して働きやすい企業であることをアピールできる良い機会でもあります。

育児休業中の収入

育児休業中は無給とする会社が多いですが、男性も女性と同様に雇用保険から育児休業給付金を非課税で受給でき、社会保険では社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の免除が受けることができ、将来の年金額には免除された期間に保険料を納めたものとして扱われ、反映されます。それにより休業前の給料の最大で約8割程度をカバーすることができます。

社会保険料については会社負担分も免除されるので育児休業中の従業員にかかる人件費を軽減できます。

また、育児休業を取得させた事業主に対しての助成金制度等もありますので、制度についてご不明な点がありましたら、管轄の労働局やお近くの社会保険労務士へお問い合わせ下さい。

育児休業給付金についての資料
育児休業についての助成金の資料

まとめ

政府は2025年の男性の育児休業取得率30%という目標を掲げて、今後も男性の育児休業を促進させる施策を続けるものと思われます。

男性従業員から育児休業取得の申出があった場合、基本的に会社側は拒否することはできません。「男には必要ない」などの発言がきっかけでハラスメント等に発展する可能性もあり得ます。このような社内での認識のズレを起こさないためにも、就業規則や社内規定を見直し、従業員が今より働きやすい会社作りのきっかけとしていただければ幸いです。