【労務Q&A】研修が時間外に及んだ場合、割増賃金の支払いが必要か

労務Q&A

研修が時間外に及んだ場合、時間外労働として割増賃金の支払いが必要でしょうか?

研修が労働時間に該当するか否かは個別事例判断であり、労働時間に該当する場合には割増賃金の支払いが必要です。

解説

研修については、「使用者が実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取扱いによる出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない」との行政解釈が示されています。(昭和26年1月20日基収2875号)

労働時間の定義

労働時間の考え方について、労働基準法では、「労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義されています。労働時間に該当するかどうかは、就業規則や雇用契約書にどのように記載されているかに関わらず、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていたかどうかで判断されるのです。

指揮命令下とは使用者からの直接的な指示だけでなく、黙示の指示により労働者が業務に従事する時間も指揮命令下にあるとみなされます。つまり、直接的な指示がない場合であっても暗黙のルールがあるような場合は労働時間とみなされるのです。

また、労働時間は必ずしも実際に作業に従事していることは要しません。使用者からの指示があればいつでも対応できるように待機している時間、いわゆる手待ち時間は労働時間になると考えられています。

会社が実施する研修に関する裁判例

前原鎔断事件(大阪地裁令2.3.3)

会社が開催した勉強会に参加したことが時間外労働に該当するとして、それらの活動が労働時間に該当すると判断された事件。
勉強会がXに対する指導内容等を振り返ることを内容とするものであるから、Xが参加せずに開催されることはそもそも予定されていないこと、Xは、Y社の従業員から、なかなか仕事の技術が身に付かないと認識されており、Xが「勉強会」に参加せず、その後も技術が身に付かないままであれば、Xの賃金や賞与の査定、従業員としての地位に影響することが明白だったこと、Y社の就業規則には、Y社が従業員に対して業務上必要な知識、技能等を高めるための必要な教育訓練を行うこと及びY社従業員はY社から教育訓練を受講するよう指示された場合は特段の事情がない限り教育訓練を受講する義務を負うことが規定されていたことから、Xが「勉強会」に参加する時間は、Y社の指揮命令下に置かれている時間(労働基準法上の労働時間)にあたると判断しました。

NTT西日本ほか事件(大阪高判平22.11.19)

会社がWEB学習を奨励した時間が労働時間に該当するかが争点となり、WEB学習等の労働時間制が否定された事件。
WEB学習は従業員の自主的な意思によって作業することによってスキルアップを図るものであり、その成果を測るためには、技能試験等を行うしかないが、そのような試験が行われているわけでもなく、会社は自己研鑽のためのツールを提供して推奨しているにすぎず、業務の一環として実施するような業務上の指示がなされてたとも評価できないことから、会社の指揮命令下においてなされた労働時間と認めることはできないと判断されました。

まとめ

就業時間外の研修に参加した時間が労働時間に該当するかの判断では、従業員が研修への参加を自由に判断できるか否かが重要です。自由参加だとしても、欠席をすると減給処分の対象となったり、欠席によって業務を行うことができなかったりするなど、不利に扱われるような場合、事実上参加が強制されているとして労働時間に該当すると判断される可能性があります。

研修が労働時間に該当しないとする場合には、上司がその研修を行うように指示しておらず、かつ、その研修を開始する時点において本来業務や業務に不可欠な準備・後処理は終了しており、労働者はそれらの業務から離れてよいことについて、あらかじめ労使で確認しておきましょう。

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