キャリアアップ助成金とは?基礎知識から注意点まで解説

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キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して、助成金を支給する制度です。

非正規雇用労働者を正社員化したり、処遇を改善するなどの取り組みは、人手不足となっている経営環境のなか、人材確保策として有効な手段の一つです。

キャリアアップ助成金には様々なコースがあり、それぞれのコースにより支給要件も異なります。この記事では、「キャリアアップ助成金」を初めて知る経営者の皆さまに対し、基礎知識を解説します。

キャリアアップ助成金の基礎知識

令和2年版厚生労働白書(厚生労働省)によると、男女ともに短時間の就業形態の増加等により、非正規雇用の労働者が大きく増加しています。2019年に総務省が実施した「労働力調査」では、非正規の職員・従業員が役員を除く雇用者に占める割合は38.3%となっています。このうち男性は22.9%、女性では56.0%を占めており、非正規労働者は女性が多いことが分かります。

しかし、正社員と非正規社員の間には、賃金や教育体制・待遇に格差があり、国は「同一労働同一賃金」を目指して様々な政策を打ち出しています。この正社員と非正規社員の間の格差を解消する政策の一つであり、人手不足の経営環境下、優秀な人材を確保するために活用できる制度がキャリアアップ助成金です。

キャリアアップ助成金には複数のコースがありますが、代表的なコースについての概要は次のとおりです。

正社員化コース

正社員化コースは、例えば有期契約社員やパート、派遣社員などを正社員に登用するといったケースが該当します。「多様な正社員(勤務地限定正社員、職務限定正社員および短時間正社員)」へ転換した場合でも助成対象になります。

また、現在は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を加味した制度改定を行っています。通常、正社員化コースで対象となるには有期雇用契約期間が6カ月以上必要ですが、「令和2年1月24日以降に新型コロナウイルス感染症の影響により離職し、就労経験のない職業に就くことを希望する者」の紹介予定派遣に限り、2か月以上~6か月未満でもキャリアアップ助成金の対象となっています。

賃金規定等改定コース

賃金規定等改定コースは、基本給の賃金規定等を増額改定し、昇給した場合に助成対象になります。例えば、企業が立地する自治体の最低賃金が改定されたことにより、賃金規定等を改定する必要がでた場合にこの制度の利用が検討できます。

受給までの流れ~キャリアアップ計画の作成と認定が必要

まず、自社でいう「非正規社員」とはどのような社員を指すのか、定義づけをしておく必要があります。その定義づけを行うのは就業規則です。よって、このキャリアアップ助成金に基づく取り組みをする段階で、就業規則を会社に備え付ける必要があります。就業規則は常時労働者が10人以上の場合、労働基準監督署へ届け出が必要です。

次に、「キャリアアップ助成金」の活用に当たっては、各コース実施日の前日までに「キャリアアップ計画」を作成し、労働局やハローワークに提出する必要があります。「キャリアアップ計画」は管轄労働局長の認定を受けなければならないため、少なくとも計画を実行する1カ月前には提出しましょう。


(出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内」)

この「キャリアアップ計画」には「キャリアアップ管理者」を1名記載します。「キャリアアップ管理者」には特別な資格等は必要ありませんが、キャリアアップに関して知識・経験のある人が望ましいでしょう。

その他に、「キャリアアップ計画を実施する予定の期間」、「対象者」、「キャリアアップ計画期間中に講じる措置の項目」などを記載します。キャリアアップ計画の期間は3年から5年で設定し、その間に行った施策について助成金を支給することになります。

例えば「正社員化コース」の場合、正社員への転換規定がない場合は就業規則を改定し、対象の有期雇用労働者等を正社員に転換します。その後、6か月の賃金支払を行ったあとに、助成金の支給申請を行います。

助成金支給にあたっては、キャリアアップ計画書の記載内容、就業規則の記載内容、行った施策など、提出書類の整合性が問われます。この書面に齟齬があれば計画通り行っていないということになり、助成金が支給されないこともあるので注意が必要です。

キャリアアップ助成金でつまずきやすい点

キャリアアップ助成金で注意する点は次のとおりです。

助成金獲得目的で利用するものではない

このキャリアアップ助成金は、「賃金規定等改定コース」を始め、正社員化や処遇改善の取り組みに対して支給されるものです。しかし、賃金は「賃金の下方硬直性」と呼ばれるように、一度上げると下げづらいという性質があります。助成金獲得を元に実施することは、経営課題の解決につながりませんし、本助成金の意図とも反するものです。

助成金は後払い

前述のとおり、キャリアアップ助成金は、実際にキャリアアップの取り組みや賃金の支払いが終わったあとに支給申請を行います。そこで支給審査を受け、支給要件に合致していると認められて初めて助成金の支払いが行われます。助成金は後払いですので、計画実施中の資金繰り対策には利用できません。

支給要件は事前によく確認する

キャリアアップ助成金を活用した取り組みをしようとしても、キャリアアップ助成金の支給要件に合致していなければ、助成金は支給されません。

例えば、「正社員コース」の場合、「支給対象事業主に雇用される期間が通算して6か月以上の有期雇用労働者」であることや、「支給申請日において退職してないこと」、「転換または直接雇用を行った適用事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者」であることなどの、細かい要件があります。

活用を検討する前には、まず要件にあてはまるのかどうか確認しましょう。わからない点は、所轄のハローワークや専門家に確認してから進めましょう。

まとめ

人手不足の経営環境下、新たな人材を正社員で雇用することは、中小企業にとってなかなか難しいことの一つです。

そこで、すでに社内で勤務経験があり、働く意欲やスキルが十分である非正規雇用労働者のキャリアアップを促進することで、有能な人材を自社に確保することができます。人材の処遇を改善することは、社員のモチベーションアップにもつながるでしょう。

キャリアアップ助成金は様々なコースがあり、支給要件も細かい決まりがあります。ハローワーク等や専門家のアドバイスを受けながら活用しましょう。

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